031 3階と後悔
不快な金属の擦れる音を立てて、エレベータの扉が開く。
3階は茜色の夕陽が縞模様に差し込む、何もないがらんとしたフロアだった。
窓にかかったブラインドが、静かに風にそよいでいる。
「……探すまでもねぇってか」
ジョーはがっくりと肩を落とし、フロアの真ん中に大の字で寝転んだ。
「ジョーがまえに来たときは、事務机が並んだ事務所だったのよね?」
美玲ちゃんの質問に、蚊が鳴くような声でジョーがこたえた。
「そうだねぇ……真っ暗な事務所だったねぇ……」
「来るたびにフロアが変化するなんて……そんなんじゃキリないよ……」
さすがに美玲ちゃんも打つ手がなくなったのか、大きなため息をついてその場に膝をついた。
あまり見慣れない美玲ちゃんのその姿に、ぼくは心配になって寄り添って座る。
「……ママになんて謝ろう」
ブラインドの隙間から見える夕日をぼおっと見つめながら、美玲ちゃんは独り言のように弱音を吐いた。
「ばかだよね……ママはいつもわたしのことを第一に考えてくれてるのに」
「そんな気持ちを知ろうとせず家出なんて……ママを心配させようなんて……。最低だよわたし……」
膝を抱えて夕日を見つめる美玲ちゃんの顔が、茜色に染まっている。
その瞳からするりと大粒の涙がこぼれ落ちた。
「チャーシューの家族にも、なんて謝ればいいんだろう……。一度は帰ろうとしてたのに、お金に目が眩んで、わたしが引き留めたから……」
緊張の糸がプツリと切れてしまったのか、ぽろぽろと涙が流れ落ちる。
「もう会えないのよね……。チャーシューにも、萌にも、優斗くんにも……」
「チャーシューにもっと……ポテト食べさせてあげたかったな……。また萌とおしゃべりがしたいよ……。優斗くんにも、今度こそちゃんと……」
我慢できなくなったか、美玲ちゃんは堰を切ったように泣き出した。
幼い子どものようにわんわんと……。
気を使っているのか、床に寝ていたジョーは、キャスケット帽を顔に乗せて見てないふりをしていた。




