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6桁の数字と幻影ビルの金塊 〜化け猫ミッケと黒い天使〜  作者: ひろみ透夏


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49/90

047-02 絶対王者

 

 王が『1』を申告した。


 勝利に必須な6番目の芯を王に取られるということは、芯が折れたアウトの7番目を取るのは、必然的にジョーとなる。


「勝負はまだ続いている。奴隷よ、芯を1つ取れ」


 奴隷がロケット鉛筆の後ろから5番目の芯を押し入れる。

 先端から飛び出た6番目の芯を見て、ぼくらを取り囲む人影が歓声をあげた。


「次はお前の番だ、顎の男。数を申告しろ」


 奴隷たちに両腕を抱えられて、ジョーが王の前に突き出された。

 (ひざまづ)かされたジョーに向かって王が続ける。


「1でも2で構わない。早く言え、お前の敗北は確定している」


「……へへ、だったらよぉ、申告する数は『2』だぜ? おれはお前ぇみてえに、チンケな数は申告しねぇ!」


「負け犬の遠吠えとは正にこの事。この世界は勝利にこそ意味があるのだ」


 王が奴隷からロケット鉛筆を取り上げた。


 ロケット鉛筆の後ろから、王みずから6番目の芯を押し入れる。

 筒の先から、7番目の芯の先端は現れない。


 まさにいま、ジョーの負けが決まったんだ。


 歓声をあげる奴隷たちの中心で、ジョーはひとり項垂(うなだ)れていた。

 王がその大きな顎を持って、顔を上げさせる。



「……ようこそ、我が王国へ」



 王の手が、素早くジョーの目の前を横切った。

 次の瞬間、ジョーの目玉は1つになっていた。


 ほかの奴隷たち同様、額の下にひとつーー。


 その姿を見ていた奴隷たちが一転、しんと静まり返っている。



「……まずは奴隷の塔の最下層の一部になるのだ。新たな奴隷が加わるほどお前は上に行ける。新たな奴隷がやって来るのを待つことだけが、お前ら奴隷たちの生きる望みになるのだ」



 王が美玲ちゃんに振り返った。

 

「お前、強いな。仲間が奴隷に堕ちたというのに」


 そして、いつのまにか奴隷の塔のてっぺんから運ばれた玉座に、深く腰をかけた。

 大勢の奴隷を背にした巨大な玉座に、小柄な少年が座っている。


「次はお前だ小娘。勝負の内容を決めろ、何でも構わない。わたしに負けは……」


「勝てて嬉しい、ぼく?」



 …………?!



「大勢の奴隷を従えて、王様ごっこは楽しいかって聞いてんだわよ、目玉のぼくちゃん」


 ぼくは驚いて、美玲ちゃんを見上げた。

 ジョーがあんな目にあってから、ぼくは見られなかったんだ。

 美玲ちゃんの苦悶に満ちた表情を。



 でも違った。

 


 美玲ちゃんは泣いても悔やんでもいなかった。

 その瞳には、まだ鋭いほどの光が宿っていたんだ。


「こんなに頭にきたのは久しぶり……。お姉さんって呼びなさいね、ぼくちゃん。たっぷりお仕置きしてあげるから」


「……口を(つつし)め、この小娘が。次にお前が賭けるのは命だ。負けたら死んでもらう!」


 王はあきらかに苛立っていた。

 美玲ちゃんのひとを怒らせる才能は一級品だ。



「言え、お前はわたしに何を望む?」 


「あなたが座っている、その玉座(ぎょくざ)


「玉座だと……?」


 美玲ちゃんが深くうなづいた。


「偉そうにしているあなたの立場、その全てをもらう。それからこの世界を平等にする!」


 王が腹を抱えて笑った。

 その姿は、本当に小学生の子どもが笑っているようだった。



「なんだ、お前も王になりたいのか? 好きにしろ、どうせお前は勝てない。わたしは心が読めるのだ」


 両手の指先をあわせ、王が顔のまえで三角形を作った。

 その三角形から、大きな紅い瞳がのぞく。



「で、何をする? わたしは最強の王だ、何の勝負でも受けて立つぞ」


「時間はかけない、漫画で言うならたった一話で終わらせる。……男の勝負とかプライドとか、そんな賭博(とばく)漫画みたいな展開、こっちはもう飽き飽きしてんのよ!」


 美玲ちゃんが拳を突き出した。



「……じゃんけんで勝負よ!」


 

2025.10.30

投稿し忘れていたエピソードを発見。急いで追加しました。

ジョーが目玉を奪われ美玲ちゃんが参戦を決意する、大事な場面なのに……。


いきなり「じゃんけん勝負」になっていて訳わからなかったと思います。

すみません。。。



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