062 夏の夜の夢の如し
「さぁ、そろそろ行こうぜ」
ジョーがエレベータの扉に手をかけながら、ぼくらに呼びかけた。
放心状態のチャーシューの背中を押して、大地からキノコのように生えているエレベータに乗り込む。
その瞬間ーー。
耳をつんざく爆発音とともに、エレベータが煙に包まれたんだ!
耳がキーンとしている。
ジョーが外に飛び出しながら、何かを叫んでいる。
あわててぼくもエレベータから降りる。
咳き込みながら、美玲ちゃんも降りてきた。
「……チャーシューは?」
ようやく音が戻ってきたけど、チャーシューが何処にもいない。
「……また消えちゃったの?!」
美玲ちゃんも辺りを見回す。
いつのまにか其処は、暗闇に包まれた夜の事務所に変わっていた。
「元の世界に戻ったのか……。おい、あれ!」
ジョーがエレベータを指差す。
チャーシューは、煙がおさまったエレベータの中にいた。
すっかり巨漢の小学五年生に戻って、気を失っている。
「チャーシュー!」
美玲ちゃんがエレベータに走り、倒れたチャーシューの顔を覗き込んだ。
「……大丈夫?!」
「あぁ、黒崎はんやんか……。わい……寝てたんやろか?」
「ちょっと、気を失ってただけよ」
ああ、よかった……。
なんで爆発したかわからないけど、怪我はしてないみたい。
「そうか……。なんかごっつい長い夢を見てた気がすんのやけど……」
「えっ……」
ぼくとジョーは、エレベータの外で顔を見合わせた。
暗黙の了解で、ぼくらはあの世界のことを言わないことにした。
「憶えてないの、その夢……?」
「大変な目にあった気がするんやけど……。なんや幸せな夢やったなぁ……」
ここからじゃよく見えない。
だけどチャーシューの目に、少し涙が光っているようにも見える。
美玲ちゃんは申し訳なさそうに眉根を下げて言った。
「……楽しい夢だったんだね。ごめんね、起こしちゃって……」
そして愛おしそうにチャーシューを見つめると、まるで自分の子どもにするように、その頭を撫でた。
「ただの夢やで。でもいつか、同じ夢が見れるとええけどなぁ……」
「きっと見れるよ、またいつか……」
嘘だよね……。
ぼくは自分の目を疑った。
白い光に包まれたエレベータのなかで、ふたりはとってもお似合いに見えたんだ。




