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現状確認 1

 天之竜河大神は、NPCであるカイが話しかけてきたことに驚愕した。

カイは、なおも話しかけてきた。


「申し訳ありません。私には主が感じられていることを知ることができません。何を感じられたのかを、私に教えて頂けないでしょうか?」


カイの、まるで自分で考えているかのような態度に、天之竜河大神は、より強く今起きている事態の異常性を認識するのであった。


「(NPCであるカイが、まるで意志を持っているかのように話しかけてくる、これは・・・・試してみるか)カイ、君は何が起きているのか、何も分からないのかい?」


「は!未熟ゆえに何も分かりません。誠に申し訳ありません!」


「いや、構わないよ。僕も完全に理解しているわけではないからね、此方こそ意地悪な質問をしてしまった、申し訳ない。」


「いえ!そのような事はありません!・・・・しかし、主でも分からない事態とは・・・いったい何が起きているのでしょう?」


「さてね・・・何が起きているかは、これから調べていこう」


「は!」


(会話が完璧に成立している・・・AIでこれ程完璧に会話を成立させることは不可能だ、これは現実の存在になったと考えるべきかな)


天之竜河大神は、現実に存在しているかのような感覚、NPCであるカイと会話ができる、などということから、自分達が仮想空間の存在ではなく現実の存在になっているのではないかと考えた。そして、現実の存在になっていると仮定して、自分のキャラクターの力は使えるのか、拠点である天界は今どこに存在しているのかなど、現状の確認をしなければならない。


(現実の存在になったと仮定するとして、まずは力が使えるかだけど・・・)


天之竜河大神は、目を瞑り感覚を研ぎ澄ました。すると、自分の体の奥に力があることを認識し


(これは大丈夫だろう、力を認識できるし、使い方も理解できる。おそらく、この身にとっては手足と一緒ということなんだろうね。一応少し使ってみるか。)


そう考えた天之竜河大神は、探索の魔法を使用し、天界に異常がないかの確認を行った。


「(力は問題なく使用できた、空間の歪みも確認できない、どうやら天界に異常はないようだね。次は、カイの状態か・・・)カイ、話は変わるけど君は僕のことをどう思っている?」


「?もちろん、絶対の主にして創造主、大いなる神・天之竜河大神であらせられます。」


「なるほど・・・僕の命令をちゃんと聞けるということで良いかな?」


そう聞くと、カイは胸を張って答えた。・・・・烏が胸を張るというのも変であったが。


「もちろんです!主のためならばこの命、惜しくありません。いかなる命令にも答えてみせます。」


「そう、それは頼もしいね。(本心から言っていると伝わってくる。これは、創造物が何を考えているのか知ることができる、ということかな・・・ありがたい、これなら忠誠心が消えようとしているかどうかすぐに知ることができ、裏切りの危険性が減る。)」


天之竜河大神は、カイの状態を知れただけではなく、創造主と創造物との関係も知ることができた。次に彼は、現実の存在になったのは天界だけなのか、それともユニバースが現実の存在になったのか、そして、自分達は地球に存在しているのかなどを調べる必要があると考えた。


(地上界の様子を神眼で見てみれば、どうなっているのかすぐに分かるだろう)


そう考えた天之竜河大神は、地上を神眼で見ることにした。その結果は・・・


(やれやれ・・・ある程度は予想していたとはいえ、こんなことが現実にあるとはね)


目の前に広がっていた世界は、ユニバースでも地球でもない異世界であったのだ。


(つまり僕は、ゲームでの自分のキャラクターになって現実に存在しているだけではなく、まったくの異世界に転移してしまった、ということか。・・・・・ん?なんだ、この違和感は・・・。)


天之竜河大神は、異世界を眺めながらある違和感に襲われ、眉をしかめた。


「いかがされました?」


「いや・・・(これは・・・知っている?僕はこの世界のことを知っているのか?)」


そう、天之竜河大神は知らないはずのこの世界のことを知っているような既視感に襲われたのだ。既視感の原因をつかもうと、彼はより集中して世界を見だした。


(・・・・!分かった!これは、この世界は)


遂に彼は既視感の原因を突き止めたのであった。それは・・・


「主?」


「カイ、この世界はかつて僕が創造しようとしてやめた世界の可能性が高い。」


「!」


そう、この世界はユニバースで新しい世界を創造しようとして、考えた世界案にそっくりなのだ。もっとも、その世界案は基礎的な事を決めた後に破棄したため創造はされなかったが。


「創造しなかったはずの世界があり、しかも、現実に存在しているとは、びっくりだよ!しかも人類もしっかりと存在して、各自で勢力関係を築いているとはね・・・。」


この世界には、人間や亜人などの人類の勢力関係ができているのである。かつて考えた世界案では、人類の種族構成は決めていたが、どのような勢力をしているかなどは全く決めていなかったのにだ。まるで、形だけ作りあとは、ほったらかしにしていたら自然とできたような感じである。この世界は、天界が現実となりこの世界に転移するより前に、破棄した世界案が転移し今の世界になったのかもしれない。


「それは、この世界は主が創造されわけではない、と言うことですか?」


「さて。よく分からないけど、僕の案が元になって存在しているのなら、僕が創造したと言ってもいいのかな?」


「もちろんです!たとえ主の案が元になっていない世界であっても、この世の全ては我が主、あなた様の物です。」


「そうかい?まぁ、そうゆうことにしておこうかな。今はもっと情報を収集しよう。」


天之竜河大神はそう言うと、地上界の調査に戻った。そして、興味深い物を発見したのであった。


「カイ、あの生き物はウサギかい?」


「ウサギ・・・だと思いますが・・・。」


「二足歩行しているね。」


「していますね。」


「あんな生き物は考えていなかったんだけど・・・この世界が現実になったことによって、生まれた生命体なのかな?まぁ、なんでもいいか。それにしても・・・可愛いな~・・・・よし!ペットにしよう!」


「よろしいのですか?あのような脆弱な生き物で?」


「かまわないさ。ペットに強さは求めていないからね。さっそく降りよう!」


「!御身自ら地上界に降臨されるのですか!」


「そうだよ。いいじゃないか、今回だけだよ。」


「むむむむ・・・。今回だけですからね!」


「わかってるって!」


天之竜河大神はそう言うと、さっそく地上界に降りて行き、カイも急いでついていくのであった。




 -地上界ー

 この世界の中央にある、セント大陸の北方に存在する国家・ラモール王国、その王国の北方辺境の森を珍しい生き物が歩いていた。その姿は、ウサギが二足歩行しているような感じである。この生き物はレアラビットといい、遭遇することは奇跡であると言われ、遭遇できればその人物に幸運が訪れると言われている。そんな希少な生き物であるレアラビットは、森の開けた場所に出ると寝っ転がり休憩を始めたのだった。


「ふぃ~。やっぱり、王国の中でも最北端なだけあって寒いね~。」


このレアラビットは旅をし、色々な事を知ることが趣味であり、色々な事を経験してきたのだ。だが彼は、今まで経験したことがない事態に直面することになる。


   カァ!!


「な、なんだ!」


突如として空から光が降り注ぎ、光の柱を形成したのだ。


「い、いったい何が・・・?」


「初めましてだね、ウサギ君!」


レアラビットが、この事態に動揺していると、光の柱の中に見た事のない服を着て、肩に烏を乗せた青年が出現し話しかけてきたのだった。


「な、何者だ!お前!」


「無礼だぞ!下等な存在でありながら、大いなる神であらせられる主に向かってなんという態度か!!」


「ひ!」


レアラビットが現れた青年を問いただした時、肩に乗っていた烏が凄まじい怒気を発したのである。そのあまりの凄まじさに、レアラビットは震えてうずくまるのであった。


「まぁまぁ、落ち着いてカイ。僕は気にしていないよ。」


「は・・・主がそう言われるのなら。」


「さて、驚かせてしまったようで申し訳ないね、ウサギ君。」


「ベ、別にオイラは、驚いていないし!」


「そうかい?まぁ、そんなことはどうでもでもいいんだよ、大事なのはこれからさ。」


そう言った青年に、レアラビットは警戒し身構えるのであった。


(な、何が来るっていうんだ!)


「君、僕のペットにならないかい?」


「・・・・は?」


予想していなかったことを言われ、レアラビットは唖然とするのであった。




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