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第四章 ねこねこ軍団対殺し屋軍団 4


   4


「くそ、入り口はどこだ?」

 瓢一郎は焦る。さっきから床を調べているが、秘密のドアのようなものがどうしても見つからない。

『あのエレベーターじゃないんですの?』

 姫華が猫の手でエレベーターを指さす。

『だけど、下に行く表示がないぞ』

『きっとなにか特殊な仕掛けがあるんですわ』

 姫華がテレパシーでいったことはたしかに一理ある。みなにも伝えるべきだ。

「ひょっとして、あのエレベーターに、さらに下に行く仕掛けがあるんじゃないのか?」

「そうかもね。だけど仕掛けってどんな?」

 葉桜に聞かれるが答えようがない。わかるはずもない。

「いろいろ試してみましょう」

 理恵子はそういうと、嬉々とした顔で率先してエレベーターに乗り込んだ。瓢一郎たちも続く。

「う~ん。パネルのこの部分には普通、工事点検用にエレベーターを止めるスイッチとかがあるんですよね。鍵がかかってますけど」

 理恵子は階数ボタンの下あたりにある金属のパネルについた取っ手を、かちゃかちゃいじっていた。

 ポケットから葉桜がマンションのドアを開けたのに使ったのと同じ金具を取り出すと、鍵穴に突っ込むとあっという間に開ける。葉桜よりも早い。

「わあ~っ、すごい!」

 葉桜がそれを見て素直に感嘆し、拍手する。

 おまえ、教師のくせに、自分の生徒がどうしてそんなことができるのか不思議がれ。だいいち、理恵子、なんでおまえはそんなエレベーターの構造なんかに詳しいんだ? そうつっこみたかったが、やめた。

 なんでかは知らんが、こいつらはなんでもありだ。つっこんでなんかやるもんか。

 小さなパネルの中にはいくつかのスイッチが付いていた。理恵子はそのうちのひとつを押す。

「これでとりあえずエレベーターは止まりました。この中に下へ行くスイッチがあるかと思ったんですけどないですね。となると、どうやって下に行くかですけど……」

「ひょっとしてこの階数表示のボタンを暗証番号のように押すんじゃないのかしら?」

「きっとそうです」

 葉桜の意見を理恵子はすんなり受け入れた。

「この建物は十階までありますからね。10を0とするとATMと変わりませんよ。間違って子供が適当に悪戯で押した場合作動したら困るから、押す順番はランダムに設定してあるはずです。間違っても、1、2、3、4なんて順番はあり得ません」

「どうやって探す? 適当に押すのか?」

「何桁の暗証番号かわかりませんが、四桁でも10の4乗、つまり一万通り、五桁なら十万、六桁なら百万通りあります。適当にやってたらぜったいに無理です」

「じゃあ、どうする?」

「任せてくださいっ」

 理恵子は瓢一郎の問に元気よく答えると、背負っていたデイパックから刷毛のようなものを取り出し、それに瓶に入った粉を付けはじめた。

「なんだそりゃ?」

「お仕事の七つ道具……じゃなくて、……とにかく、指紋を採ります」

 いうが早いか、それで粉を階数ボタンに塗りたくる。つっこみどころ満載だが、誰もなぜそんなものを持っているかとか、お仕事ってなんだとか、つっこまない。せめて目的くらいは聞くべきだろう。

「だけど指紋たって、ぜんぶの階に付いているだろう? 相手の正体がわからないから指紋だってどんなものが付いてるかもわからないし」

「いろんな階にある同じ指紋、それもはっきりした新しいやつがそれです」

 それは理にかなっていた。ひとりでいろんな階に用のある人はたしかにほとんどいない。しかしいくつも重なった指紋からそんなのを見分けることができるのか?

 理恵子は取りだしたデジカメでボタン全体の写真を撮ると、それを手に持っていたノートパソコンに取り込んだ。

「肉眼ではわからなくても、パソコンを使えば、重なっている指紋を選別できますよ」

 理恵子は微笑みながら、パソコンをすごいスピードで操作した。

「ビンゴ!」

 嬉しそうに指を鳴らす。

「番号は1、3、9です。たぶんどれかが重複してます」

「それをどうやって組み合わせる?」

「3は指紋が重なっています。どっちもはっきりした新しい指紋。だから3は続けて押したんじゃなく、一度指を離してからもう一度押してるってこと、つまり3の間には別の数字を挟んでいます。あとは押された指の位置とかすれの方向から推測するに……」

 理恵子は三秒ほど考えた末に結論を出した。

「3、9、1、3」

 いうが早いか、理恵子はエレベーターを止めるスイッチを解除し、かわりに今いった番号を順番に押した。

 がくんとエレベーターはさらに下に向かった。

「ほうら」

 理恵子は思いきり得意がる。

 いったいこいつは何者だ?

 その疑問は激しく深まるが、今はそんなことを気にしている場合じゃない。

 瓢一郎は気を引き締めた。

 エレベーターは止まり、ドアが開いた。



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