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約束の地へ 1

女神ウルスラの神託により始まった神教に対しての大弾圧。神教徒は迫害や弾圧を逃れるために放浪の身となったが、彼等が崇める神・天之竜河大神は彼等が自らの力でフキノ村に集まれば、安息の地を与える事を約束した。神教徒達はこの神託を受けフキノ村を目指すこととなる。

だが、この動きを好機と捉え大規模な討伐軍を派遣しようとする勢力が存在した。そう、この世界最大の宗教勢力であるウルスラ教である。


 -ホルス聖教国ー

大陸北東部に存在する宗教国家・ホルス聖教国。ウルスラ教の最高位である教皇により統治され、信仰深い民達からは 「光の国」 と呼ばれている国家である。その影響力は絶大で教皇の命令は諸外国すら拘束して仕舞うほどである。

そんな大国の中枢である聖都サウザに存在する教皇庁の会議場に、教皇や枢機卿、高位司祭など教会の幹部達が集まり神教徒について話し合っていた。


「邪教徒どもの排除が上手く進まん。」


「奴らを殺そうとしても転移の術で逃げられてしまう。」


「左様、そしてそれがどの様になされているのかすら解っていない。」


「邪教徒の行動も変化した。今まであてもなく放浪していたのが、今は明確な目的があるようだ。」


「確かに。邪教徒はラモール王国に向かっているようだ。」


「どうするつもりだ?確かにラモール王国は弾圧などはせず、見せかけの討伐しかしていないが。」


「忌々しい奴らだ、我らが命に逆らうとは!」


「小国であれば簡単に潰せるが、ラモール程の大国では確かな証拠がなければどうすることもできんからな・・・。」


「だが邪教徒を匿う事はしないだろう、そのような事をすれば我らの介入を招くことを知っている筈だ、あの国の王は愚かではない。」


「ますますわからん。奴らは何のつもりで王国に向かっているのだ?」


会議場は中々進まない神教徒の排除、不可解な行動に苛立ちと困惑した雰囲気に包まれた。そんな中、一人の司祭が発言した。


「如何でもいいじゃないですか、そんなことは。」


発言した司祭は金髪で色白、ほっそりとした優男であり、この場でもっとも若い人物であった。その場にいた者達はその司祭に視線を向けるが、その眼には嫌悪と畏怖の色があった。


「どういう意味かね?アンドレイ司祭。」


「そのままの意味ですよ。邪教徒がどこに行こうが関係無いでしょう?だた殺す、それだけです。」


「君の言う事は理解はできる。確かに最終的に排除できればよいのだからな。」


「だがどうやって殺す?奴らは殺そうとすれば転移の術で逃げてしまうのだぞ?」


「手段がないわけではありませんよ。どうです?邪教徒の排除、私にまかしてくれませんか?」


「どのような手段だ?」


「それは秘密ということで。あとのお楽しみというやつです。」


アンドレイ司祭の言葉に、皆は任せるか議論を始めた。

そして、ある老人が確認をした。その老人は、顔は皺が刻まれ髪も白髪となっていたが、背は真っ直ぐと伸び目は鋭い眼光を放っている。枢機卿の一人であるエドマンド枢機卿であった。


「できるのだな?」


エドマンド枢機卿の鋭い眼光にも怯まずに微笑むと自信たっぷりに宣言した。


「えぇ、邪教徒どもを綺麗に掃除してみせます。・・・一人残らずに。」


「・・・いいだろう。皆、私は邪教徒の排除はアンドレイ司祭に一任しようと思うがいかがか?」


「私は構わん。」


「私も構いません。」


幹部達はエドマンド枢機卿の判断に賛成を示していき、全員が賛成をした。それを確認したエドマンド枢機卿は、他よりも高い場所に置かれている席に座る人物に目を向けると、全員の視線がその人物に向けられる。その席に座る穏やかで優しそうな顔をした老人こそが、ホルス聖教国の統治者にして世界最大宗教であるウルスラ教の最高位である教皇・マルティヌスである。


「教皇猊下、我々は邪教徒の排除はアンドレイ司祭に任せようと思いますが宜しいでしょうか?」


「構わない。」


マルティヌス教皇は会議場を見渡し、最後にアンドレイ司祭に目を向けた。


「アンドレイ司祭、邪教徒の排除は君を最高責任者とする。女神のため、世界のため、確りと責務を果たしたまえ。」


「このアンドレイ、邪教徒どもを一人残らずに排除してみせます。全ては女神と教皇猊下の御心のままに。」


「期待している。本日の会議はこれで終了とする。」


マルティヌス教皇の解散の合図に皆は会場から退出していく、そんな中数人の幹部が集まり既に退出したアンドレイ司祭のことを話していた。


「まさか奴に任せることになるとわな。」


「だが適任ではある。」


「適任ではあろうよ!どれ程の被害が出るか解らんがな。」


「『狂気の司祭』か・・・。」


「異常者め・・・。」


彼等は忌々しげに吐き捨てた。そう、幹部達が嫌悪と畏怖をもってアンドレイ司祭を見ていたのはその過激さと見境のなさにあった。彼はウルスラ教を絶対とし、異教徒を排除するためならどのような犠牲もいとわないため、数人の異教徒を殺すために彼等が逃げ込んだ街を 一般人関係無く攻撃し多くの死傷者を出すことが頻繁に発生し、また、同じ教会関係者であろうと関係無く女神や教皇を批判すれば断罪しているために『狂気の司祭』と呼ばれ、身内である教会からも畏怖と嫌悪をもって見られているのだ。そのような人物か討伐に出るのだ、周りの被害も考えずに攻撃をするであろうことから討伐が完了するまでにどれほどの犠牲が出るのか解らない。だが、邪教徒の排除という点においてアンドレイ司祭の右に出る者はいないのだ、女神の望みを叶えるために早急な邪教徒排除の必要性から、発生するであろう犠牲に目をつぶってでも、彼に任せるしかないのが実情であった。


 数日後、アンドレイ司祭は直属の聖光騎士団の出発準備を完了し出発前の激励をする所であった。


「皆さん!我々は重大な使命があります。この美しき世界を汚し、女神の民を害する穢らわしき邪教徒を排除するという崇高なる使命が!今までは転移の術により逃げられてきました。ですが、それも今日終わるのです!崇高なる使命を邪魔するあらゆる物はどのような手段を用いても排除し、この世界を浄化するのです!全てはウルスラ様と教皇猊下の為に!!」


「「「「は!全てはウルスラ様と猊下の為に!!」」」」


ホルス聖教国の保有する騎士団でも聖光騎士団ほど恐れられている騎士団は無い。彼等はアンドレイ司祭直属として女神の威光を汚す者を情け容赦もなく冷酷に断罪するためだ。この光景を見ていた誰もが確信をしていた。神教徒はこの世から殲滅され、その過程で多くの一般人が犠牲になるであろうことを。


サウス帝国とヘリオス王国を繋ぐ主要街道の横に広がる森林、その森の奥深くに二つの人影があった。袖が広くゆったりとした服を着ている人物と防具を着た戦士らしき人物、彼等はアシュトン大神官と神教徒であるアゼルである。神教は弾圧を受けているため人目を避けて行動しているのだ。ちなみにアゼルは冒険者として旅をしている時にアシュトン大神官に助けられ、それ以来アシュトン大神官の護衛として付いてまわっているのだ。

彼等は信者が集まる予定の場所に向かっているところである。


「アシュトン様~まだ着かないんですか?」


「もう少しの筈ですよアゼル。」


「そっか~早く休みたいよ。」


「ふふふ。あと少しです、頑張ってください。」


「は~い。・・・アシュトン様、聞いても良いですか?」


「なんですか?」


「態々アシュトン様が信者の案内をするというのは、やっぱり襲撃を警戒してですか?」


「そうですね。大陸西部や北部の信者は、ラモール王国とアルカス同盟が穏健である為、ある程度安全にフキノ村に集まっています。ですが大陸南部・東部の信者はサウス帝国とヘリオス王国が過激であるために危険な状態です。」


「はい。だから危険ではあるけど護りやすくするために、集まってからフキノ村に向かうということにしたんでしたよね?」


「その通りです。恐らく村に向かうまでに数回襲撃があると考えられるために、護りを厚くすることにしたのです。」


「じゃ、僕もアシュトン様をしっかりと護ってみせます!」


「ありがとうございます。しかし本格的な襲撃は信者が全員フキノ村に集まった時に仕掛けてくるでしょうね。」


「あ~やっぱり一か所に集まった所を襲撃する方が効率的ですもんね。」


「えぇ。それに我々は安息の地を求めて集まるのです。これを逃せば、次があるかわかりません。それ故に、今までのように逃げることはできないでしょう。」


「村に着いてからも気を抜けませんね。」


「そうですね。ですが大いなる神が見守ってくださっているのです。自分達にできる限りのことをすれば神は応えて下さるので大丈夫ですよ。」


「はい!頑張ります!」


彼等は襲撃などについて話しながら集合場所に向かっていた。彼等がいつ討伐に出た聖光騎士団と会うかはわからないが、相見えることは確実であった。





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