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ドッペルゲンガー

EP1:未来、日本、災害//20680416

作者: ポテチさん

「はぁ......はぁ......はぁ......」

4月16日、今は5時を過ぎたぐらいだろうか。今日は春にしては30度と気温が高い。日本全国は梅雨をすっ飛ばして夏なのかと思うくらいの暑さだ。

というかこの現代ではこの温度は当たり前のことになってきている。昨日は31度、一昨日は29度と、こんな感じで3日連続の猛暑日となっているのだ。

だが、現代技術は素晴らしい進歩を遂げたようで、今では低価格のハンディファンやら、涼しく感じるような服だとか、空調服だとかの素晴らしい発明が多数あり、さらには屋外施設の敷設が行われたため、何かの理由で外出しない限り、今では暑さを感じる瞬間はほとんどない。

なら、なぜ俺はこうして息を切らしながら暑さを感じているのか。それはとても単純な理由だ。

「はぁ......はぁ......はぁ.......がぁ......」

今、俺は逃げている。走っているのだ。

後ろには、明らかにこちらに敵意を持った怪物がこちらを追いかけてきている。

なぜこんなことになっているのか?それを語るためには、今日一日を思い出す必要がある。



2068 0416 0518

今日は少し早く起きた。まだ日も昇っておらず、でもそんなに眠くもないかなと思ったので、今日は張り切っていい感じの朝食を作ろうとした。

ちなみに俺は、普段料理を作ろうとしたことはない。なぜ突然やろうと思ったのか。それはとても単純な理由だ。面白いからだ。


2068 0416 0602

「やればできるもんだな......」

最高にうまそうなフレンチトーストができた。これはいい一日になりそうだ。まもなくして、廊下から足音が聞こえてきた。

「おはよございます......あれ?お兄様が料理なんて珍しいですね。今日は雪でも降るんでしょうか?」

まだ眠そうな目をこすっているこの女の子はまゆ、俺のよくできた妹だ。普段はまゆに料理を作ってもらってる。

「早起きして頑張ったんだぞ、しっかり味わってくれ。」

そういえば、自己紹介をするのを忘れていたのを思い出した。俺の名前は御子神(みこがみ)(みやび)という。16歳、学生だ。

「わあ!これ美味しいですね!お兄様もこれからは料理をした方がいいですよ!大丈夫です!まゆが教えて差し上げますから!」

目を向けると、いつの間にかフレンチトーストを食べていたまゆがいた。

「いや、クックパッド見ただけだし、誰でもできるだろ......」

「そんなことはありません!善は急げです!今日は学校が終わったら買い出しに行きましょう!」

いやそこまでは......と言おうとしたが、妹のきらきらとした目を前に、俺は口を動かせなくなり、仕方なさそうにして了承した。

「お兄様、これ見てください」

自分の分の盛り付けをしている間にいつの間にかついていたテレビを、まゆは指差した。

「防衛費、また上がるんですね…」

「仕方ないよ。災害は日に日に勢いを増していく一方だし、何よりこれが多数派の意見なんだからね。」

「そうですか......仕方のないことですもんね......」

まゆは少し気まずそうにする。

「大丈夫だよ。きっと良くなる。」

俺は励ましにもならない励ましの言葉をまゆに送った。



2068 0416 0816

俺は朝ごはんを食べて家を出ると、俺は高校へ向かった。

「おはよう御子神ぃ!」

朝から元気すぎる程の挨拶が聞こえてきた。こいつは倖田 直樹(こうだ なおき)、クラスメイトだ。出席番号が近く、今年度のクラス替えから仲良くなった。

「おはよう倖田、うるさい。」「は?だまれ。」

「ほんとのことだろ」「もっとオブラートに包めよ!」

「いいだろ別に」

とりあえず目覚ましがわりの暴言を吐いてみた。こいつはノリがよくて頭の切り替えが早いので話し相手には最適な奴だなと再確認した。

「それよりニュースで見たか~?防衛費上がるらしいぞ。」

「見たよ。ただそこまで多くはなかったけど」

「これはまだ最初だろ、ここからまた段階的に上がっていくんだよ」

「そうだと思う。この前の宮崎災害が相当効いたみたいだな」

ここで言う「宮崎災害」とは、年始、つまり1月1日に起こった九州東部の大規模な災害のことだ。

「いやだよなぁ......何年か経ったら、なんで化け物が出てくるかも、そもそも原因分からない災害の対策に駆り出されるなんて」

ここ、桜華防衛高校は、災害対策で化け物と戦うための人材を育てるために設立された学校なのだ。…と言っても、俺たちは現場には行かず、基地から戦闘員を指揮するだけなのだが。

「そのうち何年かしたら、きっと原因が分かるはずだろ。」

「そんな偶然があればいいけどなぁ~」

そんな話をしているうちに、担任の先生が入ってきた。

「はい席についてー、はじめるよー」

俺たちは話を止めて席に座った。



2068 0416 0900

「御子神、ちょっといいか?」

朝のホームルームが終わった後、俺は担任に呼び止められた。

「はい......?何かあるんですか?」

俺は突然のことに驚きと疑問を隠し切れなかった。

知らないうちに何かやってしまったんだろうか......

「今日の昼休みに、偉い人が来ることになってるんだが、実はその人が君と話したいらしいぞ。」

どうしよう......本当に知らないぞ。しかし、学生にとってこの状況は拒否権はないも同意義である。

「わ......わかりました。どこに行けば?」

「応接室らしい。」

「わかりました。昼休みになったらすぐ行きます。」



2068 0416 1250

昼休みになってすぐ、俺は応接室に向かおうとしたが、これが教室から相当遠い位置にある。うちの教室は2号館5階、応接室は2号館1階にあるため、階段をずっと降りていく必要があるのだ。しかも昼休みすぐに移動してしまったため、移動教室からクラスに戻っていく人が大勢いたので、上階への人の波をかき分けて進まなければいけなかったため、倍の時間と労力をかけなければいけなかった。

ようやく着いた俺は応接室のとなりの事務室に入る

「すいません。2年の御子神ですけど.......」

中に入ると事務に職員たちが少しの目配せをした。え、何この雰囲気?

「早いね。隣のカギ開けるから入って待っててね。」

俺は案内された応接室の中で待つことにした。あいにく暇をつぶせるものを何も持っていなかった。俺は考えを巡らせることにした。

俺の学校の成績は良くも悪くも普通である。特定の科目を頑張ればテストで点数は取れるが、その分他の科目がお粗末になってしまうのだ。そんなわけで、外の偉い人と話したりするなんてあり得ないことだ。

つまりこれは俺のことを知っている人、つまり小中学校の知り合いだったりの可能性がある。だが、それならあんなにもったいぶっているのはなんでだろうか?

担任は偉い人と言っていたが、もしかして名前も知らないのではないだろうか?

そうなると先程の推測は外れてしまうかもしれない。


そんなことを考えているうちに、突然ドアが開き、事務の人ともう一人が入ってきた。

「お待たせ。こちらが自衛隊からいらした鹿久保さんよ。」

「はじめまして。君が御子神くん?」

俺はさすがに内心焦った。何と未来の職場候補の方ではないか。

「はい!僕が御子神です!今日は......」

「大丈夫よ、そんなに緊張しなくても」

鹿久保さんは男勝りな勢いのある口調だった。

「それじゃあ、話が終わったら言ってください。」

そういうと事務の人はそそくさと帰っていってしまった。何とも奇妙な状況になってしまった。まさかの偉い人と一対一の会話となり、俺はさらに緊張し始めたが、すぐに鹿久保さんは口を開いた。


「今日はごめんなさい、呼んじゃって。」

「いえ!その......今日はどういう用件で......?」

「そんなに重要な用じゃないわよ、あなたのことは楠乃木くんから聞いたの」

「くすのき.......って楠乃木先輩ですか!?」

「ええ、彼から、『あいつは面白いやつで、しかも世の道理をわきまえてる』って聞いてて、それで興味がわいたから仕事ついでに会いに来たの」

「そっか......それで......」

これで俺の疑問はすべて解消された。これでようやく不安なく話せる。

「楠乃木先輩の配属先の方なんですね。俺、最初ちょっとびっくりしちゃって。」

「そんな雰囲気だったわね。彼とはどうやって知り合ったの?」

「1年のとき、女子生徒のいじめがありまして......それを俺と先輩で解決したんです。」

「そうだったの......やっぱりこういうところでもいじめってあるのね。」

鹿久保さんは少し残念そうに言う。

「そうね......特にこういう実力主義的な場所では起きやすいでしょうね。もう少し具体的な方法を教えてくれない?」

「この件は少しややこしくて、まずこのいじめは、クラス規模で行われてたんですけど、クラス内の関係性はお互いに深くて、誰が誰をいじめたっていうのが期間ごとに変わってたんです。」

「それって......いじめられる方が次の日にいじめる方になるってこと?」

「そうです。いじめる人といじめられる方は前の週の投票で決められていました。前の週に少しでも変な行動を取ると.......そんな感じで生徒がどんどん内向的になっていったんです。」

少し説明口調になってしまったなと思ったが、鹿久保さんは聞き入っている様子なのでそのまま続けることにした。

「それに気づいた俺たちは、あることを思いつきました。クラスの半数と"取引"して、ある日主犯の女子生徒に投票させました。その後、主犯の女子生徒は他のクラスカースト上位と結託して俺たちが買収した半分と争い始めました。」

「クラスが二分されて......それで?」

「均衡を保ち始めました。バランスを取り始めたゲームはつまらなくなっていき、最後にゲームは終了、主犯を学校に報告して終わりました。その後は知りません。」

一気に話してしまって申し訳ないな......

「すいません長くなっちゃって......分かりましたか…?」

「大丈夫よ。ある程度は聞いてたし。......うん、さすがね。他の話題もしましょうか。」

どうやら気に入られた?ようだ。説明しただけなんだが。

「あなたは今の世界をどう思う?」

「......え?」

何だか今日はずっと驚いてばかりだ。世界......というとつまり......

「......怪物の災害のことですか?」

「それ以外にある?ここはそのための学校でしょう?」

「......今の文明は少しずつ衰退しています。日本だけじゃなくて、世界各地で化け物が暴れている。人は死んでるけど、原因は不明で解決策は出てこないでしょう。このままじゃジリ貧で国はどんどん滅ぶ。世界がもっとまとまりを持たないと。」

「まとまり?」

「国連は変化を嫌っていつまでも昔のままにしたがっているけど、今変わらないとこのまま人類は滅亡してしまうかと」

鹿久保さんは少し考えた後、ゆっくりと口を開いた。

「大胆な仮説ね、初対面の人に言えることじゃないわね,,,,でも全部あってる。うん、あんたは間違ってないわ。」

「あ......ありがとうございます。」

さすがにやらかした。厨二病もいいところだ。人類滅亡とか言っちゃった。どうしようかな。

「やっぱりあんたいいわ。今度のインターンにでもうちに来なさい。」

「はい!?」

さすがに度肝を抜かれた。これってもしかして引き抜きのお誘いじゃないか?

「残念だけど今日は他の仕事があるから、また今度連絡させてもらうわ。じゃあね~」

そういうとそそくさと荷物をまとめて出て行ってしまった。

…嵐、というより炎のような人だったな。



2068 0416 1630

「お兄様!こっちです!」

週初めのきつい学校が終わったあと、俺はまゆとの約束のために最寄りのスーパーに向かった。

「中学って終わるの早いな......」

「近いだけなのでそんなに差はないですよ」

徒歩圏内の中学校と、電車を乗り継いでいく高校ではここまでの差は仕方ないだろうけど

「それじゃあとにかく買い物しようか、今日は何にするのか決めた?」

「今日は――グラタンです!」

「おおー」

パチパチパチ


俺たちはスーパーに入って着実に食材をカゴに入れていった

「グラタンの分は全部、あとは.......」

妹は大体1,2週間分の食材を準備するので、いつも買い物後の荷物持ちは大変だ。

「お兄様、次はカップ麵を......」

妹が目の前で停止する。まるで何かに化かされるかのようで――

「なんだ......」

俺はまゆの見ている方向を向いた。

夕食前の人混みの向こう、そこにはまゆがいた、もう一人。

あり得ない、それは空似とは思えないほど完全に俺の妹だった。

髪型、身長、着ている服から靴までそのすべてが俺の妹、御子神まゆだ。

――その時、不思議なことが起こった。

巨大な破裂音がしたかと思うと、突然何かが爆発した。

商品棚が倒れ、壁が崩れ、天井からそのすべてが吹き飛んだ。俺は何も気づけないまま、気を失った。


どれぐらい経ったのか分からないが、俺は意識を取り戻した。

「痛い......」

足と顔に少しかすり傷があるだけだが、軽傷だった。それより......

「まゆ.......まゆ!どこだ!」

早く、早くここから離さないと.......

視界の隅に何かが見えた。明らかに人型じゃなかった。あれは怪物だ。

俺の予感は的中した、これは「災害」に違いない。

「お兄様......」

「あっ......」

振り返ると、意識を取り戻したまゆを見つけた。こちらも外傷は少ない。

「まゆ!よかった......痛っ!」

「お兄様!足が......」

「俺は大丈夫、とにかくここから......」

逃げるぞと言葉を出す前に、俺は妹の後ろにいる「何か」に気が付いた。

俺の身長より何倍もある巨大な怪物。そいつは俺たちに向けて手を振り上げた。

「.......!」

俺はすぐにまゆを突き放してすぐに後ろに引いた。

どおぉぉん!という爆音とともに床が砕け散る。

「まゆ!逃げろ!」

「でも......!」

「大丈夫!きっと上手くいく!」


――

―――

――――


こうして、冒頭に戻る。

俺は何故かあのデカブツに追い掛け回されていた。

今思い返すと、今日一日といえど朝と夕方だけを思い出せばよかったのでは?まゆは逃げ切れただろうか?それにスーパーにいたほかの人は?明日からも俺は生活できるのか?

走りすぎてそろそろ頭がまわらなくなってきた。振り返るとさっきの怪物がまだ追いかけてきていた。

死ぬ。

このままじゃ、死ぬ。

その瞬間、恐怖と思考によって俺は足をひねって地面に伏してしまう

怪物はその隙を逃さず、俺に向かってとびかかってきた。

あ......死んだ。


――数秒経って、俺はまだこの世から消えていないことに気づいた。

おそるおそる目を開けると、目の前にさっきまでの怪物と、俺に背を向ける人が立っていた。

そして振り返り、俺の方を見た。

その顔は整っていて、同じくらいの年に見えた。

その瞳は眩しく輝いて、まるでどこかでみた宝石のガーネットのようだった。

その髪は長く、日本人女性特有の黒髪で、俺の視界全てを塗りつぶすような美しさを秘めていた。

そしてその姿は、勝利の象徴のような、女神のような、何か大切な出会いのような…とても言葉では説明できない存在感があった。

災害対抗者(ディザスター).......」

特殊スーツと武器を身につけて、災害に抗う一人の少女。

これが、俺と御前(みさき) 亜弥(あや)との、最初の邂逅である。

まゆ「お兄様、あのいじめの説明するところ、何だか自慢してるようで嫌じゃないですか?」

雅「えぇっ!?やっぱりそうかな......でもあれ著者の癖だし俺は言わされてるだけだし......」

ポテチ「だってぇ......鹿久保さんと仲良くさせるのに必要だったからぁ......」

雅「そこはちゃんと展開考えないとでしょ!!!!それに他のところだっておかしいでしょ!最後のシーン!初めて会った女の子にあんな事思うとかキモすぎでしょうが!!!!」

ポテチ「......でもそう思ったでしょ?」

雅「......うん。」

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