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魔王の娘は勇者になりたい。  作者: 井守まひろ
四霊/百花繚乱花嵐 編
110/220

84.土神と狐

 姉さんは、ブライトさんの裏で暗躍する何者かの存在に薄々勘付いていた。


 寧ろブライトさんと再会するずっと前から……あの魔王ローグが死んだ日からずっと、姉さんはこうなる事を見据えていたのかもしれない。


「急で悪いんだけどさ〜、マレ王国行ってきて!」


「分かったよ姉さ〜ん! 行ってきま〜すっ!」


「先ず疑問に思ってね〜。あと私の話を聞いてから行こうか」


「うん聞く! 一体どうしたの?」


 姉さんが話したのは、150年前に突如としてその姿を消した四精霊の話だった。


「何かの書物で見かけた気がするんだけどさ〜、過去にアストラ王国内でバチクソ強い魔力が観測されたみたいな話があったような無かったようなって感じでさ。んで、その年が四精霊の消失と近かったような気がするんだよ」


「それを調べてくればいいんだね! でも、どうしてマレ王国に?」


「それはもう、そこに四精霊がいるからだよ」


 意味が分からなかった。

 消失したはずの四精霊が、マレ王国にいる?


「……姉さんの頼みだから、ちゃんと調べるよ。任せて」


 曖昧な説明しか無かったけれど、姉さんの考えはいつも正しい。

 まるで先見の明でも持っているかのように、いつも先を見据えて行動出来る人なんだ。


 だから僕は、姉さんを信じてマレ王国へと向かった。


 ダイヴダンジョンの遺跡や書物、その他を片っ端から調べ、住民への聞き込みも隅々まで行った。


「水の精霊、ウンディーネ様ならば、地下神殿におられるよ」


 マレ王国最年長の女性、アネストさんが遂に教えて下さった。

 何度も通い続けた甲斐があった。


 この人に信用されるまで、どれほど時間が掛かったことか……

 この短期間で調べた持てる知恵全てを使ってアタックし、どうにか信用して貰えたのだ。


「ただし、地下神殿に行くまでの道は危険だよ。危険な魔物が沢山いるからね」


 それは十分に理解していた。

 遺跡を調べる上で、一度ダイヴダンジョンへと入ったからだ。


 あそこは人が簡単に入ってもいい場所ではない。

 強い魔物は奥に生息しているが、手前にもウォーターリーパーという厄介な魔物が大量に生息している。


 そんな時、姉さんがマレ王国にやって来た。


「姉さ〜ん! 会いたかったよぉ〜! あっ」


 感極まって抱きつこうとした僕の頭を掴んだ姉さんは、そのまま僕を顔面から地面に叩き付けた。


「私もだよ〜。進捗どう?」


「姉さんの愛の鞭、受け取ったからねっ! うん、実は……」


 僕はこれまでの出来事や調べた内容を、全て姉さんに話した。

 ウンディーネがここに居ること、過去に魔王が四精霊を助けていた事、そして謎の存在である“魔皇”のこと。

 未解読の部分もあって完璧な状態では話せなかったけれど、姉さんはそれを全て黙って聞いていた。


「ダイヴダンジョンは〜……まあ私が行ってもいいけど、魔王関連ならベリィちゃんがいいかなぁ。まだ先になりそうだけど、ベリィちゃんをこっちに連れてきてもいいかもね」


 姉さんは向こうでの出来事を全く話してくれないから、僕はこの時に初めてベリィ・アン・バロルの現状を知らされた。


 魔王の娘である彼女の生存は耳に入っていたけれど、まさか彼女がアストラ王国を救ってくれていたなんて、本当に驚いたよ。


 アストラに帰る前、姉さんは僕にこう言った。


「私にもしもの事があったら、ベリィちゃんの事は任せた!」


 聞こえなかったふりをした。

 そんな事、本当は考えたくもないのだから。


 けれど、姉さんの言うことはいつも正しい。


 本当は、全て未然に防げれば良かったんだけどな。


 僕らだけの力じゃ、これが精一杯だったみたいだ。


「砂塵切断」


 軌道を補正した巨大な刃を、ボフリに向けて振り翳す。

 砂塵でメフィルの視界から外れている今なら、もう一撃いける。


「行くぞ、相棒!」


「おうよ!」


 バーン・フォクシー。

 君は僕の最強の相棒だよ。


 創星教に潜入して欲しいだなんて極秘の任務、君にしか頼めなかった。

 辛い思いをさせて申し訳ない。


「ロッククラッシュ!」

「キツネビ!」


 僕の聖剣魔法とバーンの蒼炎魔法がボフリに炸裂する。

 しかし防御に入られた。

 相手の傷は浅い。


「厄介だなぁ。そうか、お前も蒼炎が使えるようになったのか」


 バーンの蒼炎は、かつて村を焼いたこのボフリに対する憎しみから生まれた力だ。

 友人の為ならば、僕も出し惜しみはしない。


「纏めて焼いてやるよ。バーニンクリメイション」


 ボフリの蒼炎は強い。

 僕は初めて戦う相手だから、距離感を間違えると一瞬で炎に飲み込まれそうだ。

 そしてバーンとシルビアさんは、その恐ろしさを誰よりも誰よりも知っている。


「グランドブレイク!」

「ヘルフレイム!」


 詠唱で魔法が発動しない……!

 しまった、メフィルの視界に入っている!


 再度スモークで視界を遮るべきだったか。

 否、下手に視界を悪くすればこちらのリスクも高くなる。


「トルネードアロー!」

「火焔拳・弾!」


 ブラスト君の放った矢がボフリの身体を掠め、バーナさんの攻撃が蒼炎を弾き飛ばす。

 ありがたい援護だ。

 それにもう一人……


 蒼炎により出来た影が僅かに動き、その直後に大きな水飛沫を立てて現れたのは……


「シェードダイヴ、水刃!」


 ディーネさん、そんな事も出来たのか。

 しかし、ディーネさんは向こうでメフィルと戦っているはず……


「コピーライド、これがあなた達の言う海霊よ」


 やはりそう言うことか。

 コピーした対象をプリントし、本体に近い能力を発揮する分身体を作る。

 その弱点は、影を攻撃されない限り不滅。


「四精霊か……だりぃ」


 蒼炎の勢いは水を浴びてもなお衰えず、ボフリの周囲を囲うように燃え盛っている。

 ディーネさんの聖剣魔法、本体と比べて少し弱くなっているように見えた。

 やはり聖剣のスワンプマンは本体よりも威力が出せないのだろうか?


 3人のおかげで、こちらも魔法が使える状態になった。

 再びメフィルの視界へと入る前に、今度こそ攻撃を決めてみせる。

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