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布教 2

その後、負傷者全員を治療し終えたソラは、荒らされた田畑の前に村人達と一緒に集まっていた。田畑を再生するためだ。踏み荒らされ、焼き払われた田畑を再生させるなど、精霊魔法でも大地に関わる地の魔法や光魔法など、どのような魔法でも不可能であるが、村人達は期待を抱いていた。死の寸前の負傷者を完全に治癒した、初めて聞く神に仕えるソラという神官ならきっと何とかしてくれる、そのように思っているのだ。


「では、始めます。」


ソラが言うと皆、後方で姿勢を正し、緊張した面持ちになった。


「<創造神たる大いなる神よ その偉大な力により 消えた恵みを今一度蘇らせ 大地に活力を与えたまえ 豊穣の奇跡!>」


ソラが呪文を唱え始めると、荒れた田畑が淡く光り始めた。光は段々と強くなり田畑を包み込んだが、その光は目が痛くなるような強烈な光ではない、穏やかな光であった。光が消えると、踏み荒らされ、焼き払われ無残な状態であった田畑は、作物を実らせた元の状態に戻っていた。


「「「「おおお!!」」」」


「凄い!植物とはいえ、一度消えた命を蘇らせるなんて!」


「何という奇跡!これが神聖魔法の力なのですね!」


「ソラ神官様!貴方は村の救世主です!」


「ソラ神官様!感謝します!」


村人達の驚嘆の声、ソラへの感謝を表す声が上がった。すでに天之竜河大神が存在することを微塵も疑っていなかった。それも当然であろう、植物とはいえ死んだ存在を蘇らせる、どのような精霊魔法、光魔法でも成し得ない奇跡が目の前で起きたのだから。ついでに、ソラに対しても言葉遣いも変わっていたが。


「ソラ神官様!天之竜河大神はどのような神様なのですか?」


「我々の祈りに天之竜河大神は応えて下さるのですね?」


ソラに天之竜河大神について、凄まじい勢いで質問をし始めた。


「皆さん!落ち着いてください!大いなる神・天之竜河大神についてしっかりと教えますので!」


ソラの言葉に村人達は段々と静かになったが、興奮を隠せない様子であった。そして、ソラはこの世界の成り立ち、魔神レグリオスの存在、かつて起きた天之竜河大神と魔神レグリオスの戦い、その後の世界の再生、そして魔神復活についても話して聞かせた。


「そのようなことが過去に起きていたとは・・・。」


村長をはじめとした村人達は世界創生の話を聞き、驚愕の念を抱くのだった。


「大いなる神によれば、既に魔神レグリオスは自我を持つまでに目覚めているとのことです。ですから私達は、各地を旅しながら天之竜河大神と魔神レグリオスの存在を広めているのです。」


「なるほど・・しかし、大丈夫なのですか?魔神が既に自我を持っているのは?」


「・・・正直に言いましょう、魔神の完全な復活を止めることは、大変難しいです。」


「「「「!!」」」」


村人達は、かつて世界を破壊した魔神の復活の可能性が非常に高いと知り、絶句し恐怖した。その場が恐慌状態になりかけた時、ソラの声が響いた。


「落ち着いてください!大丈夫です!勝機はありますし、大いなる神が私達を助けて下さいます!」


勝機があること、大いなる神が自分達を助けてくれるということに、村人達は落ち着き始めた。


「確かに魔神は脅威です。ですが現在と当時では状況が違うのです。神代では大いなる神の下、平和であったことから、攻撃魔法などはほとんど存在せず、武器も神から授けられた武器を除けば、今ほど精錬された物はありませんでした。それ故に、魔神率いる魔の軍勢に人類は満足に戦えず、地上界は大きな被害を受けその状態で魔神が封印される最後の瞬間に放った攻撃により、世界は致命傷を負ったのです。」


「神代の人類はそれ程に劣勢だったのですか・・・」


「はい。ですが現在は神代とは違います。良いか悪いかは別として、人類が幾度も戦争をしたことにより、武器や魔法の技術が格段に上がっているのです。この技術と大いなる神の加護があれば、魔の軍勢とも十分渡り合え、世界を破壊されるほどの被害は受けないはずです。」


「なるほど。」


村人達は今の状態は、十分勝機があると知り完全に平静さを取り戻した。その後、村人達は魔神のこともだが天之竜河大神に祈るとどうなるのかも真剣に聞いた。


「大いなる神は、祈りには基本応えて下さいます。ですが願いを必ず叶えてくれる、ということではありません。」


その言葉に動揺が広がった。


「どういう事ですか?祈りには応えて下さっても、願いを叶えてくれないこともあるとは。」


「大いなる神は、自ら努力することが大切だと考えておられるのです。まずは自分の出来る限りのことをし、それでも駄目な時に神は力を貸して下さるのです。そのため、大いなる神が初めから願いを叶えるために力を貸して下さることは、よほどのことがない限り、ありません。」


「確かに神官様のおっしゃる通りですね。最初から神の力をあてにし、努力をしないことは堕落と同じです。」


「ええ。人事を尽くして天命を待つ、自分の全力をかけて努力をすれば、自ずと結果は付いてきます。」


「おっしゃる通りです。」


村人達は感銘を受けたように頷いた。


「もちろん、些細なことに対して祈るな、ということではありません。日常の報告、心の整理をしたいとき、誰かに励ましてほしい時など、祈ってください。祈れば大いなる神の意志を感じられるでしょう。何か挑戦することを報告すれば、激励の意志を感じられ、落ち込んでいる時に祈れば、励ましの意志を感じられます。」


「おぉ、神は私達を見守って下さっているのですね!」


「その通りです。大いなる神は常に天より、厳しくも温かく見守って下さっています。実際に治療や田畑の再生に対して、感謝の祈りを捧げてみては如何ですか?そうすれば、より深く理解できると思いますよ。」


そして、実際に天之竜河大神に感謝の祈りを捧げた。すると、村人達は確かに大いなる意思を感じたのだ。言葉で話しかけられたわけではない、だが確かに、自分達が受けた被害に対しての、励ましや気遣いを感じることができたのだ。このことに、村人達は感激し泣き崩れる者もいた。それも当然である、今まで女神ウルスラに祈っても何の意志も感じず、願いが叶えられることはなく、女神は自分達を見守ってくれているのだろうか、そのような疑問や不信を持っていた。だが、天之竜河大神は、祈れば励ましてくれるなど応えてくれ、願いも努力をし、それでも駄目な時は力を貸してくれるというのだ。これほど喜ばしいことはない。また、神に常に見守られているという安心感を持つことができるのだから、皆が天之竜河大神を信仰し、神教の信者になるのは当たり前のことであった。

こうして、ソラは村に数日滞在し神教についてより詳しく教えると、また布教の旅に出るのだった。


ソラだけではなく、アシュトン、ライズの二人も各地で奇跡を起こしながら布教していた。疫病が起きていれば患者を治療し、辺りを浄化することにより菌を消し、雨が降らなければ雨を降らし、大雨が続く場所では晴れた状態にする、このような奇跡を各地で起こしていた。それにより、ラモール王国・アルカス同盟北東部を中心に信者を確実に増やしていた。


だが、魔の胎動も確実に強まっていた。ヘリオス王国を中心にある宗教が広まっていた。その名は、レグリ教といった。レグリ教が広まっている場所では、子どもが姿を消し、惨たらしい姿で発見される事件や不審な死を遂げる人などが増えていた。その噂が広まると、神教の信徒達は魔神レグリオスの存在を感じ、警戒を強めていた。

では、レグリ教はどのようにして生まれたのか、それはソラ達三人が布教の旅に出た数日後に、ヘリオス王国のエール村で起きた悲劇が関係している。



辺りは火に包まれ、無数の亡骸が転がっていた。そんな悲惨な光景の中、一人の青年が瀕死ながらも辛うじて意識を保っていた。


「何で、何でこんなことに・・・。」


エール村は辺りを領地とする領主の軍に殲滅されたのだ。理由は、見せしめのためだ。領主は圧政をしていたため、それに反抗する存在は少なからず存在した。その者達に、逆らえばどうなるか見せ付けるために、生贄として選ばれたのが運悪くエール村だったのだ。そして、村人達は殺され、かろうじて意識のある青年だけが生きていた。


「俺達が何をしたっていうんだ・・・。」


青年は、領主や村を襲った人間達を憎みながら死んで逝くことになるはずだった。ある存在に目を付けられなければだが。


<憎いか。>


突然青年の頭に声が響いた。


「だ、誰だ?」


<余は魔を司る神、レグリオスなり!>


「魔、神?」


<そうだ。余のことは後で説明してやろう。繰り返すが、憎くないか?>


「・・・・。」


<憎いであろう?何もしていないのに自分達を殺した存在が、それを止めなかった神々が。>


「神々?」


<そう、女神ウルスラとこの世界の創造神・天之竜河大神だ。>


「そのような存在が・・・。」


<存在するのだ。神々ならばこの事態を防ぐことができたはずだ。だが、実際には何もしなかった。憎いであろう?神々が!この事態を引きを越した人間が!この状態を知らずに普段通りの生活をしている人類が!>


青年は思った。なぜ神々は助けてくれなかったのか、領主はなぜこんなことをするのか、なぜ自分達だけがこんな目にあうのか、そう思うと心の底から憎しみが湧いてきた。


「・・・・憎い。」


<そうであろう?憎いであろう?>


「憎い、憎い!なぜ俺達だけがこんな目にあう!」


<全ての人類に同じ目をあわせてやれ。余を蘇らせれば同じ目にあわせられるぞ。>


「ああ!あんたが蘇る手伝いをする!だから復讐する為の力をくれ!」


<人間をやめることになるが、かまわないな?>


「ああ!」


青年が答えると同時に、黒い渦が青年を包み込んだ。渦が消えると、其処には傷ひとつない青年が立っていた。だが、その肌は死人のように青白く、眼は赤色になっていた。


<お前は余の配下たる真祖の吸血鬼になった!これから、アセルと名乗り余を復活させるため人間達の絶望、怒り、恐怖、悲しみなどを引き越すのだ!>


その言葉に青年、アセルは片膝をついた。


「了解しました。わが主、レグリオスよ。」


アセルは人々の負のエネルギーを集めるためにレグリ教を作り、教祖となったのだ。おもに、子供を生贄にしたり、気に入らない存在を呪い殺すなどして人々の負の感情を引きを越している。特に貴族の不正が横行しているヘリオス王国で広まっていた。このようにしてレグリ教は誕生したのだ。


後に解放戦争、聖戦、と言われる二つの大戦が起こる環境が整いだした。





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