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魔王の娘は勇者になりたい。  作者: 井守まひろ
四霊/百花繚乱花嵐 編
151/220

幕間 メイドとして

 元々、わたくしはメトゥス大迷宮に棲むラミアだった。

 親友のアビスは人族も魔族も好きだったけれど、わたくしはあまり好きでは無かったのだ。


 ある日、わたくしはメトゥス大迷宮を訪れた冒険者数人に見つかり、激しい戦闘になった。

 運悪く味方となるような魔物は近くに居らず、何とか追い返したものの、この時のわたくしは深い傷を負ってしまった。


「おい、大丈夫か?」


 目を覚ますと、周囲が明るい事に気付く。

 何者かが、わたくしの顔を覗き込んでいた。


「……っ!」


「目が覚めたか、怪我は治療しておいたが……」


 わたくしは勢い良く起き上がり、その者を突き飛ばした……つもりだったけれど、どういうわけか少しも動かず、わたくしの方がよろけて転びそうになる。


「おっと、危ない。目が覚めたばかりで混乱しているんだろう」


「気安く触るな……って、それは……!」


 その瞬間、わたくしはその者の頭にツノが二本生えていることに気付く。

 そうして、そのツノから威圧感が放たれている事も……


「いやぁ、驚かせてしまって申し訳ない。迷宮に入ったら、偶然倒れていた君を見つけたものだから……俺はローグ・ロス・バロル。魔王の息子だ」


 それが、若かりし頃のローグ様との出会いだった。


 どうしてそうなったのか、もう殆ど覚えてはいないけれど、あの後「うちのメイドにならないか?」と勧誘されたのである。


 勿論、初めは断ったが、アビスに話したところ「命を助けて貰ったのだから、恩返しのつもりで少しは手伝ったら?」なんて事を言うものだから、それからわたくしはローグ様のメイドとしてお仕えする事になった。


 今でこそ、わたくしは魔王城メイドのメイド長だけれど、当時はわたくしよりも古くから魔王城に仕えているメイドが数人いた。

 彼女達は魔物であるわたくしを特に怖がりもせず、優しく、時に厳しくメイドの仕事を教えてくれたのだ。


 それから数百年メイドとして仕え続け、気付けばわたくしはこの生活が楽しくなっていた。


 ローグ様はレヴィア様とご結婚され、その間にベリィ様がご誕生された。

 そうして程なくすると、レヴィア様がご病気で他界され、自然とベリィ様のお世話はわたくしが率先してするようになったのだ。


 魔族の子供の事なんて分からないけれど、育てているうちにまるで自分の子供のように思えてしまって、いつからか尊い存在になっていた。


 この頃から、わたくしはメイドとして、ベリィ様をお守りしていこうと誓ったのだ。



「行け、レーザー、レイズ!」


「プラントロウル!」


 ウルフさんの使役するブーストフェンリルによる攻撃と、ジャックさんの植物魔法が炸裂する。

 わたくし達の前にいるのは、メフィルに殺されたラミアの怨念らしい。


 ラミアという種族は、同種への関心が薄い。

 だから、わたくしから見たところで、あの魔物を生み出したメフィルが憎いとは思わない。


 わたくしが憎いのは、ローグ様を騙し続けた挙句に暗殺し、ベリィ様を酷く傷付けたメフィルだ。


 どちらにせよ、わたくしにとってメフィルとは憎い存在らしい。


「せめて、安らかに眠りなさい」


 その言葉を口に出すと、わたくしは長い蛇の尾で魔物の頭部に蹴りを入れる。

 相手はそれなりに強いけれど、エキドナへと進化したわたくしの敵ではない。

 魔物は蛇が威嚇をする時のような声を出し、大きな音を立ててその場に倒れ込む。


「ナイスっす、ミアさん! 今だ、レーザー、レイズ!」


 皆の攻撃は確実に効いている。

 それに、アビスの眷属でありセシル様の使い魔でもある、ミニチュアスパイダーパペットのキラリとユラリ。

 この子達も強い。

 人型の人形を自在に操り、影魔法で魔物に攻撃をし続けている。


 早いところあの魔物を倒して、ベリィ様の元に戻るのだ。

 そうして必ず、サーナ様を救い出してみせる。

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