プロローグ
昔々、とある国に心優しき、美しい乙女がおりました。
乙女は隣国の王子と出会い恋に落ちます。愛し合う二人を誰しもが祝福し、二人は幸せでした。
しかし、乙女の国の女王が王子に一目惚れをしてしまい、二人は引き裂かれてしまったのです。
乙女は王子を奪われた悲しみで泣き続けます。その痛ましい姿に周囲も悲しみましたが、女王は強い魔力を秘めた魔女であったため誰も何も言えませんでした。
そして、ついに王子と女王が結婚する日がやってきます。
泣きひしがれていた乙女でしたが、やっぱり一目でも王子に会いたい。彼を取り戻したいという気持ちを奮い立たせて、結婚式の行われる城へと一人向かったのです。
しかし、女王は乙女の行動を予知していました。女王は悪魔と契約していて、悪魔に乙女を見張らせていたのです。
女王は乙女に結婚式の邪魔をさせないようにしろと悪魔に命令しました。
悪魔は城を囲む薔薇の庭園に魔法をかけて迷宮に変えてしまうと、乙女をその中で迷わせ、中から出られなくしてしまいます。
何の力も持たない乙女は悲嘆にくれるしかなく、そして、ついに結婚式を告げる城の大鐘楼の美しい鐘の音が国中に響いたのです。
乙女は絶望のあまり、その場で泣き崩れました。
しかも、悪魔に呪いをかけられた庭園の中からは結婚式が終わった後も出ることができず、彼女は自分がこの場所に永遠に捕らわれたことを知ったのです。
乙女は神に祈りました。
しかし、それは自分を助けて欲しいというものではなく、もうこれから自分以外の誰も恋を引き裂かれて悲しい想いをさせないで下さいという切なる願いだったのです。
神はその願いに、彼女の境遇に心を打たれ、彼女に慈悲を与えました。そして、彼女の恋を引き裂いた女王に罰を与えたのでした。
薔薇と乙女の涙に彩られた国・ティアローズ。
悪魔と契約する女王が君臨し、女王によって恋を引き裂かれた乙女の涙が永遠に雨となって降り注ぐ、美しくも悲しい国。
その国には乙女の祈りが満たされた庭園があるという。どんな障害があろうとも愛し合う二人が辿り着けたならば、永遠に結ばれるという薔薇の庭園が…。
短いプロローグで申し訳ありませんが、ここまで読んでくださってありがとうございます。
何となく思い浮かんだ物語で、あまり何も考えないまま長編に詰まっている時に書き溜めていたものなので、お目汚しかも知れませんが少しでも楽しんで頂けたら幸いです。基本的にはのんびり不定期更新になると思いますが、一週間くらいは毎日更新する予定です。