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すれちがい  作者: あい


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4/10

自己紹介!

担任が教室に入ってきた瞬間、ざわついていた空気がすっと静まった。


「よし、まずは自己紹介からいこうか。前の席から順番にな」


その言葉に、教室のあちこちで小さな息が漏れる。

緊張、期待、不安。

いろんな気配が混ざり合っていた。


まほも胸の前でそっと手を握りしめる。


(……うまく言えるかな)


心々が隣でひそひそ声を出す。


「まほちゃん、大丈夫だよ〜。心々が応援してる!」


「う、うん……ありがとう……」


沙耶が微笑む。


「落ち着いて話せば大丈夫。誰も怒らないから」


玲も軽く頷く。


「順番来たら、名前言うだけでいいよ」


三人の言葉が、まほの緊張を少しずつ溶かしていく。


前の席から順に自己紹介が始まった。

明るい声、落ち着いた声、緊張で震える声。

いろんな“はじめまして”が教室に積み重なっていく。


後ろのほうでは、陽キャのグループが楽しそうに笑いながら順番を待っていた。

中心にいる子は、堂々とした声で自己紹介をして、

クラスの空気を一気に明るくする。


(……すごいなぁ)


まほは思わず見とれてしまう。

でも、その子はまほたちのほうを見ることはなかった。


そして、まほの番が来た。


「つ、次……希望守まほさん」


「は、はいっ……!」


立ち上がると、足が少し震えた。

でも、心々たちがそっと視線で励ましてくれている。


「き、希望守まほです……よ、よろしくお願いします……」


声は小さかったけれど、ちゃんと届いた。

クラスのあちこちから「よろしくー」と返ってくる。


まほはほっと息をついて席に戻った。


「まほちゃん、よかったよ〜!」

「うん、落ち着いてた」

「かわいかったよ」


心々、沙耶、玲が次々に声をかけてくれる。

胸の奥がじんわり温かくなった。


そして、蒼井の番が来た。


「次、蒼井くん」


蒼井は立ち上がり、短く言った。


「……蒼井です。よろしく」


それだけ。

でも、声はしっかりしていて、無駄がなかった。


(……かっこいいな)


まほは思わずそう思ってしまい、慌てて視線をそらした。


蒼井は席に戻ると、ほんの一瞬だけまほのほうを見た。

けれど、まほが気づく前に視線を落とす。


ほんの少しのすれちがい。


自己紹介が終わると、担任が言った。


「よし、今日は軽くオリエンテーションして終わりだ。

 隣同士でプリント配るから、協力してな」


その言葉に、まほの心臓がまた跳ねる。


(……隣って、蒼井くん……)


蒼井も少しだけ固まっていた。


二人の距離は近いのに、

心はまだ遠回りしている。


でも、この小さな“協力”が、

次のすれちがいの始まりになることを、

まほはまだ知らなかった。

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