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魔王の娘は勇者になりたい。  作者: 井守まひろ
四霊/百花繚乱花嵐 編
138/220

99.常闇月

 まだ終わってない。

 これからだ……また手掛かりを探せばいい……。


 サーナの魔力が感知出来れば……否、出来ない。

 隙を見て逃げ出す事すら出来ないという事は、サーナは常に魔法を封じられているんだ。

 メフィルの魔力阻害が常に働いている環境に……それでは私の魔力感知で見つけることは不可能。


 せめて誰か……メフィルと繋がりのある奴に会えれば……


 そうだ、アイテール帝国のディアスなら知ってるはずだ。

 帝国に行かなきゃ。

 奴を捕まえて情報を吐かせれば、サーナの居場所が分かるかもしれない。


「キュイッ、キュイッ!」


「大丈夫だよ。ルーナは休んでて良いからね」


「キュイィッ、キュイキュイッ!」


 私はまだ動ける。

 まだ戦えるんだ。


「ありがとう、私は大丈夫、大丈夫だから」


 既にルーナの補助無しでも最大出力が出せる。

 このまま放置しておけば、メフィルがサーナにどんな事をするか分からない。

 カエルムに行かなきゃ……ディアスを、捕まえないと……


「テレ……ポ……うっ、オエッ……」


 魔力が逆流してしまった。

 上手く魔法が使えない。


 お腹が痛い、息が苦しい……頭がクラクラして、何も……


「キュイッキュイッ!」


 駄目だ、このままじゃルーナを巻き込んでしまう。

 この子はシリウスに帰そう。


「テレ……ポート……!」

「キュイッ!キュイ———」


 ルーナにのみ転移魔法を適用し、シルビアの家に帰した。

 これであの子に心配を掛けなくて済む。


 転移魔法、自分も帝国に行かなきゃ。


「テレポート……」


 転移できた……かと思えば、そこは帝国では無い。

 魔法が安定しなくて座標を間違えたか。


 ここは……ベガ村?


 ああ、私が最初にシャロと出会った場所だ。

 あれからこの村は、ホーンスパイダーに生け贄を捧げる必要も無くなって、平和になってくれたのだろうか?


 そうなら、良いんだけどな。


「このガキは売れそうじゃね?」

「あ〜、まあ二人とも連れてくか」


 聴力が研ぎ澄まされているおかげで、私はその声を聞き逃さなかった。

 人攫いか、折角平和になった村にやって来るなんて、最低だ。


「ワームホール」


 空間魔法で声のほうに移動すると、そこには二人の少女を捕らえている男二人が居た。


「げっ、なんだお前!」


「グリムオウド」


 私は男二人を怪物の手で掴み、そのまま気絶するまで締め付ける。

 男達が気を失って倒れたところで手を離し、少女達に歩み寄った。


「大丈夫?」


「キャーッ!」

「こ、来ないで……許して……」


 ……ああ、そうか。

 今の私、とても勇者みたいな格好良い人には見えないもんね。

 

「私への憎しみよりも、大切な家族を優先するのですねぇ。復讐に駆られ、そんな恐ろしい姿で戦う貴女(あなた)と違って。滑稽ですよねぇ!」


 メフィルの言葉が脳裏を過ぎる。

 恐ろしい姿か……窓に映った私は、まるで物語に登場するような酷く恐ろしい魔王のようだった。

 確かに、酷い形相だな。


「ごめんね、早くお家に帰ってね」


 私は少女達にそう伝えると、男二人を捕まえてその場を去った。


 この男達は、適当な場所に捨てておけばいいだろう。

 どうせこれがトラウマになって、もう悪い事なんか出来ないはずだ。


 これからどうしようか。


 複数の魔法を常時発動しているせいで、身体中が痛い。

 今、自分が何処に居て、何をしようとしているのかすらも分からなくなってきた。


 敵を倒さなきゃ……みんなが安心して暮らせるように。

 私は勇者になるんだ。

 みんなを守る為に、私が頑張らなくちゃいけないんだ。


「うわぁっ、誰か、誰か助けてくれ!」


 人の声、魔力も感知した。

 行かなきゃ。


「ワームホール」


 魔力を感知した場所へと移動してみると、男性が魔物に襲われている。

 ガーゴイル……どうしてこんな所に。


「あーあ、せっかく楽しんでたのに。何だ、魔王の娘じゃん」


 この声、フルーレか。


「こんなところで何してる?」


「何って、ちょっと遊んでただけだよ。てゆーか何その格好……こわっ」


 やっと見つけた、メフィルの仲間。

 コイツを殺して……否、殺したら駄目か。

 上手く頭が回らない。

 兎に角、フルーレを倒してこの人を助けないと。


「今のうちに逃げて」


 私は男性の前に立つと、そう言ってガーゴイルに剣を向けた。


「あ、ありがとうございます……!」


 お礼、言ってくれる人いるんだな。

 どうでもいいや、フルーレを捕まえるんだ。


「もうボロボロだね〜、そんな状態じゃ戦えないだろ」


 私はまだやれる。

 ここで倒れるわけにはいかないんだ。


「纏めて……倒してやる……」


 視界が()けつつある中、確かに私はフルーレを睨み、ロードカリバーへと魔力を込めた。

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