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水晶祭3日目昼の2

変則投稿2本目です。


それと宣伝ですが、富士見書房のご好意で「左利きだったから異世界に連れて行かれたの」書籍化が決定いたしました。

詳細は活動報告に記載してありますので興味をそそられましたらそちらもご覧下さい。

ダークフェニックスは去った。

後に残されたのはダークフェニックスが排泄したウンチこと水晶だった。

一応鑑定してみるか。


『ダークフェニックスのフン

 属性の力が完全に抜け高圧縮された高純度水晶塊、属性の影響を受けない為水晶細工に最適の素材』


無駄に希少素材っぽいのがムカつくな。


「これを持って帰るんで?」


俺の質問をレドウはやたらと嬉しそうに肯定する。


「ああ、元獣であるダークフェニックスは属性の力を食べるんだ、つまり食べ終わった属性石は属性の力を失って純粋な水晶になる、しかも体内で圧縮されることで大きな塊になるんだ。いやー普通の水晶を必死に採掘する覚悟でいたんだけど、まさかこんな簡単に高純度の水晶が手にはいるとはなんてラッキーなんだ!」


だとしても御免被りたい、これを俺の馬車に乗せるとかちょっと・・・・・・


「さぁ!詰めるだけ詰めるんだ!!」


マジ勘弁していただきたいがやらにゃ話が進まないので渋々水晶を袋に入れ始めた。

とはいえ素手で触るのはイヤなので二人してレドウに見えない位置に行き宝物庫から魔法具を取り出す。

以前作ったブロックアームの簡易版その名もフリーアームだ、ぶっちゃけると素手でで触りたくないけど回収したり処分しないといけない物をつかむ為の道具だ。

フリーアームで持ち上げた水晶を普通の袋に入れて口を縛る、これだけ積めば十分だろう。


「こんなもんでいいですかね?」


「うーん、ちょっと足りないな」


結構な量を回収したと思うんだがこれで足りなけりゃもっと奥まで行く必要があるだろう。


「もう少し奥まで言ってダークフェニックスのフンを探そう」


そう言ってレドウは更に森の奥に進んでいく。

別にフンに拘らなくても良いだろうに。


「でも普通の水晶も探せるから奥に行くのはありだと思いますよ」


んー、アルマの言う事も一理あるな、フンよりも天然物のほうが良い、精神的に。

どっちにしろ早くしないとレドウを見失ってしまう、領域スキルで魔物がどこに居るかは分かるが向こうから近づいてこないとも限らない、早くレドウに追いつかないとな。


予想に反しレドウにはあっさりと追いつくことが出来た。

それもそのはず、レドウは少し歩いた先で動きを止めていたからだ。


「どうかしたんですか?」


無言でレドウが指を差した先、そこには巨大な洞窟があった。


「洞窟?」


「大きな洞窟ですね」


アルマの言うとおりやたらとデカイ洞窟だった、その大きさは30mはあるだろうか、さっきのダークフェニックスが余裕で入りそうな大きさだ。


・・・・・・ん? ダークフェニックスが入りそうな大きさ?・・・・・・もしかして・・・・・・


「あれってさ、ダークフェニックスの巣だったりするんじゃ」


「「え?」」


想像もしていなかったらしく俺の言葉に驚く二人。


「そうか、確かに生き物なんだから巣があってもおかしくない・・・・・・だとすれば、巣の中には大量のフンがあるかも知れない!! よし、行ってみよう!!」


言うが早いか洞窟に向かって走り出すレドウ、お前はもっと落ち着いて行動しろよ。

あと野生動物なら巣に強い匂いのするフンをしたりしないと思うぞ。


「しゃーない」


放置するわけにも行かないので仕方なくレドウを追いかける。


「危ないから一人で行動しないで下さい」


入り口を過ぎ洞窟に光が届かなくなる所で足踏みしているレドウに追いつく。


「アルル」


「はい、ブライトボール」


アルマが魔法で灯りを作る。念のため自分も灯りの魔法具を取り出してあたりを照らす。


「灯りの魔法具かい、随分と小さいんだね」


「小さくても十分明るいですよ」


言葉の通り俺の魔法具は市販の灯りの魔法具に偽装しているが特別製なので明るさもバッテリーの持ちも市販品よりも遥かに良い。

更に秘密のスイッチを捻ると特殊モードになり様々な用途に使える無駄に高性能なシロモノだったりする。


二つの灯りに照らされ洞窟の全容が見えてくる。

奥行きはおおよそ50m、中は入り口よりも広くなっているカマクラ形状だ。

だがそれ以外にめぼしいモノは無い・・・・・・ん?


洞窟の奥になにやらキラキラと光るモノが見える、一体何かと思い近づくとそこには何処かで見たような輝き、それは白金のような輝きを放つ金属だった。

もしやと思い鑑定スキルを発動させる。


『オリハルコン 純度100%

神造の白い鉱石、非常に強靭かつしなやかな性質を持つ。

神の欠片と称され純度%の確率で接触したスキルを無効化する。

純度100%の鉱石と特定の素材を武具の素材として使用しさらにある条件を満たした場合、完成した武具は神器と呼ばれる物になる。』


「マジか・・・・・・」


まさかこんな所で純度100%のオリハルコンを見つけるとは、しかもこのオリハルコン1mはあるぞ。

ちらりとレドウの方を見るが幸い彼は水晶しか興味が無いようでこちらに気付いていない。

レドウに気付かれないようにオリハルコンを宝物庫に仕舞いこみ何食わぬ顔で合流する。


「ありました? 水晶?」


「いや、残念だが・・・・・・」


心底残念そうにレドウが言う。


「別にダークフェニックスのフンに拘る必要は無いでしょ」


更に言うと拘ってほしくない。


「そうだね、仕方ないけど外に戻って別の水晶を探そう」


そうして貰えると本当に助かる。

レドウが戻る事を決めてくれたのでアルマに声を掛けようとしたその時であった。


「クーちゃん、こっちに穴があります!」


「何?」


アルマの声に呼ばれて奥に行くと其処には小さな穴が空いていた。

小さいといってもこの洞窟の大きさに比べればだ、穴の大きさは2mほど、人間なら十分に入れるサイズだ。


「どうしましょう?」


どうするかアルマがたずねてくる。


「この大きさから言ってダークフェニックスは関係なさそうだよなぁ」


とはいえさっきのオリハルコンの事もある、念のためココも探っておこう。


「念の為調べてみよう」


何があるか分からないので俺が先行で入る事にする。

時間切れで効果の切れていた領域スキルを再び発動すると奥に生物の反応がある。


「奥に何かいるな」


「魔物でしょうか?」


アルマが不安そうに呟く、とはいえそこらの魔物程度じゃアルマの足元にも及ばないんだけどな。


「分からないけど念のため俺が先に入るから後ろから付いてきてくれ」


「はい」


「分かった」


小さな洞窟の中は意外と整備されていた。

コンクリートのビルとは言わないモノの中は中々に整備されて言る。

なにやら壁には模様のようなものまである、もしかしたら古代の文明の遺跡なのかもしれない。

しばらく進むと突き当たりに行き着く、いやこれは部屋だ、目の前にはドアと思しきモノがある。


「この奥にいる」


俺はゆっくりと扉に近づきそっとドアを開ける。

スキマからゆっくりと中をうかがう、部屋の中はほんのりと明るく奥から音がする。


「・・・で・・・・・・すわ・・・・・・」


これは人の声か?

明かりはあるものの薄暗くて奥まで見えない、これは中に入って確認するしかないな。


「二人はここで待っててくれ」


気配遮断スキルを使用してそっと部屋の中に忍び込む。

そこで俺は驚くべき光景を目撃するのだった。


「な! 何だこりゃぁ!!」


「だ! 誰ですの!!」


其処には女の子が居た、長い黒髪をツインテールにして、部屋に溶け込むかのような黒いワンピースは胸からお腹の断崖絶壁の部分が真っ白でまるでペンギンだ。

だが俺が驚いたのは少女にではなかった、俺が驚いたのはこの部屋の事だ。


この部屋にあるもの、それは・・・・・・


「折角集中して新作を書いていましたのに一体どなたですの!!」


文字通り部屋を埋め尽くすほどの大量の本と紙だった。

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