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行動方針

天之竜河大神達が天界に戻るということで、嬉しそうな雰囲気を出している時であった


「ん?誰かが来るようだね。」


「そのようですね。」

天之竜河大神達は、誰かが自分達の方に向かってくるのを感じた。そして、現れたのは一人の美しい女性と、見るからに盗賊という感じの五人の男達であった。


「何だい君たちは?」


天之竜河大神は、いい雰囲気を壊されたことに不快感を感じながら、無粋な乱入者達に質問をした。この女性は、盗賊と遭遇し森の奥に逃げたのであった。その逃げていた女性は、森の奥で人と出会えるとは思ってもおらず驚愕したが、すぐに安堵の表情をしてその青年に向かって行き、その背に隠れた。


「助けて下さい!」


盗賊達は獲物が増えたという感じに下卑た笑みを浮かべながら向かってきた。・・・・無知とは恐ろしいものである。


「へへへ。兄ちゃん、悪いが命と金目の物はもらっていくぜ。」


そんな主に対しての不敬な態度に、カイとイナバは怒りの声を上げた。


「なんと無礼な!人の子の分際で主になんという態度か!」


「やいやいお前ら!旦那に対して無礼だぞ!」


女性と盗賊達は、烏とウサギが喋ったことに驚愕した。だが、盗賊達はすぐに笑みを浮かべた。


「喋る烏にウサギか。売ればもうかるな。」


「頭、あのウサギおでこに変な模様がありやすが、レアラビットでないですかい。」


「なに!そうだとすれば一生遊んで暮らせるぜ!」


「男は弱そうだし、さっさと殺しちまいましょう!」


その盗賊達の言葉に、女性は絶望の表情を浮かべ、カイ達は怒りの声を上げようとしたが、それは主である天之竜河大神に制止された。天之竜河大神は、あることを考えていたのである。


「君達よく来てくれたね。これで僕が自ら出向く必要がなくなった。」


「あ~何言ってんだ、この兄ちゃ」


盗賊が疑問の声を上げている途中に、その声は途切れた。なぜなら、五人の盗賊達の頭は体を離れ地面に落ちているのだから。天之竜河大神の手には、いつの間にか刀が握られており、それで切り飛ばしたのであろう。自分達が殺されたことも気がつかなかったほどの速さであった。そして、天之竜河大神が考えていたこと、それは・・・


(人を殺しても罪悪感も何も感じない。やはりこの身になった時に、精神も影響を受けたのだろうね。)


そう、この体になったことによる精神の変化がどのような事か確かめたのだ。そして、もう一つ考えた事があった。そして、考えたことを実行に移すのであった


「あ、ありがとうございます!何とお礼を言ったらいいか。」


「その必要はないよ。」


「そのようなことはできません!何かお礼を・・・。」


「だから必要はないよ。勝手に貰うから。」


「え、それはどういう」


     ズゥ。


「え?」


女性の胸には天之竜河大神が握っていた刀が刺さっていた。刀を引き抜くと、女性は力なく崩れ落ちた。


「な、なんで?」


「ありがとう。君のおかげで仮説を確かめることが出来た。(盗賊などの犯罪者だけでなく、力のない一般人を殺害しても何も感じない、やはり、この体になることで精神構造がだいぶ変わったということかな。)」


女性はなぜ殺されたかを理解できないまま、息を引き取ったのであった。そう、天之竜河大神が考えたもう一つのこととは、悪人ではない一般人を殺害した場合は何か感じるのかを確かめたのだ。その結果、神となったことにより、自分が気に入ったもの以外はどうでもいい存在に見える様になったのだ。人間が蟻を踏みつけて殺しても何も感じないのと同様のことである。


「よろしかったのですか?その人の子を殺しても?」


「そうですよ旦那、その人間が少し可哀そうじゃないですか?」


「何の問題もないよ。それに、この人間もいい雰囲気だったのを壊した人物の一人だしね。いけなかったかい?」


「いえ、何の問題もありません。それどころか、このもの達は大いなる神であらせられる主に殺されて光栄でしょう。特にこの女性は、下賤な盗賊に殺されるよりも幸せな死に方だったと思います。」


「え、え、そんなもんなんですか?」


「もちろんだ、イナバお前も考えてみろ、人間に殺されるのと神に殺されるの、どちらがいいかと考えたら神の方がいいだろ?」


「死ぬこと自体嫌だけど・・・・まぁ、どちらかといったら神の方ですね。」


「だろう?だから、この人の子らも幸せということだ。」


「それにこの世界の人類の数は正確には知らないけど、数千万人は確実にいるでしょ?その中の数人が死んだところでなにも問題ないよ。」


「はぁ・・・(殺されること自体嫌なんじゃ・・・まぁ、どうでもいいか)」


「じゃ、天界に帰ってこれからの方針を決めよう。」


「「はい!」」


「その前に死体を消していこうか。」


天之竜河大神が死体の方に目を向けると、


  ボゥ!


死体が燃え上がり、一瞬で消滅するのであった。

そして、天之竜河大神達は光をまとい天に昇って行ったのであった。その場は、何事もなかったように静粛さに満ちていた。






 ー天界ー

「は~ここが天界か、綺麗な所ですね~。」


イナバは初めて立ち入った天界に感動を覚えるのだった。


「これから、ここが君の家となるんだよ。改めてこれから宜しくね!」


「はい!こちらこそ宜しくお願いします!」


改めて挨拶をし終えると、彼らは本殿に入りこれからについて話し始めるのだった。


「さて、これからどうしようか?」


「私は、地上界に主の偉大さを広めるべきだと思います!主よりも遥かに劣る存在が主よりも信仰されているなど・・・我慢なりません!」


「オイラも似たような感じです。旦那のことを誰も知らないというのは、嫌ですね。」


天之竜河大神は、カイ達の意見を聞きどうするのかを考えるのだった。


(どうしようかな~・・・!そうだ、この世界に和風を広めてみよう!強制はしないけど最低限、僕に仕えることを選んだ神官などは和服を着せたいね。窮地を助けてあげればすぐに信仰をするだろうし、そのためには・・・)


天之竜河大神はこの世界に和風を広めることにした。それは同時に自分への信仰も集めることになるのである、なぜなら自らが信仰している神が着ていたり教えられた服を着ることは信者にとっては光栄なことだからだ。


「じゃ、僕を信仰させるとして、どう広めていくかだけど、たとえば魔神などが存在したとして女神ウルスラの力ではどうすることも出来ず、人類が蹂躙されているときに力を貸してあげたら、どちらを信仰するかな?」


「それはもちろん、役に立たない女神よりも主のことを信仰すると思います。」


「オイラもそう思います。・・・旦那はそんな状態に持っていこうと考えているんですか?」


「そうだよ。女神ウルスラはこの世界で最も信仰されている神だ、そんな状態のときに無名の僕を信仰する存在はほとんどいないだろう。だけど、僕の存在が噂程度に認識されている時に、女神ウルスラではどうすることも出来ない魔神が現れ、助けられれば違う結果になるだろう?」


「そうですね!じゃ、どういう手順でいきます?」


「まず、ある程度の信者を確保して、その信者に布教をしてもらう、そして各地に僕がこの世界を創造したことを示す遺跡を作り、ある程度僕という存在が認識されたときに魔神誕生という感じかな。」


「さすがは主、完璧な計画です!」


「魔神はただ創造するだけじゃ面白くないよね・・・そうだ!人類の自業自得になるようにすれば面白いね、僕は魔神の核だけを作り、この核が人類の負のエネルギーを吸収して魔神となるんだ、人類は争いを頻繁にしているから確実に生まれるだろうし、エネルギーが足らないなら争いを起こせばいいだけだしね。」


「人類が死に過ぎたらどうするんですか?」


「問題ないさ、失敗したら創造しなおせばいいだけさ。」


「そいうものですか?」


「あぁ、その通り。で、どうかな?」


「私は賛成です!」


「オイラもいいと思います。」


「じゃ、この計画で行こうか!」


こうして、この世界の人類にとってはたまったものでない計画が決定したのである。

そして、魔神の核の創造に取り掛かるのであった。

天之竜河大神が掲げた手のひらに禍々しく強大な力が凝縮されていく、その力をもし女神ウルスラが見れば恐怖に顔を引きつらせたであろう、それほどの力であった。そして完成した漆黒の球体は、見る者に恐怖を与えるほどに禍々しく強大な力の塊であった。


「あとは、これを地上界に落とすだけだね。これからが楽しみだよ。」


「まったくもってその通りです。」


「よく分からないけど、旦那が楽しいならいいことです。」


超越者とその眷属達は地上界に甚大な被害をもたらすであろう球体を楽しそうに見つめるのであった。

そして、球体は地上界に向けて放たれるのであった。

この日、後に地上に甚大な被害をもたらす魔神の核が、魔とは対極にいるはずの神がいる天界から落とされるのだった。




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