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迫害 2

のどかな風景が広がっているヘリオス王国南部のある村。この村は全員が神教の信徒である。


「最近収穫量が増えたよな。」


「ああ。やはり、大いなる神の祝福のおかげだな。」


「大いなる神のおかげで病気や怪我なども減ったし、ありがたいことだ。」


「まったくだ。それに比べてウルスラは何もしてくれないし、神といえるのかね?」


「そうだな。それに、何もしないのなら存在しないのも同じだしな。」


村人達がその様なことを話している時であった。


「なぁ、あれは何だ?」


「どれだ?」


「あれだよ。」


そう言い指差した先には土煙が立っていた。村人達がそれを眺めていると、それが馬に乗った一団だという事に気がつく。


「あれは騎士様じゃないか?」


「そうみたいだな。なにかあったのかね?」


「さぁ?」


村人達は騎士が向かっているという事で、村長たちが村の入り口に集まり出迎えの準備をした。当然逃げようと思う者達はいなかった。当然だろう、自分達の国の騎士が自分達を害するなど、よほどのことがない限り想像もしないだろう。まして、この周辺一帯を統治している領主は圧政もしなければ善政もしない凡庸な領主なのだからなおさらだ。それが悲劇を生むことになる。


「かなりの数じゃないか?」


「ああ。こんな何もない村にあんなに大人数の騎士様が何の用があるんだろうな?」


そのような話をしているうちに騎士達は村に到着した。


「騎士様、このような所にようこそ来られました。」


「村長、挨拶はいらん。村人全員を集めよ。大事な話がある。」


「は、はい。すぐに集めます。」


村長はいきなりのことに驚きながらも、広場に集まるように指示を出す。村人達は広場に集まると隣の者と小声で話し合っていた。


「なぁ、大事な話って何だと思う?」


「さぁ、何かを伝えるにしてはずいぶん大勢な騎士様だよな。」


そんな中、隊長と思われる騎士が前に出た。


「村長、これで全員だな?」


「はい、これで全員です。」


「そうか。」


隊長が手を挙げると、騎士達は村人達を取り囲むように展開した。その異様な雰囲気に村人達は不安げに辺りを見渡した。


「諸君!集まってもらったのは君達に伝えることがあるからだ。それは・・・」


緊張して続きを待つ村人達に絶望の一言が発せられた。


「死にたまえ。」


「・・・え?」


発せられた言葉を理解する前に矢が撃たれた。


「グゥ!」


「ギャ!」


「グェ!」


矢は村人達に降り注ぎ、幾人もの命を奪うと、次は剣や槍を装備した騎士が襲い掛かった。


「ヒー!」


「た、助けてくれー!」


「死にたくない!」


逃げようとしたが騎士により取り囲まれており、逃げることはできなかった。辺りに響いていた悲鳴はその数を減らしていき、やがて消えていった。


「これで終わりだな。おい!念のため誰かいないか確かめてこい!」


「は!」


隊長が指示を出すと、騎士達は村の各所を調べに行った。その時に隊長の下に声が届いた。


「な、なぜ・・・」


「ん?まだ生きていたのか。」


その声は村長であった。瀕死の重傷であり、もうすぐ息絶える状態であった。


「なぜ・・こんな・・こと・を?」


「ふん!冥土の土産に教えてやろう。ウルスラ様より教皇猊下に神託が下され、それを教皇猊下が各国に通達されたのだ。」


「し・・神・託。」


「その通り。邪教徒を排除せよ、とな。」


「な!・・我らが・・邪・教徒・・だと!」


「そうだ。ウルスラ様がそう判断されたのだからな。もうよかろう、今楽にしてやろう。」


「く、この・ようなこ・とが・」


   ザシュ!


「まったく。いらん手間をかけさせおって。」


「隊長!村には誰もいません!」


「よし!火を放ち、撤収するぞ!」


「「「「は!」」」」


騎士達は村に火を放ち撤収して行った。村は火に包まれ、周りを赤く照らす。哀れな亡骸も火に包まれ灰となっていった。



迫害は大陸全土で起こっていた。だが、ラモール王国とアルカス同盟の北方諸国では神教の迫害はそこまでひどくはなく、討伐に出た騎士団もただ出撃するだけで、殲滅しているように見せているだけであった。もっとも、他の場所では苛烈であったが。逆にレグリ教はもともと厳しかったのがさらに厳しくなったが、もともと彼等は自分がレグリ教徒であるとは秘密にしていたため、神教ほどの悲劇は起きていなかった。

だが、神教徒を弾圧することの難しさを彼等はすぐに理解することになる。


サウス帝国のある村では他と同じように今まさに村人達が殺されようとしていた。


「死ね!邪教徒ども!!」


騎士が剣を振り上げ村人を斬ろうとする。


「く!・・・(大いなる神よ、我々をお救い下さい!!)」


大いなる神に助けを求め、祈った時であった。


 ガギィン!!


鉄がぶつかり合ったような音が辺りに響いた。


「な・・!!」


騎士が驚愕の声を上げた。振り下ろした剣は、村人の前に現れた淡い青色の光に防がれていたのだ。

異変はそれだけではなかった。


  カアァ!!


騎士達が動揺している間に、村人たち全員を光が包むと一瞬で姿を消したのだ。


「馬鹿な!単なる村人が転移の術を使えるはずがない!」


「それだけではない!数百人の人間を転移させるなど、いかなる魔道士や賢者であろうと不可能だ!」


「だが実際に目の前で起きたのだぞ!」


「そんなことは分かっている!」


騎士達は目の前で起きた有り得ない事態に互いに怒鳴りあうなど混乱していた。


「落ち着け!」


そんな中、隊長の怒鳴り声に騎士達も冷静さを取り戻す。


「今起きた事態は魔道士に任せれば良い!村人は始末できなかったが、村は焼き払い撤収するぞ!」


「「「「は!!」」」」


騎士達は命令を受けると行動を開始し村に火を放ち、撤退して行った。そして、村から離れた場所では光と同時に村人達が現れた。


「こ、ここは・・・?」


「俺達は助かったのか・・?」


「神だ・・・大いなる神が助けてくださったのだ!」


「え・・・?」


「俺は殺されそうになった時に大いなる神に助けを求めたんだ!」


「!それじゃ!?」


「あぁ!祈りに応えて下さった!!」


村人達は助けてもらったことに感謝の祈りを捧げるのだった。


このようなことは各所で起こり、神教徒を殺そうとしても防がれ逃げられてしまうのだ。そのため神教徒を殺すことは難しかった。しかし、例え命は助かっても住む場所を追われたのだ、その生活は苦しく、いつ襲われるかの恐怖にも耐えなければならなかった。神官達は天之竜河大神に自分達を迫害する者達に神罰を与えるように祈ったが、その応えに落胆するしかなかった。何故なら神は、ここで神罰を与えればその後も自分達に都合の悪い者に神罰を与えてくれと言いだしかねない、そう言って神罰は与えないと言ってきたためだ。そのため神教徒達は安息の地を求める放浪の身となっていった。


ソラは信徒を助けてくれるように、天之竜河大神に祈っていた。


「神よ、全能にして絶対なる大いなる神よ、どうか我らをこの窮地からお救い下さい。」


ソラは睡眠も食事もせずにただ一心に祈りを捧げていた。その熱心さに遂に天之竜河大神は応えた。


<人の子よ。>


「!神よ!!」


<お前の願い、叶えよう。だが、神罰は与えない。>


その応えに希望に輝いていた顔は、絶望の色を覗かす。


<神罰は与えないが、安息の地を与えよう。>


「安息の地を!?」


<そうだ。お前達が安心して暮らせる場所を与える、約束しよう。>


「あ、ありがとうございます!!」


ソラは神罰は無くても、安心して暮らせる場所を与えてくれるという事に感謝の言葉を述べた。


<フキノ村に集まるのだ。その時に安息の地へ連れて行こう。>


「はい!」


ソラはやつれていたがその眼は希望に輝いていた。そして全世界の神教徒に神からこのことが伝えられると、人々は希望を持ちフキノ村に向かい始める。

いつしか神教徒の間では、神が与えてくれる安息の地をこう呼ぶようになった  『約束の地』  と。





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