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魔王の娘は勇者になりたい。  作者: 井守まひろ
四霊/百花繚乱花嵐 編
153/220

108.親友

 私にとって、サーナはたった一人の親友だった。


 他の子たちと違って、私のツノを一切怖がらなかったし、唯一対等に接してくれた。

 今思うと、サーナがツノの威圧を恐れなかったのは、彼女が星の女神だったからなのだろう。


 その大切な親友に、私は酷い事をしてしまった。


 きっかけは、サーナがシャロとシルビアを悪く言った事だった。

 私にとって、シャロとシルビアも大切な友達だったから、その二人に酷い言葉を浴びせたサーナの事が、許せなかったのだ。


 ああ、まだちゃんと謝れていない。

 サーナを助けたら、これ迄のことを全部謝ろう。


 その為に、必ず救ってみせる。


 そうして、またあの時のように、二人並んで雪の道を歩きながら話がしたい。


 今のアルブは、もう雪が溶けた頃だろうか?

 あの日、二人で歩いた雪の上に残った足跡は、もう消えてしまったのだろう。


 何があっても、私が守る。

 そう約束したんだ。


 だから———


「サーナちゃんは任せた!」


「……ありがとう、シャロ!」


 始まりの聖剣、黎明剣グローライザーが目覚めた。

 これはシャロが受け継いだ、彼女自身の本当の力なんだ。


 私は偽メフィルと対峙するシャロを背に、儀式を行っている本体の方へと駆けて行く。


「メフィルーーーッ!!」


 私の存在に気付いたメフィルは、こちらを振り返って睨むような目をした。

 その直後に、魔力の流れが消えてしまう。

 儀式の間も、魔力阻害は発動出来るらしい。


「私の邪魔をするな、クソガキがぁ!」


 魔法が使えなくても良い……儀式の邪魔をして、皆が集まる時間を稼げばいいのだ。

 先ず第一目標は、サーナを救出する事。


 メフィルの攻撃に怯まず攻めろ、私!


「第一禁断魔法、カース・オブ・ダークネス!」


 こちらに向けて放たれた黒い波動が、私の右頬を掠めそうになる。


「キュイッ!」


 その瞬間、私に掴まっていたルーナが魔法を発動し、黒い波動を掻き消した。

 今のは、法陣の改竄(かいざん)

 偶然にもメフィルの視界から外れ、魔法が使えたようだ。


「小賢しい月光竜が……! 第七禁断魔法、スカルギャラクティカ!」


 骸に囲まれる……!

 メフィルの詠唱直後、足を取られないように気を付けていたけれど、運悪く足首を挟まれてしまう。


「くっ……!」


「ベリィ・アン・バロル、そこで大人しく見ていなさい」


 そう言うと、メフィルはサーナの方に向き直り、彼女の額に左手を当てる。


「さて、そろそろ始めましょう。準備はよろしいですか、我が母」


「い……や……」


 まずい、早く抜け出さないと……!


「アブソーブ・マギア」


 直後、骸の空に浮かぶ赤い月が薄く光を放ち始め、それと同様の光がサーナの全身を包み込んだ。


「あああああああああああああっ!!」


 酷く苦しみ出したサーナから膨大な魔力が放たれ、それがメフィルに流れて行くのが分かる。

 あの光は、サーナの魔力なんだ。

 やはりメフィルは、この儀式でサーナの力を吸収しようとしている。

 自分自身が、創星の力を持つ神となる為に……


「キュイッキュイイイッ!」


 骸の山に降りたルーナが、一所懸命に法陣の改竄を試みてくれている。


「ルーナ、いけそう?」


「キュイッ! キュイキュイキュイッ!」


 ルーナは自信ありげにこちらに目を向けると、更に力を込めた。


 するとルーナの身体は光を放ち、徐々に大きくなって行く。

 これは、大型竜への変身……!


「ヒュイーーーーーーーーッ!!」


 ルーナが大きくなったと同時に、周囲に広がっていた骸の山が消滅する。

 この力、やっぱりルーナは凄い。


「なっ……!」


 一瞬こちらに目を向けたメフィルだったが、儀式に集中しているようで直ぐに視線を逸らした。


 今なら魔力阻害をされる心配も無い。


 ……え?

 パノプティコンは?

 今のメフィルは、魔力阻害を全方位に向ける事が出来るはずだ。

 それなのに、今は魔法が使える……!


 そうか、儀式にある程度の力を割いてしまっている上、今は半分をシャロ達と戦わせている状態だ。


 つまり、このメフィルは一点にしか魔力阻害を発動出来ない。

 勝機が見えてきた……!


 儀式が終わる前に、必ずサーナを救い出してみせる。

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