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魔王の娘は勇者になりたい。  作者: 井守まひろ
四霊/百花繚乱花嵐 編
106/220

81.突入

 今回の作戦で、最初に突入するのがアタシ達という事になった。

 ベリィちゃんはメフィルから見て、左右と背後にワームホールを繋げてくれるらしい。


「でもさ、それって実際に見てみないと分かんないじゃん。メフィルが壇上に立つかどうかも確実じゃないし、サーナがどこに居るかも分からないし……」


 情報ではメフィルが今の創星教代表となっているらしいけれど、本人が壇上に立つタイミングも、サーナちゃんがどのタイミングで出るかも分からない。


「その辺は臨機応変に行くしかないよね……あのね、もしメフィルの近くにサーナちゃんが居たら、アタシがサーナちゃんを助けたい。だから、シルビアちゃんとビートさんがメフィルを攻撃している間に、アタシはサーナちゃんを保護する。まだどうなるか分からないけど、それでいいかな?」


「よし、分かった! 状況によってまた変わっちゃうかもだけど、シャロのプランで行こう! それでいいですよね、師匠?」


「異論は無い。小生も全力で初撃に臨もう」


 そうして決めた、アタシ達のプラン。

 その予定通り、サーナちゃんはメフィルの真横に居た。

 だからベリィちゃんは、本来繋げる予定だった位置とは別の位置にワームホールを繋げてくれたんだ。


「ワームホール!」


 ベリィちゃんの詠唱で、目の前に空間の歪みが生じる。

 開いたら一瞬で……開いたら一瞬で……


 空間の歪みは、ほとんど間を置かずに大きな穴に変わった。


 突入!


 アタシ、シルビアちゃん、ビートさんの三人でワームホールの中へと入り込み、そうして目の前に現れた相手へと全員で攻撃を仕掛ける。


「スタッグバイト!」

銀狐咬斬(ぎんこかみぎり)!」

「どりゃあー!」


 メフィルから見て右側からシルビアちゃん、正面からビートさんが攻撃を仕掛け、アタシは左側に立つサーナちゃんの元に飛び込んだ。


「サーナちゃん!」


「な、なんで……」


 二人の攻撃はメフィルに直撃した。

 今のうちに……


「助けに来たよ、一緒に行こう!」


 差し伸べたアタシの手を見たサーナちゃんは、少し戸惑ったような顔で……剣の柄に手をかけた。


「ごめん……アタシ、もう嫌だ……」


 サーナちゃんは剣を抜くと、それをアタシに向けて横に振った。

 咄嗟に避けたけれど、戸惑って反応が遅れたから、その剣先がアタシの頬を掠める。


「サーナちゃん、どうしたの? もう大丈夫なんだよ、アタシ達みんなで助けに来たから!」


 アタシの言葉が届いているのかいないのか、サーナちゃんは何も言わずに聖剣魔法の構えを取った。


「ネビュラメイカ」


 発生した魔法の斬撃が、教会諸共アタシ達を吹き飛ばす。

 突然の出来事で逃げ惑う信者達の中、後から突入してきたみんなはその状況に困惑しているかもしれない。

 アタシだってそうだ。

 サーナちゃんを助けに来たつもりが、その本人に剣を向けられて教会の外に吹き飛ばされたのだから。


「シャロ、何があったの!?」


 何とか直撃を免れたアタシに、ベリィちゃんが駆け寄って来る。


「サーナちゃん、何かあったのかも……助けようとしたら、急に攻撃してきて……」


「はぁ? サーナ、どうしちゃったんだろう……」


 そう言って辺りをキョロキョロと見回すベリィちゃんが、唐突に「あっ!」と声を上げた。

 その方向を見ると、先ほどメフィルに攻撃を直撃させていたシルビアちゃんが頭から血を流して倒れている。


 どうして……?

 あのメフィルが本体でないとは言え、攻撃自体は効くはずなのに……

 どうしてシルビアちゃんが……


「いやいやいや、驚きましたよ! やはり保険はかけておくものですねぇ」


 砂埃の中から現れたメフィルは、笑いながらビートさんの首を掴んで強く締めている。

 そんな……まさか、この教会に替わりの肉体があったの!?


「とは言え……毒とは厄介な。肉体の再生が不完全なものになってしまいました」


 イヤ、違う。

 メフィルは再生したんだ。

 でも、アイツにあんな能力は無かったはず……


「サーナ様の血を頂いたのですが、やはり素晴らしい再生能力ですねぇ。これでこの肉体も、多少無理をして動かせるでしょう」


 サーナちゃん、きっと何か事情があるんだ。

 奴に逆らえない事情が……

 立ち上がったアタシはアイネクレストから剣を抜き、その剣先をメフィルに向ける。


「あなたがサーナちゃんに何をしたのか知らないけど、絶対に助けるから!」


 大丈夫、まだ巻き返せるはず。

 魔法を封じる相手だからこそ、魔力のないアタシが頑張らなきゃいけないんだ。

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