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黄昏を駆ける狂詩曲  作者: 渡瀬 由
第一章 剣の墓標
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過去の幻影(3)

 過去の幻影パート3です。

 森へと向かっていくライルたち。しかし、そこには新たなる危機が待ち受けていた。

 暗闇の中、俺たちは森を駆け抜けた。

 遠くで赤い光が少しずつ迫ってくるのを感じながら昼間とはまるで違う景色の森を。


「このあたりのはずです」


「ああ。この先に少し開けた場所がある。その奥だ」


 ここはエルムスの貴族で王と血縁関係にあるグラナルド伯爵の所領内。王族と招待された人間以外は立ち入ることができない場所だ。俺は何度かこの場所に護衛で来たことがあった。


「!?」


(これは……殺気……!)


「伏せろ! アルディ!!」


 暗闇から森の静寂を切り裂くような音が一直線に飛んでくる。

 その音から矢がいくつか放たれたことがわかる。


「くッ、やってくれる」


 音だけを頼りに、二本の矢を打ち落とす。一本は外れ――。残りは。


「アルディ、無事か!?」


「は、はい……。肩をかすめただけですから」


「そうか……ここにいろ」


 俺は暗闇に溶け込む。

 さっきの矢はどこから飛んできた? ここは国境につながる道と交差する場所にある。それ故にわざと複雑な迷路のようになるように木を植え、柵や鉄条網を張り巡らしてある。そして死角が生まれないようこの開けた場所では木の間隔や枝の剪定を徹底していたはずだ。それなら――。


 そばにあった石を二つ拾うと、一つは前へ投げ、一つは持ったまま瞬時に走りながら動く。


 ヒュン――。


 矢が石の投げた方向に飛ぶ。その位置から大木の後ろから狙っているのが分る。


「この暗闇ならいけると思ったんだろうが、地の利はこちらにあるんでな」


 素早く抜き打ちした剣が弓使いの胴を切り裂く。声が漏れないよう、相手の口を押え、息をひそめる。

 (もう一人、いるはずだ)


 風が、森を吹き抜けていく。

 僅かに雲が切れ、小さな星が瞬いているのが見える。その中に明らかに風で草木が揺れるのとは異質な音が確かにある。手に持っている石を投げる。森の奥へ。同時に音のする方向へと素早く移動する。

 矢が俺の頬をギリギリでかすめていく。


「さっきの石で、ほんの少しだが判断が鈍ったな。それが命取りだ」


 俺の剣はまっすぐに敵の心臓を貫く。

 斬るのではなく、攻撃できる中で最もリーチが長い攻撃、それが突きによる一撃だ。敵はそのまま嗚咽を漏らすことなく倒れていく。


 何とかなった。

 しかし……敵の手がここまで伸びているとは。想定よりもずっと早い。急がないと。


「ライル様!」


「大丈夫だ。もうここも安全じゃない。いくぞ」


「は、はい」



*****


 

 大丈夫。きっと大丈夫です。

 それより、自分がやれることはしなくては。いつだって私はそうしてきたのだから。


「キャシー様、僕……怖いよ……」


「心配しなくても大丈夫です。きっと助けはきます。もう少しですから」



――私、震えてる?



 だめ。私がしっかりしなくちゃ。


「お姉ちゃん?」


「私は大丈夫よ。さ、いつでも動けるように準備しなさい」


「はい!」


「!? だ、誰!! そこにいるのは」


 キャシーは小屋の扉の向こうから聞こえる足音と金属が擦れる音を聞き逃さなかった。


「その声……キャシーか!?」


「ライル!」


 小屋の扉が静かに開く。

 そこにはキャシーと保護されてきた住民が三人、それと五人の子供たちがいた。

 戦闘がメインのパートとなっています。難しいですが、作者としてはリアルさを重視して(本当か!?) 書いています。


 さて、次回は過去の幻影・最終パートとなっています。一体、どんな展開が待っているのか……読んでいただければ、と思います。

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