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魔王の娘は勇者になりたい。  作者: 井守まひろ
【完結編】黎明/月に吠える
198/220

140.灼炎の鬼人

「ヒートブラスト!」

「ヒスイ突風斬り!」


 俺とシルビアの同時攻撃で、グラトニュードラの首を狙う。


 本来は胴体を狙うべきなのだろうが、今の状態ではとてもじゃないが斬れない。

 ただでさえ硬い胴体を狙うまでに、幾つもの長い首が邪魔をしやがる。


「ぐっ……!」


 首を一本斬ったかと思えば、直ぐに別の頭が邪魔をする。

 シルビアはその頭に突き飛ばされ、地面へと落下して行く。


「シルビア!」


 間に合わない……!

 地面に叩き付けられそうになった彼女の身体が、ふわりと空中で留まる。


「ギリギリセーフですね!」


 ブラストの風魔法だ。


「ブラスト、お前に感謝する!」


 アイツ、最初に見たときよりも更に魔法が洗練されている。

 この短期間で、相当な努力をしてきたのだろう。


「助かったよ、ブラスト!」


「いえ、支援は任せてください!」


 俺だってそうじゃないか。

 サラマンダーに託された灼炎剣ヒートルビーを、一日も早く使い熟す為に鍛錬してきた。

 未だウルティマは使えないが、俺自身の蒼炎と合わせれば聖剣魔法の威力も上がる。


 あのグラトニュードラを倒すには、恐らくウルティマしか無いだろう。

 この場でウルティマが使えるのは、シルビアとヒスイのみ。

 俺らで何とか隙を作って、シルビアにウルティマの機会を与えるんだ。


「シルビア、グラトニュードラの首は俺らに任せろ! お前のタイミングでウルティマを使え!」


「わかった、ありがとう兄ちゃん!」


 幸い、鬼人の姿に変身している時は肉体もかなり丈夫になるから、多少無理をしてでも道をこじ開ける事が出来る。

 記憶の祭壇で勝手に改造されたこの身体が、まさか役に立つとはな。


 妖魔軍団の魔物達は、グラトニュードラを取り囲むように絶え間なく魔法を撃ち続けている。

 奴らが魔力切れになる前に、何とか倒してやらないと。


「ヘルフレイム!」


 全身に蒼炎を纏いながら、ヒートルビーの聖剣魔法も発動する。


「フレイミングバッシュ!」


 グラトニュードラの攻撃を避けながら、狙いを定めた一本の首へと確実に刃を入れる。

 こんな首ぐらい斬れなければ、ウルティマなんて一生使えない。


「どりゃああああああっ!」


 蒼炎を纏った刀身で、グラトニュードラの太い首を一刀両断する。

 まだだ、一本斬っただけでは時間が経つと再生されてしまう。

 最初に斬った首は、既に再生されているのだから。


 そうなる前に、俺が全ての首を斬り落として見せる。


「キイイイイィッ!」


 刹那、俺の真横へと巨大な頭が迫る。

 だがそんな事は関係ない。


「邪魔だクソッタレ!」


 俺は炎を纏った切先を、奴の目玉に突き刺した。


「キィィィィィィィィィ!」


 グラトニュードラは叫び声を上げながら、その首を激しくのたうち回らせている。

 今がチャンスだ。


「カーディナルプロージョン!」


 燃え盛る炎の中で、俺はその首を爆散させた。


「どうだ!?」


 妖魔軍団の魔物達は、既に次の首へと狙いを集中させている。


「トルネードアロー!」


 そこへブラストの矢が直撃し、首の半分が裂けた。


「サンキュー、みんな!」


 大地を強く踏み込んだシルビアは、風どころかまるで閃光のような速度で上昇し、聖剣魔法も無しにその首を斬り落とした。


 残るは二本、これなら俺だけでも抑え込めそうだ。


「シルビア、頼んだ!」


 集中しているのか、彼女は声は出さずにその首だけを縦に振った。

 シルビア、お前は俺の自慢の妹だ。

 お前なら出来る。

 だから、頼んだぞ。

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