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魔王の娘は勇者になりたい。  作者: 井守まひろ
四霊/百花繚乱花嵐 編
162/220

115.魔皇

 物心がついた時から、私は魔法が使えていた。


 当時、魔法の使える者がまだ少なかった事から、私は皆から大変持て囃された。


 私は成長して行くに連れ、徐々にその力を増して行き、12歳を過ぎた頃には既に天才と呼ばれていたのだ。


 そんな時、あれは起きた。


 女神降臨。

 この日から、世界は大きく変わった。

 女神の魔力による影響で、私以外にも魔法を扱える者が大勢増えたのだ。

 そうして、魔法により文明は栄えた。


 私はと言えば、魔力の影響を強く受けたが為に、私を含む一部の者達が人間とは違う種族になっていた。

 私達は、のちに魔族と呼ばれる事となる。


 元より魔法に優れていた私は、魔族となった事で更に強力な魔法が扱えるようになっていたが、既にこの世界で魔法を扱えるのは、私以外にも大勢居る。


 次第に人々が私を持て囃す事は無くなり、私以外の魔族も頼られ、そうして賞賛されて行くようになった。


 私のほうが、優れているというのに……。


 ある時、私は人族達の暮らす村へとやって来た。

 魔族である私は、人族よりも優れている。

 この力を人族達に見せつければ、皆が私を称賛すると思ったのだ。


 だが、人族達は私の事を拒んだ。


 強い力を持つ私のことが、恐ろしかったらしい。


 わざわざ人族達の為に、こんな村までやって来たと言うのに、それを仇で返された私は腹が立った。


 私は、その村に住む人族達を皆殺しにしてしまったのだ。


 当然ながら、私は捕まった。

 魔法による大量殺戮を行った事で、当然ながら処刑されたのだ。


 しかし、どう言うわけか私は赤子に戻っていた。


 両親は以前と全く違う者達だったが、魔族である事に変わりはなかった。


 そう、私は転生したのである。


 この時の名が、フェレストだった。


 私は皆に自分の実力を認めさせようと、再び自身の魔法と頭脳を駆使することで、着実に地位を築き上げた。


 幸いにも、裕福な家庭に生まれたおかげで、私の名は皆に広く知れ渡った。


 更に私は、新たな力を会得していたのだ。

 この目で見た者の魔力を、阻害する能力である。


 これは神からの祝福だと思った。

 私の力を認めた神が、より私が生きやすいようにこの能力を与えてくれたのだ。


 それもあってか、私は更に力を身に付け、遂に魔族の中でトップに躍り出た。


 そうして、遂に出会ったのである。


 女神ルシファーの娘である、半神アラディアに。


 その当時、既に魔族の中でも上の地位に立っていた私は、アルブ王国を統べるアラディアと、上手く婚姻を結ぶことに成功したのだ。


 こうして、私はアルブ王国の女王の婿という、実質的に国のトップとなった。


 アラディアとは一人の子供を作り、その後は平穏に日々が過ぎたが、それも長くは続かない。

 私とアラディアは、あまり仲が良く無かったのだ。


 アラディアは強大な力を持っていながら、それを見せつけたり、行使したりする事が無い。

 あまりに平和的過ぎる。


 私は自身の力を見せつける事で、民を支配により統率する事を考えたが、アラディアはそれに強く反対してきたのだ。


 そんなある日、遂に私は息子のゲオルグがアルブを出ている間に、アラディアをこの手で殺めた。

 表向きは病死という形にしたことで、帰って来た息子の同情を誘い、上手く騙す事ができた。


 そうして、かつてアラディアから聞いた四霊聖剣の奇跡についても、ゲオルグに話したのである。

 優しいゲオルグならば、私の為にアラディアを蘇らせるべく、四霊聖剣と鍵になる聖剣を強奪してくるだろうと考えたのだ。


 案の定、ゲオルグは直ぐに行動を起こした。


 四霊聖剣の力あれば、私はより強大な力を手にすることが出来る。

 しかし、それもゲオルグの善意により失敗に終わった。


 奴がアラディアの弟である、聖剣の鍛治師ヘロディスに自身の罪を話してしまったせいで、四霊聖剣が手に入らなかったどころか、一族に畏怖の呪いまで掛けられてきたのだ。


 それだけでは無い。

 ヘロディスは私を怪しんでいた。


 まるで私がアラディアを殺め、ゲオルグを唆した事を、全て見透かしているかのように。


 とは言え、この頃の私はもう先が長く無かった。


 また転生出来るかは分からないが、やり残した事は次の私に託そうと考えたのだ。



 そうして、私は二度目の転生を果たした。


 この時も魔族に生まれた為、再び魔族としての地位を確立しようと努力した。

 しかし、その為には消さなければならない存在がいる。


 聖剣の鍛治師、半神ヘロディス。

 奴は私にとって、ただの邪魔者でしかない。


 その為、私は魔力阻害と自身の力を最大限に駆使し、ヘロディスを暗殺した。


「お前は絶対に逃さないぞ。覚えていろ、フェレストォ!」


 あの時の奴の顔は、未だに私の脳裏に焼きついたまま離れない。

 結局、奴の言った通りになってしまった。


 シャーロット・ヒルが黎明剣グローライザーを目覚めさせた事により、私はこうなってしまったのだから。


 あの時も、生贄によって上位存在へと進化する事に成功し、その代の勇者と四精霊のうち3体を葬ることは出来たが、後に現れた魔王ローグによって全てを壊された。


 あの男は、アラディアによく似ていた。


 だからこそ私は従者として、奴の下に上手く入り込む事が出来たのである。

 錬金術を用いて自分の分身まで作り、それに精神の半分を移す事によって動かし、メフィル・ロロとして魔王ローグに仕えていたのだ。


 全てが上手く行っているはずだった。


 私の計画に、抜かりはなかったはず……否、どこかで油断をしていたのかも知れない。


 半神ヘロディスも、魔王ローグも葬った今、この私が失敗する事は絶対に無いであろうという油断だ。


 今度こそ、私は絶対に油断などしない。


 ベリィ・アン・バロル、リタ・シープハード、ディアス・エヌ・アイテール、シャーロット・ヒル……特に貴様らは、必ずこの手で殺してやる。


「頼みましたよ……新たな私……」


 そう呟き、私は目の前に横たわる白い肌の身体に手を置いた。

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