表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
↑ドクラク館の殺人↓  作者: タカギモリヤ
第一章 初日
9/13

第八話 男二人


「んだぁ?」


 と野球部の彼はガンをつける。次の区画へ赴くと、丁度、左のドアから二人の男が出てきたところだった。かれらは、この異常な状況を整理するべく、お互いの部屋の変化を検分していたみたいだ。


「お前らは野球とジャージでいいな」


 野球、というのは彼が野球部所属だからだろうか。彼の制服は半そでのパリっとしたもので、まるで無地のユニフォームに見えた。そして、ジャージ君は珍しいことに、名の通りジャージを着ている。でも、よくよく考えればそれが学校での彼の正装だから、この状況の中では変化に乏しいほうなのかもしれない。


「じゃあ、お前は作家だぜ」


 鋭い。


「その通り。そう呼べ」


 野球部の彼は、少し驚いたように目を見開いたが、まあいいか、といった具合に鼻を掻いた。そして、しばらくして、もう一人の男が口を開いた。


「しかし! 僕は部活の途中だったのだが、どうしてこんな場所にいる! 部活をサボしている現状がストレスでならない!」

「お前はもっと別のことを心配しろ」


 と野球は、ジャージの彼にあきれたようにツッコミをいれた。


「さて、君たち! 君はなぜ、僕たちがここにいるか知ってるかい!」

「知るものか。おそらく誰も知らないだろう。もし知っている奴がいるなら挙手をしてくれ」


 という、物書きの彼の呼びかけに、当然、誰も手を上げない。ヲタク君は手を上げたかに見えたけれど、それは単に伸びをしていただけのことであり、紛らわしいと作家君に叱られている。


「いやあ、身体の節々がゴリゴリしますなあ。おいらたちは一体、どれだけ眠っていたのでしょうか」


 彼はサスペンダーの紐をなぞりながら、背をそらした。


「ところで君はなんて呼べばいいんだい! 太ってる君かい! 僕は失礼だから、そんな呼び方をしたくないが!」

「まあ、なんとでも読んでくださいな。ま、オイラはヲタクを推奨していますがねえ」

「そうなのかい! ならヲタク君でいこう。なら、広井さんはどう呼べばいいのかい! かまってちゃんかい! 僕はそんな風には呼びたくないぞ!」

「おい、そこらへんにしておけ、ジャージのお前。お前は俺たちの呼び方に合わせておけばいい。余談だが、そいつはヒロインを自称しているようだ」

「広井だからヒロイン。はは」


 快活なジャージ君から、ものすごく乾いた笑いが出てきた。


「そろそろ次に移りましょう。最後の部屋ですわ」


 と、豪奢な彼女は、あくびをした。


「最後は誰がいるだろうね」


 僕は誰ともなく尋ねる。


「さあな」


 僕たちは食堂の手前の区画、つまり最後の住空間への扉に手をかけた。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ