幕間 幽閉の女神②
抵抗することにも疲れた。
何をしても無意味だから、食欲は無いけれど無理やり食事を摂っているし、少し奴に身体を触られたぐらいじゃどうでもいいと思えてしまう。
「終わりましたよ」
今日はメフィルが医者らしき人を連れて、アタシの採血をしに来た。
何に使うのか分からないけれど、考えたくもない。
「少し痩せましたねぇ。もっと食べていただかないと、じきに集会があるのですから」
もうすぐアイテール帝国のカエルムで、創星教の集会をやると言っていた。
ブライトが居なくなった今の教会はメフィルが代表代理を務めており、アタシも星の女神として立たされるらしい。
こんな状態の女神を見て、信者達はそれでも信仰するのかな?
もし壇上でアタシがコイツのことを暴露したら、信者達はアタシを信じてくれるのかな……?
「我が母……いえ、サーナ様。お返事ぐらいはきちんとして頂かないと」
メフィルは突然アタシの髪を掴んで引っ張ると、少しムキになった声色でそう言ってきた。
「……痛い」
「痛いではなく、わかりました、ですよね?」
「は、はい……わかりました……」
どうせ魔法も使えないし、この男に逆らえばきっと酷い目に遭わされる。
初めは丁寧に接してきたのに、最近になってから急に態度を変えるようになってきた。
コイツはアタシを信仰しているわけではない。
アタシのことなんか、ただの道具程度にしか思っていないんだ。
「その反抗的な目もやめなさい。次に間違った態度を取ったら、もっと暗くて怖いところに閉じ込めましょうかねぇ。勿論魔法も使えない。そこには無数の魔物達が生息していて……」
「わ、わかりました。すみませんでした。これからはちゃんとします……だからお願いします、許してください……」
これ以上聞かなくても分かる。
コイツに逆らえば生き地獄が待っているんだ。
魔物には殺されることなく、ただひたすら玩具のように甚振られる。
そんなの、絶対に嫌だ。
「良いでしょう。お利口さんですねぇ」
メフィルは髪から手を離し、今度は優しく頭を撫でてきた。
そうだ、まだこのほうがマシだ。
コイツの言うことを聞いていれば、少なくとも悪いようにはされない。
だからこれで良いんだ。
アタシはもう、このままで。