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黄昏を駆ける狂詩曲  作者: 渡瀬 由
第一章 剣の墓標
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闇を抜けて(1)

 物語は「現在」へ。

 たまに回想が入りますが、そこも楽しんで頂ければと思います。

 焼き付けるような眩しい光が頬を照らす。

 ゆっくりと目を開けると、そこは開けた街道。まばらに生えている木々や植物が風に揺れている。ガタガタと揺れる馬車の心地よさに反して、俺は、胸に広がる強い痛みに耐える。


(俺はその過去と一生付き合っていかなければいけないのだ)


「おや、お目覚めですかい? 旦那」


「ジャンか。お前こそ眠いんじゃないのか? 昨日は大変だっただろ」


 そんな、と手を振りながら、ジャンと呼ばれた小柄で革製のとんがり帽子をかぶった陽気な男は軽くステップをしてみせる。


「旦那ほどじゃないですよ。夜に突然襲ってきた強盗たちをバッタバッタと倒したんですから。あれだけ派手にやれば奴らもしばらくは身を潜めているでしょうし」


「そうだな。そう願う」



 魔王戦争。

 あの戦いが終わってから、三年。そしてエルムスという国が消えてから四年でもある。ここまでに長く感じる月日を俺は今まで感じたことがあっただろうか。


 魔王は一人の勇者に討たれたと聞く。

 この大陸に新しい秩序を造ろうと、「冒険者ギルド」が尽力して大陸統一国家ができたまではよかった。だが、結局のところ根本的な解決には至っていない。飢餓や難民の問題、流浪の身となった兵士や民による強盗や殺人の増加。それらを解決できないでいる。国の大きな武力によってかろうじて平和を保っているだけだ。


 エルムスが滅んだあと、俺は行くあてを無くしていた。一度は魔王軍の討伐の一人として参加したがそれも一か月ほどで収束した。仕方なく「冒険者ギルド」に入り、そこから依頼される、といっても今残されているのはどこかの警備か商人の護衛任務くらいだが。それというのも、統一国家が「大陸全土の遺跡は調査済み、未調査を問わず出入りを禁止し、破ったものは厳罰に処す」という命令を出したためだ。

 俺は遺跡には興味はないが、「冒険者ギルド」自体が衰弱して依頼が来なくなれば死活問題なのは事実だ。俺のような不器用さでは世渡りは厳しいだろう。


「旦那。ここを抜ければこの地域で最大の湖、アルシエル湖ですぜ」


「俺は一度も行ったことがないな」


「そうなんですかい。いいところですぜ? 風光明媚ってやつですよ。若くて綺麗なねーちゃんもたくさんいるって評判で」


「………」


「旦那って堅物ですよねー。モテそうなのに」


 ジャンと一緒に仕事をするのはこれで二回目だったな。相変わらずだ。

 俺はあんなふうに、はしゃいだりはできない。そういえば、俺はいつから笑っていない?


 この依頼も、無事に終わるか……。


 俺は起き上がると、馬車から飛び降りる。腰に下げている剣がカチャリと小さく音を響かせた。


 ついに、ライルの現在が明らかになっていきます。そして、事件に巻き込まれていくことに……。


 次回もお楽しみに。

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