表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
黄昏を駆ける狂詩曲  作者: 渡瀬 由
第一章 剣の墓標
6/29

過去の幻影(4)

 「過去の幻影」パート、最終回です。

 ライルたちは、そして、森へと逃げたキャシーたちの運命はどうなってしまうのか。過去編から、現在編へとつながっていきます。

「キャシー、無事だったんだな。よかった……。リーゲはどうした? 他の者たちはどうしているんだ」


「それならグラナルド伯が私兵を率いて脱出させています。リーゲは見回りに」


 グラナルド伯が? おかしい。確かグラナルド伯は確か王都にまだ残られているはず。それに脱出させるならなぜ子供たちを先に逃がさないんだ? まさか!


「キャシー! 今すぐここを離れるぞ! みんな一緒にだ」


「ど、どうしたのです? そんなに慌てて」


 失念していた。

 アルディの言うとおり、こんなにも早く王都の守りが突破されるのが不自然だった。帝国はこの地域に関しては知識が乏しい。平野が多いとはいえ、長年に渡って守り抜かれてきた優れた要塞でもある王都。それをこの速さで侵攻してきた。内通者。それも国の事情に詳しく権力がある者。


「おそらく、内通者はグラナルド伯だ」


「そんな……あの方は陛下の叔父上ではありませんか!」


「たぶん、ここを滅ぼした後、領主にでもしてやるとでも言われたんだろう。あの方も見かけによらず野心のある方だからな。だとしたら、顔を知っている人間を放ってはおかないはずだ」


「ああ、なんてこと……それならあの方たちは……」


「みんな、離れるな、アルディ、後ろを頼む!!」


 ”ドンッ”と小屋の外から大きな音が聞こえる。何かが倒れた音だ。この音は……人か!?


「くっ、リーゲ……」


「ライル様……も、申し訳、ありま、せん。不覚を……敵は……は六人くらいだと。本当に、すみま、せん……トールを頼みます」


「トール?」


「ぼ、僕です!」


 トール……。確か先月入隊した騎士見習いにそんな名前があったな。


「敵に襲われて、それでリーゲさんが僕を庇ってくれて……」


「彼は私と一緒に子供たちの面倒を見てくれたのです。それでリーゲと見回りに」


「トール、剣は使えるな?」


 トールは小さく頷いた。

 この小屋の場所も、人がいることも知れている。すでにここを消すための兵が来ていると思って間違いない。だが、どうする? これだけの人数で逃げ切れるか!?

 俺たちが小屋を離れようとしたとき、すでに帝国の兵となったグラナルド伯の私兵に囲まれていた。


「遅かったか……」


 隊長とおぼしき男が前に出る。

 傭兵風の、がっしりとした体格。剣は持っているが――。むしろ戦斧バトルアクスが似合いそうな風貌だ。その横に三人、後ろにも気配がある。


「逃げ切れるとでも思っていたか? こっちも依頼だからな。きっちり仕事はさせてもらう。やれ!」


 何だ!? 体の動きが利かない! 地面に縫いつけられていくようだ。

 くっ、これは束縛の魔法か……。


「必ず報いがあるとグラナルド伯に伝えてくれ」


「威勢のいい男だ。これを見てもそう言えるかな?」


 後ろに控えている男がまだ四歳くらいの女の子を縄に縛り連れてくる。泣き叫ぶ子供。男たちの狂気に満ちた表情が闇夜に浮かぶ。そして――。


「子供の命なんて何とも思ってないんでね。さぁ、ショータイムだ!!」


「外道が!!!」


 子供に向かって、剣が振り下ろされようとする瞬間。

 まるでスローモーションのように、ゆっくりとした時間の流れ――。その横をキャシーが通り過ぎていく。凛として、まるでそれが自分の役割だとでもいうように。


「キャシーッ!!!」


 俺の悲鳴が、森に木霊した。

 「過去の幻影」ようやく終わりました……書いていて楽しかったですが……結構、疲れました。

 次回からは、ようやく「現在」のお話にはいります。お楽しみに!!

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ