幕間 シーパー
僕が生まれたのは、町の外れにあるウサギ小屋のような家だった。
母は早くに病死して、父は借金まみれのまま、僕が12歳になった頃に姿を消してしまったのだ。
そのせいで、僕は父の借金を返す為に過酷な労働を強いられた。
仕事の内容は、殆どが肉体労働である。
時には人の死体を解体して運んだこともあったし、時には人を殺したこともあった。
この仕事のおかげで、僕は自分が強いという事に気付いた。
初めのうちは何とかやれていたけれど、いつまで経っても金は貯まらない。
連中は、僕に面倒な仕事を押し付けるだけで、借金を返済させる気なんて更々無かったのだ。
昼夜関係無く、寝ることも許されず、限界が来て気絶しようものなら顔に冷や水をかけられて叩き起こされる。
隙を見て少しは休んでいたけれど、劣悪な環境で体力が戻るはずもなく、遂にその時が来てしまった。
僕は15歳になった頃、とうとう働けなくなった。
連中はそんな僕を用済みだと言って、森の中にある深い洞穴へと捨てたのである。
暗くて寒かったし、お腹も空いていたけれど、これで漸く眠れると思った。
眠くて眠くて、気が狂いそうで、思考が上手く回らない上に幻覚も見える。
「散々こき使われて捨てられたのですか、可哀想に」
ふと、洞穴の外で誰かがそう言っているのが聞こえた。
男の声だった。
「あなたの望みは何ですか?」
もう死を覚悟していた僕は、藁にも縋る思いで精一杯の声を出した。
「眠りたい……それだけで良い……沢山寝て、幸せな夢が見たい……」
僕の言葉を聞いた男はクックックと笑い、洞穴の中へ入ってくる。
「わかりました。あなたの欲望、叶えましょう」
そうして伸ばされた手を、僕は掴んだ。
ああ、これでゆっくり眠ることができる。