047-02 絶対王者
王が『1』を申告した。
勝利に必須な6番目の芯を王に取られるということは、芯が折れたアウトの7番目を取るのは、必然的にジョーとなる。
「勝負はまだ続いている。奴隷よ、芯を1つ取れ」
奴隷がロケット鉛筆の後ろから5番目の芯を押し入れる。
先端から飛び出た6番目の芯を見て、ぼくらを取り囲む人影が歓声をあげた。
「次はお前の番だ、顎の男。数を申告しろ」
奴隷たちに両腕を抱えられて、ジョーが王の前に突き出された。
跪かされたジョーに向かって王が続ける。
「1でも2で構わない。早く言え、お前の敗北は確定している」
「……へへ、だったらよぉ、申告する数は『2』だぜ? おれはお前ぇみてえに、チンケな数は申告しねぇ!」
「負け犬の遠吠えとは正にこの事。この世界は勝利にこそ意味があるのだ」
王が奴隷からロケット鉛筆を取り上げた。
ロケット鉛筆の後ろから、王みずから6番目の芯を押し入れる。
筒の先から、7番目の芯の先端は現れない。
まさにいま、ジョーの負けが決まったんだ。
歓声をあげる奴隷たちの中心で、ジョーはひとり項垂れていた。
王がその大きな顎を持って、顔を上げさせる。
「……ようこそ、我が王国へ」
王の手が、素早くジョーの目の前を横切った。
次の瞬間、ジョーの目玉は1つになっていた。
ほかの奴隷たち同様、額の下にひとつーー。
その姿を見ていた奴隷たちが一転、しんと静まり返っている。
「……まずは奴隷の塔の最下層の一部になるのだ。新たな奴隷が加わるほどお前は上に行ける。新たな奴隷がやって来るのを待つことだけが、お前ら奴隷たちの生きる望みになるのだ」
王が美玲ちゃんに振り返った。
「お前、強いな。仲間が奴隷に堕ちたというのに」
そして、いつのまにか奴隷の塔のてっぺんから運ばれた玉座に、深く腰をかけた。
大勢の奴隷を背にした巨大な玉座に、小柄な少年が座っている。
「次はお前だ小娘。勝負の内容を決めろ、何でも構わない。わたしに負けは……」
「勝てて嬉しい、ぼく?」
…………?!
「大勢の奴隷を従えて、王様ごっこは楽しいかって聞いてんだわよ、目玉のぼくちゃん」
ぼくは驚いて、美玲ちゃんを見上げた。
ジョーがあんな目にあってから、ぼくは見られなかったんだ。
美玲ちゃんの苦悶に満ちた表情を。
でも違った。
美玲ちゃんは泣いても悔やんでもいなかった。
その瞳には、まだ鋭いほどの光が宿っていたんだ。
「こんなに頭にきたのは久しぶり……。お姉さんって呼びなさいね、ぼくちゃん。たっぷりお仕置きしてあげるから」
「……口を慎め、この小娘が。次にお前が賭けるのは命だ。負けたら死んでもらう!」
王はあきらかに苛立っていた。
美玲ちゃんのひとを怒らせる才能は一級品だ。
「言え、お前はわたしに何を望む?」
「あなたが座っている、その玉座」
「玉座だと……?」
美玲ちゃんが深くうなづいた。
「偉そうにしているあなたの立場、その全てをもらう。それからこの世界を平等にする!」
王が腹を抱えて笑った。
その姿は、本当に小学生の子どもが笑っているようだった。
「なんだ、お前も王になりたいのか? 好きにしろ、どうせお前は勝てない。わたしは心が読めるのだ」
両手の指先をあわせ、王が顔のまえで三角形を作った。
その三角形から、大きな紅い瞳がのぞく。
「で、何をする? わたしは最強の王だ、何の勝負でも受けて立つぞ」
「時間はかけない、漫画で言うならたった一話で終わらせる。……男の勝負とかプライドとか、そんな賭博漫画みたいな展開、こっちはもう飽き飽きしてんのよ!」
美玲ちゃんが拳を突き出した。
「……じゃんけんで勝負よ!」
2025.10.30
投稿し忘れていたエピソードを発見。急いで追加しました。
ジョーが目玉を奪われ美玲ちゃんが参戦を決意する、大事な場面なのに……。
いきなり「じゃんけん勝負」になっていて訳わからなかったと思います。
すみません。。。




