現状確認 2
レアラビットは、正体不明の人物が言ったことが理解出来なかった。
(この人、一体何を言っているんだろう・・・頭大丈夫か?)
「ん?意味が分からなかったかい?ペットにならないかということだよ!・・・まぁ、ペットは嫌かな?だったら眷属でもいいよ。」
「下等な身で偉大なる主の眷属になれるのだ、光栄に思えよ!」
そう言って話しかけてくる青年と烏に、レアラビットは何とか反応を返すのであった。
「い、いや何言っているのか分かんないんだけど!ていうか、お前ら誰だよ!」
そんな当然のことを聞くのであった。
「そう言えば、まだ自己紹介していなかったね。僕の名前は、天之竜河大神という。神の一柱だよ。」
「私は、主に仕える神使・八咫烏のカイだ。まぁ、眷属といえる存在だ。貴様もこれから同じ存在になるのだ、心して使えよ!」
「神?そんな名前の神など聞いたことがない!あと眷属とか了承していないから!」
天之竜河大神とカイが自己紹介をし、レアラビットは聞いたことがない神の名前に疑問の声を上げた。ついでに眷属についても否定をするのであった。
「そう?(どうしようかな・・・・そうだ!)[カイ、これから僕の言うことに疑問の声を上げちゃだめだよ]」
[了解いたしました!]
天之竜河大神がどう説明しようかと考え、思いついたことを話すときにカイが疑問の声を上げないように、念話で注意をするのであった。
「まぁ、聞いたことがないのも仕方がないよ、僕はこの世界の基礎的な形を創造し、生命体が生まれる環境を整えた後に眠りにつき、最近起きたばかりだからね。僕が眠りに就いた後、新しい神が生れ、僕が世界の中に作っていた物質などを使用し生命体を創造したんだと思うよ。だから僕はある意味、この世界の創造神といえるね。」
天之竜河大神が言ったことは、あながち間違いではない。事実、この世界の基礎的な事は天之竜河大神が考えた事なのだから。
「そ、そんなことが・・・・。」
「事実だよ。何なら僕の記憶を一部見せてあげようか?」
「そ、そんなことが可能なのか?」
「たやすいことさ。で、どうする?」
「・・・・・お、お願いしようかな。」
レアラビットは未知のことをされるより、記憶を見ることを選んだ。もし、この青年の言う事が真実だとしたら歴史的事実を知るだけでなく、神の記憶を一部とはいえ見れるのだ。その知的好奇心が、未知に対する恐怖を上回ったのだ。
「じゃ、見せるよ・・・・・・・・・・・・・どうかな?」
「・・・・すごい…本当に貴方は神だったんですね!」
レアラビットは、今までの変な人を見る目ががらりと変わり、尊敬の目で見る様になったのである。ちなみに、見せた記憶はユニバースでの神々の戦い、運営と神々の合意で決まった世界を創造している所などだ。
「さて、僕達のことを理解してくれたことだし、話を戻すよ。僕の眷属にならないかい?」
「・・・まず眷属とは何なのかを聞いてもいいですか?」
「眷属とは神に仕える存在の正式な呼び方だよ。僕は、神使と言ってるけどね。役割は、僕に仕え、僕の意向に沿う行動をし、裏切らなければ基本的に何をしてもいいよ。また、眷属になれば不老不死、神の眷属に相応しい力などが手に入る。他に聞きたいことは、先輩であるカイに聞くといいよ。」
「そ、そうですか?それじゃカイさん、どんな感じなんです?」
「主に全力で使える!これが全てだ!」
「あ、そうですか。(全然参考にならないじゃん。)」
「何か言ったか?」
「いえ!何も。」
「まぁ、カイの参考にならない話は置いておいて」
「主!」
(言っちゃたよ!)
「ははは、冗談だよ。・・・で、他に聞きたいことはあるかい?」
「え~と、眷属というのは家族や友人のような感じですか?」
「まぁ、似たようなものかな、身内となるわけだしね。」
「その様に捉えてもよいが、主に対しての礼儀はしっかりと守れよ!」
「他に聞きたいことはあるかい?」
「・・・・・・いえ、特にはないです。」
「じゃ、聞かせてくれるかい。僕の眷属になるかい?」
天之竜河大神は、レアラビットに再度質問をするのであった。
(眷属になれば今まで知らなかったことも知ることができ、もしかしたら、神の知識も知ることが出来るかもしれないし、世界を創造するほどの方に仕えれるんだよな・・・・それに、この御二人といることは何か楽しそうだし、家族と似た存在になれる!)
レアラビットは神の知識を知ることが出来るかも知れない可能性に、強い興味を惹かれると同時に、天之竜河大神という偉大な神に仕えることが出来ること、そして、家族や友人といえる存在も居ない自分にとって、眷属になるということは家族や友人と似た存在が手に入ることでもあると考えた。そして・・・
「なる。オイラは、旦那の眷属になる!」
「そう!ありがとね!」
眷属になることを了承したのであった。
「そう言えば君の名前を聞くのを忘れていた、なんて言う名前なんだい?」
「オイラは名前はないんだ、レアラビットってずっと呼ばれていたから。」
「そうなんだ・・・じゃ~君の名前は、イナバだ!いいかい?」
「もちろんです!旦那に名前を付けてもらえるなんて嬉しいです!」
「それじゃ、早速眷属になる為の儀式を始めようか」
「はい!お願いします!」
天之竜河大神は、レアラビットの頭の上に手を掲げると、言葉を紡ぎ始めた。
『汝、レアラビットのイナバよ、汝は神使となり我、天之竜河大神に絶対の忠誠を誓うか?』
『誓います。』
『その誓い、受諾した。神使となることを許可する。』
カァ!!
レアラビットのイナバが誓い、天之竜河大神が許可すると、イナバは光に包まれたのだった。光が治まった時、そこには、基本的に姿は変わっていないが、おでこに青い模様が出来ているイナバがいるのであった。
「これで君は僕の神使だ。これから宜しくね!」
「私が神使とはどの様なものか、しっかりと教えてやる。」
「もちろん!これから宜しくお願いします旦那、兄貴!」
こうしてイナバは天之竜河大神の神使となったのである。
あれから天之竜河大神達三人は円になって座り、イナバからこの世界の事について説明を受けていた。
「この世界はセント大陸と周辺の大小の島々で構成されていることはご存知ですか?」
「あぁ、それは知っているよ、僕がそう決めて創造したからね。」
「では大陸の大まかな国家の説明をしましょう。主な国としては、サウス帝国・ヘリオス王国・ホルス聖教国・アルカス同盟・そしてここ、ラモール王国の五カ国が存在します。」
詳しく説明しよう。 サウス帝国・大陸南部一帯を支配し大陸最強の軍事力を保有する軍事大国であり、各地を侵略し国を大きくしてきた覇権主義丸出しの国家である。
ヘリオス王国・サウス帝国に匹敵する国力を有し、大陸東部を領土とする大国であるが、貴族による不正が横行している状態である。
ホルス聖教国・大陸北東部を領土とし、この世界最大の宗教であるウルスラ教の総本山が存在しており、各国も容易には手が出せず教皇が国家元首である宗教国家であり、強力な騎士団も保有している。
アルカス同盟・西部一帯に存在する国家がサウス帝国に対抗するために協力し誕生した同盟であり、盟主はアーカディア王国である。
ラモール王国・北部を領土とし、精強で勇猛果敢な騎士団を有することで知られ、大陸中部でサウス帝国と幾度も小競り合いを繰り返している状態であり、アルカス同盟とは同盟関係であり友好国同士である。
宗教について説明しよう。この世界最大の宗教としてウルスラ教があり、これは女神ウルスラを崇める宗教であり、ホルス聖教国の聖都サウザが総本山である。
これらの説明を聞き、天之竜河大神は不思議に思ったことがあった。それは、
(女神ウルスラね~、この世界に神といえるほどの力を持つ存在は感じないんだけど・・・、精々感じる中で最大の力は、ユニバースでの最上級クラスを少し超える程度なんだよね~。もちろん、僕よりも力があり、感じ取れないだけということも考えられるけど・・・・・。しかし・・・・。)
そう、この世界には神といえるほどの力は感じ取れなかったのだ、自分よりも力が上の可能性もあるが、力の差がそこまで離れているとは考えずらい、そのことから天之竜河大神は、ある仮説を考えそのことをイナバに聞き、確かめることにしたのであった。
「そのウルスラという女神がいる場所は、ホルス聖教国の東らへんかな?」
「伝説ではそう言われています。その場所には世界樹があり、そこに住んでいると言われています。」
「なるほど。(やはり、女神ウルスラの力は最上級クラスを少し超える程度の力、あえてクラス名で言えば精霊王かな。しかし、仮にも神と言われているんだ、創造もある程度はできるだろう。それにしても、この程度の力で神とはね・・・・笑わせてくれる。)」
「主?」
「旦那?」
「いや、ウルスラだけど、あの程度の力で神だというのが可笑しくてね。」
「それは仕方ないかと、主ほどの力を持つ存在は、あの忌まわしき四柱の神々を除いていないのですから。」
「記憶を見せてもらったときに登場した、四人のことですね?確かにあれ程の力を持つものがそんなに存在しているとは思えませんからね。」
「まぁ、ウルスラのことは別にいいとして、この世界のことをある程度知ったことだし、天界に戻って、これからどうしていくのかを考えよう。」
「そうですね!やはり地上よりも故郷である天界の方が落ち着きますからね!」
「初めて天界に行けるんですね!今から楽しみです!」
天之竜河大神が天界に戻ってこれからの方針を考えようと言うと、カイとイナバは喜びを顕わにするのであった。そんな、嬉しそうな雰囲気を出して、天界に戻るのを楽しみにするのであった。