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魔王の娘は勇者になりたい。  作者: 井守まひろ
四霊/百花繚乱花嵐 編
122/220

幕間 混沌と後悔

 その日、あーしは地獄を見た。


 シャロが殺されてベリィは暴走、サーナはメフィルに連れ去られて行方が分からない。


 今回の作戦で、あーしがやった事って何だ?


 奇襲に失敗して、みんなの足手纏いになっただけ。


 最低だ、最低だよあーしは……


「シャロ……ごめんね……」


 病室の中、まだ温もりの消えないシャロの手を握り、あーしはひたすら泣いていた。


 謝ったところで、シャロが生き返るわけでも、ベリィが帰ってくるわけでもない。

 もう、どうしようもない。


 刑務所が襲撃されたことで、住民達は不安がり外に出なくなってしまった。

 混沌とした状況の中、一部の店も営業を止めたり、常に町中を聖騎士団員達が見回りをしているような状態だ。

 そのおかげか、シリウス内での大きな犯罪は、事件から三日経った今でも起きていない。


「シルビアさん、入りますね」


 あーしがここに居ることを知っていたようで、ルカがそう言いながら病室に入ってきた。


「お腹空いてませんか? パン、買ってきたんですけど……」


「……うん、食べる。ありがと」


 そう言えば、最近ほとんど食べ物を口にしていなかったな。

 久しぶりに食べたそのパンは、何故かいつもより味が薄く感じてしまった。


「シャロさん、まだ希望はあるんですよね?」


 ルカの問い掛けに、あーしは黙って頷く。


 医者とセシル様曰く、今のシャロは死んでいるようで死んでいないような状態らしい。

 突然シャロの傷が塞がったのも、アイネクレストによる治癒の可能性が高いと話していた。


「陽光アイネクレスト、過去にそのワードを検索した際、記憶があった形跡は残されていたのですが、そのワードを含む記憶が消されておりました。しかし“黎明魔法”と検索してみたところ、複数ヒットしたのです」


 セシル様はそう話すと、閲覧した記憶の内容について教えてくれた。


「太陽より残火が尽きし時、そこに神の御使(みつか)いあり。太陽に火が焚べられし時、黎明を(おとな)う魔法が(なんじ)と共にあらんことを」


 セシル様曰く、この太陽とはシャロのことを指しているらしい。

 閲覧した他の関連記憶の内容を全て読んだ上で、そう判断したと言っていた。


「つまり、今のシャロさんは残火が尽きた状態です。彼女の身体から熱が消えないのは、まだ死んでいないから、という事になります。皆様は、ただシャロさんを見守ってあげてください」


 本当にシャロが生き返るのか、まだ確証は無い。

 それに生き返るとしても、いつになるのか分からない。


 ただ、セシル様がそう言ったんだ。

 だから今は、シャロを信じるしかない。


「ルカ、あーしも見回り手伝うよ」


 パンを食べ終えたあーしは、ルカにそう言って立ち上がった。


「ありがとうございます。でも、無理はしないでくださいね……」


「大丈夫、せめてそれぐらいはしないと」


 あーしは何の役にも立てなかったのに、今も後悔してばかりじゃ本当にただの役立たずだ。

 少しでもみんなの為に、みんなに追い付けるようにしないと。

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