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魔王の娘は勇者になりたい。  作者: 井守まひろ
四霊/百花繚乱花嵐 編
102/220

女神の夢(第四夜)

 広い部屋の真ん中に、一本の剣が飾られている。


 名を虚空剣ヴァニタスといい、ヘロディスが作った聖剣のうちの一つだ。


 アイテール帝国への献上品として作られたものであり、非常に強大な力を持つ代物である。


「この力があれば……」


 魔族の王、ゲオルグはそれに手をかけ、あろうことか盗み出してしまったのだ。


 母のアラディアが死んだ後、ゲオルグは父であるフェレストから四霊聖剣の起こす奇跡について聞かされた。

 フェレストはアラディアに聞いたその方法ならば、アラディアを蘇らせることが可能かもしれないとゲオルグに伝えたのだ。


 ヘロディスの作った聖剣は現時点で9本。


 その中でも四霊聖剣はどんな祈りも届くという特別な魔法を持ち、その魔法を開く鍵となる聖剣が他にあるのだと言う。


 ゲオルグはアラディアの死を嘆く父フェレストの為に、先ずはアイテール帝国から虚空剣ヴァニタスを無断で持ち出したのである。


 彼が初めに狙ったのは、四霊聖剣では無かった。


 四霊聖剣は、その所有者である四精霊を上手く説得すれば力を貸してもらえると考えたのだ。


 重要なのは、それを開く鍵である。


 先ずは星の聖剣を持つ人族の男から、虚空剣ヴァニタスの力でそれを奪い取った。

 支配者の剣を使わなかったのは、自身が魔族の王ゲオルグだと悟られないようにする為だった。


 星の聖剣を持つ人族は非常に強く、最後まで抵抗してきたが為にやむを得ず殺してしまった。


 そうして星の聖剣を手にしたゲオルグは、次に花の聖剣を狙ったのである。

 花の聖剣は、星の聖剣を持つ人族が居たアストラ王国の隣に位置する、名もなき村に住む人族の女が持っていた。


 ゲオルグは女を襲い花の聖剣を奪い取ろうとしたが、女には争う気が無かったのである。


 ゲオルグの攻撃を受けて傷付きながらも、尚その女はゲオルグとの対話を試み続けた。


 そこでゲオルグは悟った。


 自分は何と愚かな事をしているのだろう……と。


 ゲオルグは女の傷を治し、必死に頭を下げて謝った。

 その場で自決することも考えたが、それは目の前の女に止められた。


 村を後にしたゲオルグが次に向かったのは、叔父であり聖剣の鍛治師であるヘロディスの元だ。


 彼はヘロディスに自身の犯してしまった罪を全て話し、持っていた三つの聖剣を差し出す。


 ヘロディスはゲオルグの話を黙って聞いていたが、最後にこう伝えたのだ。


「お前の一族には呪いを与える。末代まで決して消えることのない、畏怖の呪いだ。それを自戒とし、世界の均衡を守る役割を果たせ」


 そう言ってヘロディスは虚空剣ヴァニタスと星の聖剣だけを取り上げ、支配者の剣はゲオルグに返したのであった。


 この日からゲオルグの頭には三日月のようなツノが生え、そのせいで周囲から恐れられる事となる。

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