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黄昏を駆ける狂詩曲  作者: 渡瀬 由
第一章 剣の墓標
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闇を抜けて(2)

 ライルの現在。そして、何だか苦労してそうな感じの展開となっています。

 魔王戦争後、大陸の治安は悪化していた。

 統一国家の迅速な行動はあるが、経済に必要な物資の調達や商売に関することは国にとっても重要な課題になっている。軍隊を護衛にできない以上、寂れてきたとはいえ冒険者に依頼を出すことは珍しいことではなかった。この商人も例外ではない。


「いやぁ、助かりました。昨日は本当に死ぬかと思いましたよ」


「いや。俺は仕事をしただけだ」


 商人の町として知られる「レイデン」からこのアルシエル湖まで馬車で七日という長い日程だ。その間、盗賊に襲われないとも限らない。実際、昨日の夜、森に近い場所で伏せていた盗賊と一戦交えることになった。商品もガラス類が少し割れたらしいがそれは予想範囲らしい。


「しかし、いい腕ですな。その腕なら士官も容易でしょうに。よければ私どもの専属になっていただければ冒険者ギルドよりもいい生活ができますよ」


「すまんな。俺はこの方が性に合ってるんだ」


「私どもはいつでも歓迎しますよ」


 依頼をしてきたこの商人は戦争当時から武器の製造販売に加えて遠征に必要な雑貨・道具類を一手に引き受ける大手らしい。今や統一国家の中でも五本の指に数えられるほどだというが……丸々と太った腹に、癖のあるヒゲ、薄ら笑いを浮かべる分厚い顔からは想像できない。腹の底は知れない、ということだろうか。ここから湖を船で渡るというのも頭がいい。ここは国の管轄地域に近く盗賊たちの出入りが極めて困難だからだ。


「旦那はこれからどうするんです? あっしは金も入ったんでここでバカンスでさぁ」


「俺はまた旅に出るさ。様子をみたいところもあるからな」


「へぇ。旦那にも気になる人がいるんですかい」


 意外そうな顔を向けてくるジャンを軽くあしらい、


「そんなんじゃないさ。それより――」


 俺は手にしていた銀貨を一枚、ジャンに向かって放り投げる。


「い、いいんですかい?」


「食っていける分はあるからな。酒でも飲むといいさ」


「ありがとうございやす、旦那。お気をつけて!!」


 様子を見に行きたいところがある、か。

 別に行く必要はない。本当なら。むしろ俺が行っても向こうは喜ばないかもしれないしな。だが、俺が戦後に出会った数少ない『縁』だ。それがたとえ自分の自己満足だとしてもその縁を消したくないと思わずにはいられないのは俺の弱さかもしれない。


(ここからだと、徒歩で三日ほどか…)


「さすがに、今日は野宿になりそうだ。それも悪くないか」


 アルシエル湖から、徒歩で半日。日の高いうちにアルシエル湖を出発できたのは幸いだった。街道沿いは盗賊が出る可能性が高い。特に夜は。それなら近くの森で身を伏せている方がずっと安全だ。慣れればだが。


 森に分け入り、耳を澄ます。

 そびえ立つ木々と、風に揺れて音を響かせる新緑の葉たち。その中に異質な音や気配がないかを感じ取る。冒険者になって初めて体得した、危険から身を守るための術だ。


「よし……大丈夫なようだな」


 日が暮れて、小さな罠で仕留めた野兎を短刀で捌き、準備をする。

 必要最小限で、調理できる火力を持った窯を小一時間かけてつくる。これもギルドに入ってから学んだ技術だった。小さく、だが強い火が灯る。


(騎士をしていた時には考えもしなかったが)


 薪が少し崩れて、炎がひときわ大きく揺れた。

 書いていて、少しまどろっこしい感じではありますが。

 大丈夫。基本的には「バッドエンド」にはしませんので。


 次回も、よろしくお願いいたします。

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