水晶祭り3日目の昼
今週は変則投稿で2本分割で投稿です、2本目は翌日の朝に投稿いたします。
ちょっと下品な話になるのでお食事前の方はお食事が済んでから読まれることをお勧めいたします。
伝説として語り継がれる存在、世界に四種しかいない王と呼ばれる魔物、それが元獣。
そんな伝説の一角が俺たちの前に居る。
『元獣ダークフェニックス』
その姿はどうしようも無いほどにペンギンだった。
あー、そういえばこの世界のフェニックスって歩く焼き鳥の事だったよな、だとすれば同じフェニックスの名を持つコイツも碌なモンじゃないんだろうなー。
そう思うとなんだか切なくなってきた。
「クーちゃん! こっちに来ます!!」
アルマの言う通りダークフェニックス(笑)は木々をなぎ倒しながらこちらに向かってくる。
正直デカい、キャッスルトータスの幼生であるドゥーロも結構な大きさになっているがコイツは20mはあるんじゃないだろうか?
「とりあえず逃げよう」
俺は大星剣メテオラのスキルから『気配遮断』と『共有』を発動させてアルマとレドウの手を握る。
「な、なんだい!?」
「静かに、逃げるので絶対音を立てないで下さい」
「え? え?」
レドウは訳がわからず混乱しているが俺は容赦なくレドウを引っ張っていく、俺の筋力は常人よりもはるかに高いのでスキルを使わずともレドウ一人を引きずる位造作もない。
幸いアルマの方はこちらの意図を理解してくれているのか静かに付いて来てくれた。
50mほど離れた所で物陰に隠れてダークフェニックスを覗き見る。
スキルの効果かそれとも初めから俺達のことなど視界に入っていなかったのか幸いな事にダークフェニックスは通り過ぎていった。
「一体何だったんだい今のは?」
「ダークフェニックスでしょ?」
「そうじゃないよ、ダークフェニックスに見つからなかった事だよ」
「そりゃ向こうが俺達に気付かなかったんでしょう、あっちからすれば俺達はアリ見たいなモンですから、しかも木の陰ですよ」
「・・・ああ、そうか、それもそうだね」
微妙に納得できていないながらもそれ以外に理由が思いつかなかったレドウは納得する事にしたらしくダークフェニックスの方に興味を移した。
さっき俺が使ったスキルは気配を消して相手から認識されにくくなる『気配遮断』、もう一つは接触した相手に自分のスキルの効果を共有させる『共有』だ。
最も大星剣メテオラの中にある共有のスキルは初級で、連動するスキルの持続時間は人数割りになってしまう欠点があった。
幸い周囲は水晶の木々と岩に囲まれているので直ぐに隠れることが出来たが。
そう言う訳なので今は安心してダークフェニックスを観察できるわけだ。
ダークフェニックスは近くの小山に近づくと体を沈めてクチバシを小山に突き刺した。
「いったい何をしてるんだ?」
「あれは小山の中に含まれている属性石を掘り出しているんだよ」
「そういえばこの森には属性石が一杯あるんでしたね」
レドウの説明にアルマが思い出したとばかりに手をポンと叩く。
「でも先ほどの属性石では大した栄養を得られないのでは?」
確かに、森の入り口にあった属性石はその名を名乗るのもおこがましい程度の力しか宿っていなかった、山ほど食べてもあの巨体が満足するだけの属性エネルギーは得られないだろう。
「きっと森の入り口付近の良質な属性石は人間に狩り尽くされてしまったからダークフェニックスに取って旨味が無いんだろう、だから森の奥に引っ込んでいてその存在に気付かなかったんだ。
森の奥は魔力に満ち溢れているから濃い属性の力が篭った属性石も食べ放題なんだろうな」
なるほど、魔力溜まりの森の中心地ならそれだけ濃い味の属性石が簡単に出来るんだろう、さしずめ魔力の溜まり漬けと言った所か。
「だがこれはチャンスだ、ダークフェニックスが居るなら良質な水晶が手に入る可能性が高いぞ!」
レドウが期待に満ちた眼差しでダークフェニックスを見る。
「ダークフェニックスと水晶と何の関係があるんですか?」
「直ぐに分かるさ、ソレよりもダークフェニックスを追うよ!!」
言うが早いかレドウは移動を始めたダークフェニックスを追いかける。
「ああ、行っちゃった、仕方ない、追うぞアルル」
「はい!」
ダークフェニックスはドンドン森の奥に進んでいく、先を走るレドウはダークフェニックスの事で頭がいっぱいになって自分がより危険な場所に入って行っているのに気が付いていない。
仕方ないのでアルマを抱えて全力で走る、俺が全力で走れば普通の人間であるレドウに追いつくのは容易だ、レドウの真後ろに付いた俺はアルマを下ろして領域スキルを発動させて周辺に存在する生物をチェックする。
確認できる生物は俺達を除いて20、そこからある程度大きい魔力反応のある動物のみ注意する。
もちろん一番大きいのは目の前のダークフェニックスだ、周囲に居る魔物など比べ物にならない魔力を感じる、間違ってもコイツを怒らせちゃダメだな。
暫くダークフェニックスを追いかけていると急にその動きが止まった。
「止まった?」
何事かと思って警戒しているとダークフェニックスは小刻みに震えだした。
「始まった!!」
レドウが興奮した顔でダークフェニックスに近づいていく。
「ちょ、危ないですよ!」
だが俺の静止など聞こえていないのかレドウはドンドンダークフェニックに近づいて行く。
「ああ、仕方ない、俺達も行くぞ」
「はい!」
最大限警戒しながらダークフェニックスに近づく、なるべく森の木々に隠れながらダークフェニックスの視界に入らないように気を使いつつ接近する。
そしてレドウに追いついた俺達はダークフェニックスが震えていた理由を知るのだった。
プリプリプリプリ
ダークフェニックスはお尻から水晶をひり出していた。
「・・・・・・」
「おおお、まさかダークフェニックスの排泄が見れるなんて、僕はなんて幸運なんだ・・・・・・」
感極まった顔で陶然と呟くレドウ、落ち着け、その言葉は色々危険だ。
「あのー、もしかしてお目当ての水晶と言うのは」
「ああ、ダークフェニックスのウンチだよ!!」
ギャフン。




