006 出た、チャーシュー
待ち人来ず。
美玲ちゃんと萌ちゃんのテーブルに現れたのは、待望の蜂谷優斗くんじゃなくて、となりの二組の男子で放課後怪奇クラブ(学校非公認)の部長、綾小路薫くんだった。
小学六年生とは思えない相撲取りのような巨体で、いつも坊主頭から湯気が立つほど汗をかいている。
その風貌から、美玲ちゃんにチャーシューと呼ばれているが、なぜか本人もそのあだ名を気に入っている。
……わけわかんないよね。
「薫くんも来てたんだ。そんなところに突っ立てないで座ったら?」
萌ちゃんがさらりと言った。
その手のひらが指しているのは、美玲ちゃんの隣の席。
出たな、策士め!
スマートに着席を促すふりをしながら、しっかり美玲ちゃんの隣に座らせる作戦。
当然、あとから来る優斗くんは、萌ちゃんの隣に座ることになる。
脂ぎった眼鏡越しに、チャーシューの視線が左右に動く。
「ほな、お言葉に甘えて……」
にっこりと微笑んで選んだ席は、なんと萌ちゃんの隣だった。
驚きを隠せないといった萌ちゃんの表情。
対して、美玲ちゃんの表情は……?
笑っている!
顔を伏せて表情こそ見えないが、肩を震わせ笑っている!
ぼくは何事かとテーブルの下に飛び降りて、美玲ちゃんの席を見上げた。
いつの間にかそこには、大きなリュックが置かれていた。
さっきまで優斗くんのために空けておいた席に、しれっと足元のリュックを移動させていたんだ。
テーブルの下から見上げるぼくに、憎らしいほど姑息な笑みを見せつける美玲ちゃん。
みなさん見ましたか?!
これがぼくのご主人様、ドSの美玲ちゃんです!
あの萌ちゃんに、一矢報いたんです!!
……と、まぁ、
機転の利いた美玲ちゃんの攻撃に、ついはしゃいでしまったけど、本当にふたりは仲良しなんだよ。




