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すれちがい  作者: あい


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9/10

届かない...

放課後が近づく頃、

教室の空気は少しずつざわつき始めていた。


まほはノートを閉じながら、

ちらりと蒼井のほうを見た。


(……今日こそ、少しだけでも話したい)


胸の奥がそわそわする。

手のひらがじんわり汗ばむ。


心々がまほの顔を覗き込む。


「まほちゃん、どうしたの〜? なんかそわそわしてる」


「えっ……な、なんでも……」


沙耶が優しく微笑む。


「無理に言わなくていいけど、

 まほちゃん、今日はちょっと頑張ってる感じする」


玲も静かに頷く。


「うん。表情が違う」


まほは耳まで赤くなる。


(……そんなに分かりやすいのかな)


でも、

三人の言葉が背中を押してくれた。


チャイムが鳴り、

担任が軽く連絡事項を伝えると、

教室は一気に放課後の空気に変わった。


まほは深呼吸をひとつ。


(……行こう)


ゆっくりと立ち上がり、

蒼井の席へ向かって歩き出した。


心臓がどきどきする。

足が少し震える。


(……大丈夫。少し話すだけ)


蒼井は、

まほが近づいてくるのに気づいた。


(……話しかけてくれるのか)


胸が少しだけ高鳴る。

手が止まる。


まほが口を開こうとした、その瞬間――


「蒼井ー! ちょっと来てくれ!」


別の男子が蒼井を呼んだ。


蒼井は一瞬だけ迷った。

ほんの一瞬。


でも、呼ばれた方向へ向かってしまう。


まほは立ち止まった。


(……また、タイミング逃しちゃった)


胸の奥がきゅっと痛くなる。


蒼井は、

呼ばれた男子の話を聞きながらも、

まほのほうを気にしていた。


(……ごめん)


言葉にはできない。

でも、胸の奥がざわつく。


(なんで……話しかけてくれないんだ)


自分が避けているように見えるのだろうか。

そんなつもりはないのに。


(……俺、どうすればいいんだ)


不器用な心が、

自分でも分からない方向へ揺れていく。


まほは席に戻り、

心々たちのところへ歩いていった。


心々がすぐに気づく。


「まほちゃん、どうしたの? 声かけなかったの?」


「……うん。タイミング、なくて……」


沙耶が優しく言う。


「焦らなくていいよ。

 まほちゃんのペースで大丈夫」


玲も静かに続ける。


「無理すると、逆にすれ違う」


まほは小さく頷いた。


(……そうだよね)


でも、

胸の奥の痛みは消えなかった。


帰り支度をしながら、

まほは窓の外を見つめた。


(……話したかったな)


ほんの少しの勇気が、

また空振りに終わってしまった。


でも、

その横顔を蒼井は見ていた。


(……話したいのに)


言葉が出ない。

距離が縮まらない。


だけど――

胸の奥に芽生えた感情だけは、

確かに少しずつ大きくなっていた。

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