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魔王の娘は勇者になりたい。  作者: 井守まひろ
四霊/百花繚乱花嵐 編
109/220

幕間 化け狐

「いや~、やめといたほうが良いっすよ。この身体になったら、もう二度と人には戻れなくなるんで」


 俺は忠告した。


「キミが人の心を失っていないのだから平気だろう。それに、ワタシはもう覚悟を決めているんだ」


 そんな簡単に人を捨てるな。


「人の心? 俺に? いや、こっちは仲間と妹捨ててブライトさんに協力してるんすよ。超残酷じゃないっすか?」


「キミ、本当は優しいんだろう。最近よく話すようになって分かったよ。そんなキミがなぜ皆を裏切ってこちら側にいるのか、深くは詮索しないけれどね」


 そんな事はどうでもいい。

 アンタは人を捨てたら駄目だ。

 アンタのことを慕っている奴も、リタさんだってきっと悲しむ。


 俺と同じ苦しみを味わって欲しくない。


 だから忠告したんだ。


 アンタが死んだら、創星教は……


「バーン、ど、どうした?」


 おっといけない。

 敵地でこんな顔をしていたら、俺の計画がバレる可能性があるからな。


「よぉ、ゴルゴン。何でもねーよ」


 心配そうにこちらを見つめるゴルゴンに、俺は笑顔でそう返した。

 コイツはオークだが、高い戦闘能力を持つ創星教のメンバーだ。

 純粋なやつで、敵とは思えないほどに優しい。


「そ、そうか。お、オデは、時々オマエが寂しそうな顔をしているのが、心配だ」


「そんなん気にすることねーよ。俺はただ人生が楽しけりゃそれで良い。今は楽しいぜ? メフィルさんはすげーからなぁ。あの方がテッペンになれば、俺らも楽しい生活し放題だぜ?」


 嘘が上手くなってしまったのは、嫌な事だな。


「そう、だろうか?」


「そうそう。さ、集会は明日なんだから、作業に戻ろうぜ」


 もうじき、この教会で創星教の集会が開かれる。

 その日、メフィルは壇上で女神サーナを信者達の前に出す。

 狙うのはその瞬間だ。


 俺は後から合流し、メフィルの野郎が雇った用心棒を倒す。


 メフィルが奴を雇ったのは本当に偶然だった。


 因縁の相手だ。

 一度顔を合わせたが、こっちが鬼人アモンに変身してるからなのか、向こうは俺があの頃のガキだってことに気付かなかった。

 俺達の村を燃やした奴の顔を、忘れるわけが無いだろう。


 そうして、ついにその瞬間が来た。


「シリウス自警団、バーン・フォクシーだ。地獄の業火に焼かれろ、クソ野郎」


 目の前には奴がいる。

 あの時、幼い俺が倒せなかった因縁の……

 ボフリ、故郷のアンセル村を襲った盗賊のリーダーだ。


「へぇ〜、なるほどなぁ。そんな化け物になってたのか」


「バ、バーン……」


 あーあ、ゴルゴンが衝撃の余り口が開きっぱなしだ。

 お前は優しいからな。

 だが、どこまで行っても俺はこっち側の人間なんだよ。


「バーン・フォクシー、裏切りましたか」


 何言ってんだメフィルの野郎?


「裏切るってなんだ? 俺は最初からテメェらの仲間なんかじゃねーよ」


 用心深いくせに、今日まで俺を信じてくれてたことが意外だった。

 否、そもそも眼中に無かったのかもな。

 だがおかげで勝機が作れた。


 反撃するぞ、みんな。

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