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捜索

 近隣一た……ムドの屋敷に睡眠薬を溶かした霧を散布した俺達は堂々と正面から入る。

「これからどうしますの?」

 屋敷の中を歩きながらシュベルツェが聞いてくる。

「とりあえず犯罪の証拠になるモノを確保する。闇ギルドとの取引を証明する品や奴隷を水晶に変えた魔法具が見つかればなお良しだ」

「でもこれだけ大きいお屋敷だと見つけるのも大変ですね」

 アルマのいう事ももっともだ、だが俺には強い味方がある。

その名は『捜索』スキル(中級)だ!!


『捜索 (中級) 一日十回

 視界内の範囲に有る隠されたモノを見つける能力、生物、物質を問わず隠すという意図を持ったモノを 見つけることが出来る』


 以前手に入れたスキルだが、使いどころがなくそのまま放置していたのでちょうどいいタイミングと言える。

正に今回の用途には最適と言えるスキルではないか。


 どれくらい役に立つかというと、絶対の自信を持って隠したエロ本が母親の手によって机の上にジャンル別で詰まれていた時の絶望感を味わえ……あかん、これは思い出してはいけない記憶だ。

ええと、暇つぶしにDVDを借りに来た妹に夜中にこっそり見ようと思って買ったアダルトDVD(カバー取替え済み)をピンポイントで発見され……


巧妙に隠されたヘソクリとかを発見できるすごいスキルなんだよ!!!!


……最初に手に入れた時は初級だったのだが大星剣メテオラに入っていた捜索(初級)と統合したことによって中級にレベルアップしたのだ。使用回数も一日三回から一日十回に増えた。

とはいえ回数は有限だからな、まずは普通に探してみて見つからなかったら使ってみよう。


「さーて、そんじゃどこから調べるかな」


普通に考えるとまずはムド達の居る部屋だが念のため全部の部屋を調べるべきだろう。

どうせ皆眠っているし確認だけしておこう。


 ◆


まず一階の部屋をしらみつぶしに探してみたが特におかしな所はなかった。

応接間が三つ、美術品の置かれた部屋が三つ、警備兵の部屋が一つ、あとは調理場と食堂そしてトイレ。

離れには、使用人と警備兵の住む小屋と倉庫があった。

壁に掛けられた無駄に豪華な装飾を見る感じ、貴族の屋敷というよりは成金商人の屋敷といった感じだな。

次は二階を見てみるか。


 ◆


 階段を上がり二階に到着した俺達は通路に面した部屋を手当たりしだいに開けていく。

それは家人の私室だったり使用人が書類仕事を行うための作業室だったりと、特に面白いモノも無くめぼしい収穫はなかった。


「何もありませんね」


 アルマの言うとおり本当に普通の屋敷だった。

ムドの父親は仕事を行う店と自分達が住む屋敷を分けているみたいだ、そうなると悪事の証拠も店のほうにあるかもしれない。

だとしたらまずいな、気配遮断スキルを使ってここまで来たから周囲一帯を眠らせたのが俺とばれることはないだろうが住民が不自然に眠っていたのがバレると警戒される危険がある。

残るはムド達のいる部屋とその対面にある部屋か。


「ムド達のいる部屋を調べてみよう」


 ◆


「何つーか肉塊って感じだな」


「醜悪ですわ」


「ええと……」


俺達は床に倒れて眠っているムド達を見下ろしていた。

その光景は溺死した豚が水面に浮いているかの様なだらしなさで、限りなく好意的に言えば野生のかけらもなく腹を出して寝ているペットのようだった。

念のため起きても逃げれないようにロープで拘束しておく。


「じゃあ証拠になるモノがないか調べてみるか」


というわけで捜索を開始するが予想外に普通のモノしかない。

じっくり探せば見つかるかもしれないがあまり時間を掛けすぎるのもよくない。

ここは『捜索』スキルを使ってみるか、きっと何か後ろめたいモノが見つかるはず。

部屋の入り口に立って捜索スキルを発動する、すると部屋の一部がぼんやりと光りはじめた。


「机と壁の額縁、それに左隅の床」


俺の声に従いアルマとシュヴェルツェが額縁と床を調べ始める。じゃあ俺は机を調べるか。


引き出しをすべて調べてみたが何もない。なので引き出しを抜いて中を見てみたがやっぱりない。

あと考えられるのは二重底か、だが外した引き出しの中身をすべて引っ張りだして二重底がないか確認するも引き出しの底は全く動かなかった。

スキルで見つけた以上確実にあるはずなんだが……

ちょっよもったいないがもう一度捜索スキルを使ってみる、すると……

引き出しの一つが光りだす、光った引き出しを持ち上げると違和感、なんかちょっと重いような。

引き出しをいったんおろして別の引き出しを持ち上げる、ちょっと軽い。

となるとこの引き出しの中に何かが? だが二重底はないし一体何が?

引き出しをひっくり返していろいろな角度から見てみると……


「あ、あった」


引き出しの裏側には窓枠のような引き戸がついていた。


「机の引き出しの裏に引き出しが……」


動かしてみると引き戸は半分だけ開くようになっていて、その中には十数枚の羊皮紙と帳簿が入っていた。

しかも壁にはクッションが付いており揺らしても音が鳴らないように細工されていた。

家具職人地味に良い仕事してるな。


「何の書類だったんですか?」


軽く読んだ書類を無言でアルマに渡す。


「……脱税の二重帳簿と違法商品の納入書ですか。もうこれだけで捕まえる事ができますね」


「そっちは?」


「絨毯をめくった床板を外したら薬が入っていました」


「額縁の裏の壁には隠しスペースがあり、そこに紙の束がありましたわ」


アルマとシュヴェルツェがもってきたのは液体の薬と紙のお金、つまり紙幣だ。

まぁずっと森で暮らしていた元獣のシュヴェルツェはお金を見たことが無かっただろうから仕方ないだろう。

薬のほうは何かな?どうせろくなモノじゃないだろうけど一応鑑定しておくか。


『痺れ薬

 数時間の間体を麻痺させ動けなくする、服用した人物の体力と耐性により効果時間は異なる』


『惚れ薬

 服用した直後に見た人間に恋をする薬、数時間で効果は切れる。服用した人物の知力と耐性により効果 時間は異なる』


『睡眠薬

 数時間の間眠らせる、服用した人物の体力と耐性により効果時間は異なる』


『毒薬

 服用した人間は数分で死に至る猛毒。服用した人物の体力と耐性により毒が回りきるまでの時間は異な る』


驚くほど分かりやすい用途の薬である。


「なんていうかゲスいなぁ、睡眠薬とか痺れ薬とか男としてのプライドってモンが無いのかね」


「「……」」


アルマとシュヴェルツェが何か言いたそうにこっちを見ている。


「ん? どうした」


「「いえ別に」」


なんとも言葉にしづらい表情であさっての方向を向きながら答えられた。

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