女神の夢(第六夜)
その日は一段と雪が降り積もって、大人達が除雪に勤しむ中、アタシはベリィを誘っていつもの道を二人きりで歩いていた。
地面に降り積もった雪は、アタシやベリィが歩くたびにキュッキュッといったような音を立て、白く染まった道の真ん中に靴の形を残していく。
幼い頃から、ベリィと二人でよく歩いたこの道。
こうしてまた二人で雪を踏むと、まるであの頃に戻ったかのような感覚になる。
ふと、ベリィが手を繋ぎたいと言い出したから、アタシは彼女の手を優しく握った。
するとベリィは、アタシの手をぎゅっと握り返して、赤らめた頬を首へ巻いたマフラーに埋める。
この日、アタシはベリィに相談したいことがあったんだ。
ここのところ、変な人達がうちへ来るようになっていた。
何でも、世界の真理の為に研究で協力して欲しいとかいう、意味の分からないことを言ってくるカルト臭い人達だ。
そもそも、なぜアタシなのか?
その理由すら教えてくれないけれど、確かに思い当たる節は一つだけある。
アタシの父は、本当の父親ではない。
アタシは自分の正体を知らないから、もしかしたら何かあるんじゃないかと、そう考えたら不安で仕方なくなって、ベリィに打ち明けようと決心したんだ。
ベリィに一通り話すと、彼女は少し控えめにこう言った。
「サーナ、大丈夫だよ。何があっても、私が守るから」
この時、アタシはすごく嬉しかった。
ベリィは小さい頃から勇者になりたいと言っていたけれど、ここ数年は一度もそれを聞いていなかったんだ。
それでも、アタシにそう言ってくれた彼女は、まるで本物の勇者みたいだった。
ベリィがいるから、きっと大丈夫。
もし今後ベリィが困っていたら、アタシも助けられるように頑張らなきゃ。
そう思っていた。
だってその日常が、こんなにも容易く壊れてしまうだなんて、知る由もないのだから。