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魔王の娘は勇者になりたい。  作者: 井守まひろ
四霊/百花繚乱花嵐 編
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女神の夢(第七夜)

 家に帰ると、見覚えのない男が剣を持ち立っていた。


「だ、だれ……?」


 男の前には、お父様と従者達の変わり果てた姿……

 これが現実だなんて、受け入れたくはなかった。


 男が持つ剣には血が付いていなかったけれど、殺したのは間違いなくコイツだ。

 その洗練された鎧には、アイテール帝国の紋章がある。


「もう帰ってきたのか」


 男はただ一言、そう言って館を出て行った。


 アタシは恐怖でその場から動く事が出来ず、ただ震えながらその場に立ちすくんでいた。


 どれくらいそうして居たのだろうか?


 不意に館の扉が開き、誰かの足音がこちらに向かってくる。

 恐る恐る後ろを振り返ると、そこには司祭の風貌をした人族の女性が居た。


「お怪我は、ありませんか? (しゅ)よ」


 そうだった。

 この時、アタシはブライトに助けられたんだ。


 恐怖で何も言えないアタシのことを、ブライトは優しく抱きしめてくれた。

 その温もりで、(ようや)く涙を流す事が出来たんだ。


 その後にアタシが連れて来られたのは、とある教会だった。

 ブライトは創星教という宗教団体の代表らしく、何でもアタシはその団体が信仰する女神らしい。

 勿論初めは信じ難かったけれど、謎の組織に狙われていた事や、ブライトから渡された黒星剣ホロクロウズの聖剣魔法が扱えた事、アタシ自身も知らなかった創星魔法という未知の魔法が扱えた事で、そう信じざるを得なかった。

 結局、アタシを狙っていた組織も創星教と関係があったのだけれど。


 創星教にはブライトだけでなく、ザガンやグレイ、フルーレという仲間が居て、中でもグレイはアタシの事を本当に信仰してくれていたから、ちょっとした悩みなんかをよく相談していた。


 ブライトはとても優しくて、アタシに色々な話を教えてくれる。


 彼女が学舎時代の話、その時にあった事件の話、創星教の代表となるまでの話を、沢山聞かせてもらった。

 中でもアタシの印象に残っていたのは、リタという親友の話である。

 否、彼女はリタのことを「親友だった」と話していたな。


 リタの話をする時のブライトはとても楽しそうだったけれど、話し終えた後はいつも悲しそうな顔をしていた。


 それに、ブライトとリタが仲違いをしてしまうきっかけになった、プレアデス・アーク・アストラ国王。

 奴だけは許せなかった。

 ブライトは奴に復讐をする為、こうして仲間を集めているのだと話す。


 復讐……初めはそんな怖い事をしたらいけないと思っていたけれど、ブライトの話を聞いていると、人族という種の醜さが理解できてしまったのである。


 アタシのお父様を殺したのも、アイテール帝国の第一皇子である、ディアスという男らしい。

 男の特徴を話した時、ブライトはそう言っていた。


 帝国はアルブ王国を属国にして、完全な支配下に置いているようだ。

 人族が許せない。

 きっとブライトも、そんな人族が嫌になって復讐を考えているんだ。

 下等種族共に一矢報いて、いずれ上位の存在として支配する為に。


 アタシは、彼女に協力したいと思った。

 

 生き残っている魔族達の為にも、星の女神として世界を変えてみせる。


 だからお願い……どうか無事で居てね、ベリィ。

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