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魔王の娘は勇者になりたい。  作者: 井守まひろ
四霊/百花繚乱花嵐 編
155/220

110.ソワレ(再演)

 勝利への確信と同時に、最大の疑問が生まれてしまう。

 なぜリタは生きているのだろうか?


 ミメシス……?

 否、これまで見てきたミメシスとは違い、確かに彼女はリタ・シープハード本人のように見える。


 それに、あの眼は何だ?

 まるで……セシルと同じ……!


「本当に……驚きましたよ。まさかリタさんが……わたくしと同じ力を持っておられたとは……先程、知恵の眼で……わたくしに……コンタクトを取られましたね? ゲボッ……」


 いつの間にか巨大傀儡から降りていたセシルが、吐血する口元を押さえながらそう話した。


 心配過ぎて話が入ってこない……!


「ああ、セシル様! ご無沙汰してます! てか大丈夫ですか!?」


「問題ありませ……うっ……問題ありません。少し……無茶をし過ぎてしまいました」


「ええ……ご自愛ください……」


 問題があるようにしか見えないけれど、まあセシルだから平気だろう。

 それにしても、リタが知恵の眼を……セシルの言い方では、まるで元から持っていたかのように聞こえたけれど、当時のリタには知恵の眼が無かった。


 まさか、目覚めていなかったという事か?


 本来あるはずの知恵の眼が覚醒しなかったせいで、リタの魔力は他人よりも少なかったのかもしれない。


 先程リタから感じた魔力は、彼女自身の魔力でありながらも、以前とは比にならないほど膨大なものだった。


 とりあえず、なぜ生きているのかなんてどうでも良い。

 リタが帰ってきた。

 その事実だけで良いんだ。


「まあ、一旦コイツやるか」


 そうして、彼女は再び剣を構える。

 魔力阻害とパノプティコンが復活し、今はリタも魔法が使える状態では無い。


「驚きはしましたが、魔法が使えなければ脅威では無い。大人しく殺されてください」


「へっ、そいつはどうかな! テメェこそ魔力阻害が無ければ大した脅威じゃないだろ! もはや私のほうが強いまであるな。や〜い、ざぁこざぁこ!」


 煽り方が幼稚過ぎる……いつものリタだ。


「馬鹿な事を。第七禁断魔法、スカル……」

「エクリプス」


 メフィルの詠唱を遮り、シャロがエクリプスを発動する。

 これなら、シャロだけはメフィルの魔力阻害に邪魔をされない。


「クソッ、小癪な……!」


 メフィルの表情に焦りが見える。

 シャロは聖剣魔法を構築し、グローライザーの刃をメフィルへと向けた。


「黎明一突!」


「カース・オブ・ダークネス!」


 二人の魔法が相殺した直後、僅かに魔力阻害が途切れる。

 その隙を見て、リタは一瞬のうちに聖剣魔法を構築した。


「グランシャリオ」


 夜空を割いて現れたホロクラウスの剣身が、メフィルへと落ちて行く。


 構築が早過ぎる。

 私でさえ、ルーナの力を借りないと構築からあの早さで発動には至らない。

 これが、知恵の眼の力だと言うのだろうか?


「スカルギャラクティカ!」


 夜空に広がった骸達により、グランシャリオの刃が止められる……かに思えたが、剣身はその勢いを落とさずに骸達を散らせてメフィルに直撃した。


「ナイスだよ、シャロちゃん。お陰で奴の隙を突けた」


 リタはそう言ってシャロに笑顔を向けると、直ぐに次の魔法を構築し始める。

 この激しい魔力の動きは、まさか……!


「くっ……人族ごときがぁ! 私を倒せると思うなァ!」


 まずい、メフィルの魔力阻害が……!


「知るかよ」


 直後、リタは瞬時にその場から移動し、メフィルの背後を取る。

 駄目なんだ、リタ……今のメフィルは全方位監視が出来る。

 視界から外れたところで、魔力阻害からは逃れられない。


 はずなのに、どうして……リタは魔法が使えるの……?


「法陣展開、夜を歌え———」


 リタは空中でウルティマの法陣を展開し、その青い眼で標的を捉える。

 天に美しい星空が広がると、星座達は歌い踊る様に動き出した。


「なぜだ、なぜ……貴様ぁ! なぜ魔法が使える!?」


 リタとメフィルは互いに目を合わせている。

 しかしウルティマの法陣は途切れる事なく、遂に彼女はその魔法を口にすると、銀河のように青い剣身を一振りした。


「ソワレ」


 斬撃はメフィルの首を刎ね、奴の身体はその勢いで吹き飛ばされると、地面に強く激突してから倒れた。


 倒した……?

 否、再生するのか?


「あ……ああ……まだ……だ……」


 転がったメフィルの首から、呻き声のようなものが聞こえてくる。

 すると、それは宙に浮かび上がったかと思えば、メフィルの身体に移動して再び一つになった。


「ぐっ……馬鹿め……貴様の魔法では、私を完全に倒すことは……不可能だ……」


 そう言って、メフィルは地面に膝をつき立ち上がろうとする。


「ならば、これで終いだ」


 メフィルの背後に誰かが立っている……!

 いつの間に……!?


「なっ、ぐああああっ!」


 ズシャリという音と共に、メフィルの心臓を黒い剣身が貫く。

 奴を刺したのは……


「ディアス……貴様は……裏切ったか……ッ!?」


 ディアスが……虚空剣ヴァニタスでメフィルを刺したのだ。

 一体、どう言う事……?


「裏切るだと? 馬鹿を言うな、ワタシはこの時をずっと待っていたのだ。諸悪の根源、メフィル・ロロ……永きに亘る貴様との因縁は、ここで断ち切るッ!」


 ディアスは力強い声でそう言うと、メフィルから剣を引き抜く。

 そうか、虚空剣ヴァニタスに斬られた者は、その魂が消滅する……!


 ディアスは、ずっとこの機を狙っていたのだろうか?

 殆ど不死に近いメフィルが自身の本体を曝け出し、絶対的な隙を見せるこの瞬間を……


「ディアス・エヌ・アイテール……全てを信用していたわけでは無かったが、裏切る事は無いと侮っていた……! 一体、いつから考えていた!?」


 右手で腹部を押さえながら、自身を刺した相手を睨むメフィル。

 そんな時、唐突にディアスの横へ何者かの気配が現れる。


「それについては、俺のおかげかなぁ」


 奴は……人族?

 転移魔法では無い。

 今、どうやってあの場に現れたんだ?


 それに……隣に居るのは……


「サーナ……サーナ……!」


 懐かしい顔があった。

 彼は泣きながらこちらに駆け寄ると、私が抱くサーナの頭に手を添える。


「お父様……?」


 ルシュフさん、生きていたのか……!?

 そうか、ルシュフさんを殺したのはディアスだ。

 ディアスはメフィルの目を欺く為に、ルシュフさんを殺害する振りをしていたんだ!


「グレイ……お前の計画かぁ!?」


 グレイ……アビスの言っていた創星教の人族だ。

 ルカがシリウスで接触した時、ザガンを連れ戻しに来たと話していたけれど、まさか彼もずっとメフィルを倒す為に……!


「いやいや、計画を立てたのは俺じゃなくてディアス皇子だ。さて、ここからはネタバラシの時間だな」


「ああ、ワタシから話そう」


 それからディアスは、計画の全貌を話し始めた。

 彼の企てた永きに亘る陰謀が、いま明らかになろうとしている。

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