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すれちがい  作者: あい


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3/3

はじめてのともだち

担任がまだ来ない教室は、ざわざわとした空気に包まれていた。

まほは机の端をそっと指でなぞりながら、隣の席の少年――さっき廊下ですれ違った彼――に声をかけるべきか迷っていた。


(……何を話せばいいんだろう)


話したい気持ちはあるのに、言葉が喉の奥で固まってしまう。


そんなとき。


「ねえねえ、隣いい?」


ぱっと明るい声がして、まほの机の前にひょいっと顔を出した子がいた。

弾けるような笑顔。

その子は迷いなくまほの席に身を乗り出してくる。


「わたし、天真心々(てんまこころ)! よろしくねっ」


勢いに押されて、まほは思わず背筋を伸ばした。


「き、希望守まほです……よろしくお願いします……」


「まほちゃん! かわいい〜!」


心々は本当に嬉しそうに笑う。

その明るさに、まほの緊張が少しだけほどけた。


「心々、また初対面で距離近いよ」


柔らかい声がして、心々の後ろからもう一人の女の子が現れた。

落ち着いた雰囲気で、まほに向けて穏やかに微笑む。


「ごめんね、びっくりしたよね。わたしは白椿沙耶(しろつばきさや)。よろしく」


「れいもいるよー」


さらに後ろから、涼しげな声がして、

薄氷玲がひょこっと顔を出した。


薄氷玲(うすらいれい)。よろしくね、まほちゃん」


まほは驚きながらも、胸の奥がじんわり温かくなる。


「よ、よろしくお願いします……!」


心々・沙耶・玲。

三人とも雰囲気は違うのに、自然とまとまっていて、

まほはその輪にそっと迎え入れられたような気がした。


心々がくるっと振り返る。


「ねえねえ、まほちゃんの隣の子は?」


突然話を振られ、少年――蒼井が少しだけ目を丸くした。


「……俺? ああ……蒼井。よろしく」


短く、それだけ。

でも心々は気にした様子もなく笑う。


「蒼井くんね! よろしく〜!」


沙耶と玲も軽く会釈する。


「よろしくね、蒼井くん」

「よろしく」


蒼井は少しだけ視線をそらしながら、

「……ああ」

と返した。


その横顔を見て、まほは胸がざわつく。


(……なんでだろう。さっきより、話しづらそうに見える)


心々の明るさに押されているのか、

沙耶や玲の落ち着いた雰囲気にどう返せばいいか迷っているのか、

それとも――


まほが考えていると、

教室の後ろのほうで、別のグループが楽しそうに笑っているのが見えた。

明るくて、積極的で、中心にいるタイプの子。

周りに人が集まっていて、声もよく通る。


(……あの子、すごく人気なんだな)


まほは少し気になったけれど、

その子はまほたちの輪に入る気配はない。

蒼井のほうを見ることもなく、

自分のグループの中心で楽しそうに話していた。


そのとき、教室の扉が開く。


「はーい、席ついてー。自己紹介から始めるぞー」


担任の声が響き、教室の空気が一気に引き締まった。


まほは深呼吸をひとつ。

“はじめての友達”と“はじめてのクラス”が、

ゆっくりと動き出していく。

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