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プロローグ

 DMMORPGが一般家庭でも気軽に遊べるようになっている時代、その中に日本のメーカーが発売した『ユニバース』というDMMORPGがあった。


 『ユニバース』とは、基本的に他のDMMORPGと同じ剣や魔法などを使い、冒険をするゲームであり、基本的に第一世界と第二世界の二つの世界で構成されてをり、一つの世界の大きさは鳥取県ぐらいである。そして、この『ユニバース』が他とは決定的に違う点として、隠しクラスの力がある。『ユニバース』の隠しクラスは、運営が定めた多くの条件をクリアし、なおかつ運営の協議によって合格した人物だけがなれるクラスである。

 隠しクラスとは、すべてのクラスを合わせれば800以上ある中でも、「聖騎士」「大賢者」「精霊王」「真祖」「神竜王」などの圧倒的な力を持つ最上級クラス、それらを超える存在すなわち「神」である。


 「神」は最上級クラスLv100のプレイヤーを超える力を持っているだけではなく、フィールドを自由に作り変えることができ、NPCやプレイヤーに祝福や加護などを授けての強化などもできる。そして、自分が考えた武器・防具・道具、すなわち神具とNPCを作ることができ、作った強力な神具をプレイヤーに渡すだけではなく、NPCに渡すこともできるのだ。つまりフィールドを徘徊している雑魚モンスターに祝福や加護そして、自らが作った神具を装備させることによりボスモンスター並みの強さにしてしまうことが可能ということだ。


 そのためプレイヤーにとっては、たまったものではなかった。なぜなら、いきなり移動していた砂漠フィールドで吹雪が起こり氷が張る極寒のフィールドになる、本来はイベント以外では破壊することができない町や都市が消し飛ばされる、雑魚だった敵が祝福を受けて強敵になりパーティーが全滅する、などという事が実際に起こるからである。だが逆に祝福や加護または強力な神具などを授けてくれたりする事もあるので、ありがたいこともあった。そのため「神」とは一種の自然災害と認識されていた、恵みの存在となることもあれば恐怖の存在にもなるからだ。

 また、「神」の特徴としてNPCやプレイヤーから信仰を得ることができ、それを自らの力・神力とすることができる。もちろん信仰がなくても圧倒的な神力を持っている為、絶対に必要ということではない、言うなれば自転車の補助輪のような物だ。

「神」となったプライヤーの中にはこの特徴を使い、自らの神力を使わずに信仰で得た力だけを使うという、縛りプレイを楽しむプレイヤーもいた。

 だが「神」はそれだけではない、最も注目すべき点は、運営の許可を得って二つの世界の中の、好きな場所に新しいエリアを創造することができること、運営の許可と同時に、すべての神々の合意が得られれば、神々全員合わせて二つまで、新しい世界を創造できるというこの二点である。まさに、天地創造ができるのである。

 


 もちろん実際にエリアや世界などを作るためのプログラムを組み立てることはできないので、自分が考えた案を運営と協議をして作ってもらうのだが、それでも「神」というクラスは魅力的であるため、「神」になるなめの条件を探すこともこのゲームをする上での楽しみとなっていたが、これら反則的なチートから条件は厳しく、今まで五人のプレイヤーしか「神」になれていない。





だがそれも昔のこと、時が進むにつれ『ユニバース』は過去の物となり人々は新しい物を求め『ユニバース』は廃れていった。







 「神」の拠点。

 それは「神」となったプレイヤーが作った、他のプレイヤーの拠点とは全く違う異空間に存在する領域のことである。


 「神」となったプレイヤーの拠点は通常は入ることができず、「神」の許可を得て初めて入ることができる。だが物事には何事にも例外というものが存在する。そう、別の「神」の力を借りて拠点に侵入することもできるのだ。最上級クラスになったプレイヤーの中には、自らの力が頂点に君臨する「神」にどこまで通じるのか、腕試しの意味で挑戦する人物もいた。もっとも「神」にダメージを与えられたプレイヤーは一人もいなかったが。

 また、暇を持て余した「神」は「神」同士で争うこともあり、その戦いは天が裂け、地が割れる天変地異の連続で、まさに神の戦いであった。この「神」同士の戦いは、周りに影響が出ないように隔離することもできたが、そのような事はされずに、一種のイベントのような扱いとなっていた。そんな「神」の中でも、アースガルド神界を拠点とする「ウォーデン」、オリンポス神界を拠点とする「ユピテル」は、神々の戦いの代名詞と言ってもいいほどに争っていた。

 

そんな神々の戦いを滅多にしない「神」として天界を拠点とするプレイヤー「天之竜河大神あまのりゅうがのおおかみ」がいた。

 

 天界。

 他の神々の拠点と同じように空に島が浮いているような形をしている。入口には鳥居が存在し、そこから参道が伸び、両脇に狛犬が配置され、大きな和風の建物がある。

天界に侵入したプレイヤーは思わず


「神社そのまんまじゃん・・・!!」


と言ってしまうほどである。

配置されている狛犬は、強力な防衛システムであるガーディアンであったが。

 とにかく建物の奥・・・神社の奥に天界の主である青年「天之竜河大神」がいた。

天之竜河大神は黒髪黒眼の平凡な顔つきをした青年であり、空と同じ青色の剣道着のような着物の上から、真っ白な羽織を羽織ってをり、首からは勾玉をかけていた。

 そう、天之竜河大神は『ユニバース』の中でも随一の和風好きとして有名であった。彼を一躍有名にした事件として「ウエスタン事変」がある。

 ウエスタン事変とは、第二世界・西方大陸の西部にウエスタン地方という地域がある。そのウエスタン地方にウエスという都市があり、その都市を本拠地としている「ストロング」という最上級クラスも一人所属し、上級クラスも多く所属している上位ギルドが話していた内容により起きた事変である。

 その日、天之竜河大神が神眼により天界から地上界を眺めて暇をつぶしている時、ストロングは次はどのような冒険をするかを話している時であった。


「次は第二世界の東方大陸の竜の谷でいいんじゃないかな?」


「そうね・・・私は別にかまわないけど、みんなもそれで良い?」


広間に集まっていたプレイヤー達が頷いたときに、その中の一人がふと思いついたように言った。


「東方大陸っていったら和風な大陸だったよな」


「そうだな。それがどうかしたか?」


「いやさ~和服ってさ古臭くない?」


「あ~確かに言えてるな」


そう言ったときにウエス都市は消滅した。

 都市にいた誰もが何が起きたのか理解ができなかったが、外から見たら気づいただろう、空から光が降ってくる様子に。

 後に都市周辺にいたプレイヤーは復活後、何が原因だったのかを話しているときに、運営からの連絡を見て何が起きたのかを知ることになった。


「ウエス都市周辺は天之竜河大神による攻撃により消滅しました。また、ウエスタン地方全体にも甚大な被害が生じておりますので、ご注意ください。ウエス都市周辺の復旧は、運営で致しますのでしばらくの間封鎖をいたします。ご理解とご協力のほど、宜しくお願い致します。」


この連絡を見たプレイヤーは誰もが戦慄したが、同時になぜ、彼は攻撃をしたのかという疑問が生まれるのは当然の帰結であった。

 その後、天之竜河大神からの連絡は次のような物であった。


「だってストロングの奴らが和服のことを馬鹿にしてムカついたからさ、ちょっとお仕置きしただけだよ」


これを見て誰もが戦慄し、以降和風のことを話すときは気をつけながら話し、何か否定的な事を言うときは褒めた後に少しだけ苦言を言うようにするという暗黙の了解ができたのだった。

 この事件は、ウエスタン事変と呼ばれ、今まで温厚だと思われていた天之竜河大神が趣味のことには、頭がちょっと逝っちゃている人物と認識されたのであった。

 こうして彼は一躍有名になったのである。


 ちなみに、ストロングのプレイヤーは和風の話がでると挙動不審になり、天之竜河大神の名前を聞くと怯えるようになったという。




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