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魔王の娘は勇者になりたい。  作者: 井守まひろ
四霊/百花繚乱花嵐 編
104/220

幕間 ウィリディスにて

 シリウスを出て何日経ったか等、数える余裕など無かった。

 サーナの救出までに光竜剣ルミナセイバーを取り戻さなければ、俺は自分が許せなくなる。

 だから早く、早く行かなければ……


「サンダークラップ!」


 そろそろ休まなければ、魔力も限界に近い。

 ウィリディスの森は危険な魔物が多いとは言え、個体ごとの強さは大した脅威にはならない。


 問題はその数だ。


 やはり自然の多い……というより、自然そのものであるウィリディスには、迷宮の中と相違ないぐらい多くの魔物が生息している。

 今も群れの魔物から追われており、何とか逃げ切れたがじきに見つかるだろう。

 早く遠くへ……


「!?」


 頭上から気配を感じたかと思えば、涎を垂らして俺を見ているシャープレパードの姿がある。

 一体か……しかしここで騒ぎを起こせば、先程の群れも襲ってくるだろう。

 だが仕方ない、今は……


 その直後、不意に飛んできた矢によってシャープレパードは射抜かれ、そのまま木の上からドサっと落下した。


 見ると、どうやらウィリディスの民族が倒してくれたらしい。

 とは言え、すでに体力が限界だった。

 そこから俺の意識は途絶え、次に目が覚めた時にはもうすっかり暗くなっていた。

 俺はウィリディスの民に助けられたようで、彼らの寝床で寝かされていた。

 藁でできた部屋には誰も居なかったが、外を見ると村の民たちが焚き火を囲って食事を摂っている。


 俺の視線に気付いた一人が何か言葉を発すると、皆がこちらに視線を向けた。

 言葉は分からないが、どうやら俺の身を案じてくれているらしい。


「食事は食えるか?」


 という意味なのか、俺に肉が乗った大きな葉っぱを差し出してくる。

 俺は頷くと、その好意に甘えて出された肉に齧り付いた。


 味は素材そのものだが、限界だった身体にその美味しさは沁みる。


「巨大樹へ行くのか?」


 と言ったようなことを訊かれたので、そうだと頷くと、村の長らしき人物が不思議な形をしたお守りのようなものを差し出してきた。


「持ってけ」


 と言ってくれているらしい。

 俺はそれを受け取り、首からぶら下げる。

 言葉も通じない見ず知らずの余所者に、ここまで親切にしてくれる彼らに対して、俺は何度も礼を伝えた。

 言葉は分からずとも、気持ちは伝わってくれたらしい。


 それから俺は、助けてくれた礼に火の番をすると伝えたのだが、いいからゆっくり休んでろと言われてしまい、そのまま朝まで寝かせてもらった。


 翌朝、村人達に礼を言って出ようとすると、皆が集まって盛大に見送ってくれた。


「ありがとう!」


 と俺が言うと、皆がその言葉を真似て「ありがとう!」と返してくれた。

 俺が昨晩何度も繰り返していた言葉だから、覚えてくれたのかもしれない。

 色々と片付いたら、今度この村に恩を返しに来ようと思っている。


 そうして俺は、再び巨大樹の迷宮を目指した。

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