表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
魔王の娘は勇者になりたい。  作者: 井守まひろ
四霊/百花繚乱花嵐 編
161/220

女神の夢(第十夜)

 陽光に照らされた銀世界を歩いていると、道の先で一人の女性がポツンと立っているのが見えた。


 彼女がこちらを振り向くと、セミロングの黒髪がさらりと揺れる。


「もう死にます」


 女性ははっきりとそう言った。

 白い頬の底に温かい血の色が程よく差して、唇の色は赤い。

 到底死にそうには見えないけれど、女性は静かな声で「もう死にます」と言ったのだ。


 アタシも、これは死ぬのだと思った。


 女性がぱっちりと開いた少し赤い瞳に、アタシの姿が映る。

 その顔は、女性と全く同じだった。


「死にます」


 もう一度、女性は小さくそう言った。


「本当に死ぬの?」


「ええ、死にます。そう決まったのですから」


 アタシは黙って、女性と向かい合っている。

 暫くすると、女性がまた口を開いた。


「死んだら、忘れてください。あなたは、あなたとして、生きてください。きっと私は、また来ます」


 何を言っているのか、まるで分からなかった。

 しかし、アタシにこれを伝えたかったのだという事は分かった。


「いつ来るの?」


「もう直ぐ来ますから。私が来たら、それはあなたではありませんから。私を殺してください」


 残酷だけれど、アタシはそれをやらなければならないと思った。

 そうしなければ、きっと皆が不幸になる。


 ふと、目の前の気配が消えた。

 先程までそこに立っていた女性の姿は、何処にも無い。

 白く輝く雪道には、アタシ一人の足跡しか残されていなかった。


 そこで初めて、今見ているものが、アタシの夢である事に気付いた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ