持って行ける物。
少女が訳あって捨てられることになった。
両親は相談を重ね、誰にも見つからないだろうと人気のない島にひっそりと捨てることにした。
両親は優しく尋ねる。
「無人島に持って行ける物を一つだけ選ぶとしたら、何を持っていきたい?」
「猫がいいわ。好きだもの。」
少し戸惑ったが最後の願いくらいは叶えてやろうと、少女をペットショップに連れていく。
少女は丸々と太った猫を指さして「これがいい」
その夜、少女と猫は眠っている間に島へ置き去りにされた。
しばらくして、少女は保護された。
レスキュー隊員は優しく抱きしめながら尋ねる。
「安心して。もう大丈夫。寂しくなかったかい?」
少女は平然と答えた。
「寂しくなかったわ。猫と星のシャワーを浴びながら、眠れぬ夜をいくつも一緒に乗り越えたもの。
でもね、いつからか猫は私の前からいなくなってしまった。
だけど感じるの。猫はずっと私と一緒にいる。」
愛おしそうに語る少女。
傍らに散らばった骨。
レスキュー隊員は察した。
生きるためには仕方がないことだと言い聞かせ精一杯優しく尋ねた。
「そうか……猫がいなくなったのは悲しいけど、君が助かって本当によかった。ちなみに猫の名前はなんだったんだい?」
少女はポカンとした顔で答えた。
「猫は猫じゃない?」
レスキュー隊員は涙がこぼれないよう天を仰ぐことしかできなかった。