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魔王の娘は勇者になりたい。  作者: 井守まひろ
四霊/百花繚乱花嵐 編
157/220

幕間 信者として

 始まりは、オーディー・ムーンチャイルドによる女神教の腐敗だった。


 俺は、女神を信仰している。


 オーディーの代表という立場を利用した悪事の数々、金銭の私的利用など、俺はそれが許せなかったのだ。


 だから、壊してくれて良かったとさえ思っている。


 あのお嬢さんは、女神の力や記憶の祭壇の技術を使い、アストラ国王を殺害することが目的だった。


 そう、ブライト・ハート・プラネテスと初めて会った時、彼女はまだ14歳の少女だったのである。

 そんな少女が覚悟を決め、信念の為に敵である俺に接触してきたのだ。


 彼女ならば、女神教を建て直せる。

 そう信じていた。


 事実、女神教は創星教に名を変え、慈善活動なども上手く回るようになっていった。


 その時に仲間となったのが、ザガンというネクロマンサー、フルーレというモンステイマー、そしてメフィル・ロロという男だ。


 メフィル・ロロ、表向きは魔王の側近をしておきながら、裏では創星教としてブライトに協力している、謎の多い魔族。

 しかし、それすらも奴の真の裏の顔では無かったのだ。


 当時からメフィル・ロロを怪しんでいた俺は、奴に悟られないよう行動し、その目的が何なのかを探っていた。


 そんな時、ある男から声が掛かったのだ。


 アイテール帝国第一皇子、ディアス・エヌ・アイテールである。


 ディアス皇子はメフィルの協力者だったが、その真の目的はメフィルの殺害。

 諸悪の根源である奴を倒す為、俺に力を貸して欲しいと頼んできた。


 無論、全てを聞いた俺に協力しないという選択肢は無い。


 俺の固有魔法である認識阻害魔法は、自身や一定の空間を周囲に認識させないよう結界を張るというものだ。

 この力を、俺は周りの連中に「転移魔法だ」と話していた。

 実際に転移魔法も扱えるが、魔力消費が激し過ぎて一度使えば魔力が空になる為、あくまで転移魔法だと言い張る為のダミーに過ぎない。


 俺はこの力を使い、メフィルの認識から外れた場所にセーフハウスを作り、そこでディアス皇子と密会しながらメフィル殺害の計画を立てた。


 皇子が殺したように見せ掛けたルシュフ公爵も、ザガンに掘り返して来てもらったリタ・シープハードの肉体も、ここで匿っていたのだ。


 折角ならお嬢さんの死体も掘って来いと言ったのだが、ザガン曰く「彼女は安らかに眠らせてやりたい」とか言いやがった。

 それも、奴なりの優しさなのかもしれないが……。


 リタの死体を掘り返した理由は、元々アンデッドに使えると思ったからである。

 だが、いざ彼女の死体をこの目で見た時、とても死んでいるとは思えなかったのだ。


 生前に酒ばかりを飲んでいたせいか、アルコールによって肉体の腐敗はほとんど無く、瞳は青く光っている。


 そこで俺は、かつてお嬢さんが話していたことを思い出す。


 リタ・シープハードは、時折先見の明でも持っているかのように、先を見据えた行動を取るというものだ。


 この時、彼女の眼を見て確信した。


 リタ・シープハードは、知恵の眼を持っているのだ。

 精神的なものか、或いは他の理由で発現が遅れたものの、その力の片鱗は既に見せていたらしい。


 俺はお嬢さんが残した文献の中に知恵の眼に関する記述があった事を思い出し、やがてリタがまだ死んではいない事と、彼女の精神をソロモンの部屋から連れ戻す方法を読み解いた。


 そうして目覚めたのは、つい先程の事である。

 起きて直ぐに酒を要求してきた事には呆れたが、それ以上に驚いた事がある。

 俺の話を聞くよりも前に、彼女は今の状況を理解していたのだ。

 更に、あの並外れた戦闘力は衰える事を知らず、寧ろ以前よりも強力になったように思える。


 リタ・シープハードがいれば、確実にメフィルを倒せるという確信があった。


 そうして遂に、ディアス皇子がやったのだ。

 虚空剣ヴァニタスにより、メフィル・ロロの魂を斬った。


 これから先、星の女神……サーナ様が幸せに過ごされる事だけを願っている。

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