表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
魔王の娘は勇者になりたい。  作者: 井守まひろ
四霊/百花繚乱花嵐 編
116/220

89.天空の騎士

 ディアスがメフィルと通じていたなんて……

 そんな……否、別におかしな事ではない。


 一連の事件を仕組んだのが全てメフィルだとすれば、協力者であるディアスがルシュフさんを殺したのも納得がいく。


「お前、なんで……どうしてお前がここにいるの……!?」


 サーナが剣を構え、ディアスにそう言い放った。


「友が困っているのだから、助けるのは当然だろう。初めから君もそうするべきだったのだ、サーナ・キャンベル」


「黙れ……黙れ、黙れええええ!」


 メフィルの視界に入っているせいで、私もサーナも魔法が使えない。


 今この場でディアスに攻撃されたら、私は確実に死ぬ。


 隙を作らないと……何とか、何とか引き延ばせ……


「貴方とは話してみたい思っていたの、ディアス第一皇子。その剣が虚空剣ヴァニタス?」


 私は未だ、ロードカリバーと(しのぎ)を削るほどの強い力でこちらに刃を向けた剣を見て、そうディアスに問い掛けた。


「よく知っているな、その通りだ。虚空剣ヴァニタスはその刃で斬ったもの全てを無に帰す。それが例え強力な魔法であろうとも、全ては虚しく消し去ってしまうのだよ」


 だから剣がぶつかった時、アンダーワールドが消されたんだ。


「いやっ、離してっ!」


 不意に声がした方を見ると、ボフリがサーナの腕を掴んで連れ去ろうとしていた。


「サーナッ!」


「よそ見をしている場合か?」


 直後、私はディアスに強く押されて尻餅をつく。


「あなたの目的は何なの? サーナをどうするつもり?」


「我が国は古くより彼の恩恵を受けている。ワタシにとって、メフィルは友人だよ。だから助けるのは当然だ」


 メフィルが、ずっと前からアイテール帝国を裏で支配していたということか?

 だとしたら、ディアスも騙されているということなの?


「あなたはメフィルに騙されてる! こんな事をしたら、他国を敵に回すってことがわかってないの!?」


「ワタシは我が国以外の事など、心底どうでも良いのだよ。君の国のこともね、ベリィ・アン・バロル」


 ああ、最低だ。

 こんな奴が帝国の時期皇帝だなんて、信じたくはないな。


 そうか、だから奴隷制度とかいって、人を苦しめるような事が出来るんだ。


「そもそも、我が国の兵力に他国が敵うはずがないだろう。そうだ、じきにワタシの率いるユニコーンナイツが此処にもやって来る。他国からの侵入者は、我々で裁くとしよう」


 ユニコーンナイツ、聞いた事がある。

 アイテール帝国最高戦力である、100頭ものユニコーンに乗って現れると言われている精鋭騎士団だ。


 まずい、そうなる前に早くサーナを助けないと……


「くっ、ヘルスワンプ!」


 私は咄嗟にメフィルの視界から遮られた場所に移動し、ディアスの足元に聖剣魔法を放った。


 サーナを掴んでいたボフリは、バーンとルーク、そしてサラマンダーによって引き剥がされ、未だ戦闘は続いている。


 血の泥濘(でいねい)に足を取られている今のうちに、サーナを助けて……


剛翼(ごうよく)円舞(えんぶ)!」


 刹那、凄まじい暴風が巻き起こったかと思えば、血溜まり諸共吹き飛ばしながらディアスが宙へと舞い上がった。

 何だ、あの魔法は……


「この程度の子供騙しで、ワタシを止められると思うな!」


 途轍もない魔力だ。

 これがアイテール帝国の最高戦力、ユニコーンナイツ団長の実力……


「さあ、死にたくなければ降参しろ」


「……嫌だ」


 私はディアスに向けて剣を構え、どうにかして魔法を発動する為に必死で力を込める。

 駄目だ、奴の視界に入っている限り出来るわけもない。


「そうか、少し躾が必要だな。プリズムスラスト!」


 剣先を向けたディアスが、再び激しい暴風と共に舞い上がる。

 空は虹が掛かったかのようにキラキラと輝き、その光を纏った剣がこちらへと迫って来ていた。

 向こうには魔王のツノが無いのに、凄い威圧感が放たれているように感じてしまう。

 もう、駄目だ……


「エンジェオウド!」


 ……その一瞬で、辺り一面が光と静寂に包まれる。


 今の詠唱は何?

 この光は……


 咄嗟に周囲を見渡すと、ディアスもボフリもメフィルも、空から伸びた光の手によって掴まれていた。

 まさか……光魔法?


「遅れてすまない!」


 空を見上げると、光り輝く剣を手にした……まさに、そこには勇者が居た。


「勇者エドガー・レトリーブ、只今戻った。輝け、光竜剣ルミナセイバー!」


 そうして煌々と輝きを放った光は、今までに見た何よりも眩しいものだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ