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魔王の娘は勇者になりたい。  作者: 井守まひろ
【完結編】黎明/月に吠える
180/220

ヘヴンズバグ④

 あれから、暫くは平穏が続いていた。


 ルシファーの子供達は健やかに成長し、一人は魔族達の国を作り、一人は鍛治職人になったらしい。


 私は各地を飛び回り、常に魔物達の様子を観察していた。

 魔物とコミュニケーションを取る中で、仲良くなった子もいる。

 特に仲が良かったのは、ある時メトゥス大迷宮の中で出会った蜘蛛の魔物だった。

 彼女はレッサースパイダーという小さな蜘蛛だったが、どうやら他の個体とは違うようで、本来は茶色であるはずの体色は黒曜石のように黒く、全身が鎧のように硬い。

 更に念話魔法と高い知能を持っており、私と同様に言葉を話すことが出来た。


 小さな身体で懸命に生きている彼女の事が、私は好きだった。

 だから私は、彼女に名を与えようと思ったのだ。


「名前ですか?」


「そう、君に名を付けたい」


 私の提案に、彼女はとても喜んでくれた。

 その嬉しそうな姿は、ずっと覚えている。


「その……どんな名前なのですか?」


 ルシファーが私に名を与えてくれた時、温かくて幸せな気持ちになった。

 だから彼女にも、私が名を与えることで幸せになって欲しい。


「アビス、名を授けよう」


 いずれこの迷宮を統べる地竜クラガリが老いた時、次なる深淵の守護者には彼女が相応しいと思った。

 その願いを込めて、私は彼女に深淵の名を与えたのだ。


「アビス……私はアビスと言うのですね! 素敵な名を頂けて、今とても幸せです! ありがとうございます、ファウナ様!」


 そう言ってはしゃぐアビスの姿は、本当に可愛らしかった。


「これから先、きっと困難に直面する事があるはず。けれど、あなたは私が名を与えた。私の祝福を受けた者だ。だから、きっと乗り越えられる。立派になって、いつか共にこの星の守護者として世界を見守ろう」


 思えば、これは殆どが私自身の願望だったのかも知れない。

 私は孤独が嫌いだから、友達が欲しかったのだ。

 しかし、彼女であればきっと立派に成長して、私と対等な存在になってくれるだろうと信じる事が出来た。


 それまでは、私が見守っているから。

 待っているよ、親愛なるアビス。

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