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みずあめが久しぶりにひまわりのことを(本当に)見たのはひまわりから送られてきた手紙に入っていた一枚の写真の中だった。
そのときみずあめは二十二歳になっていた。その手紙はひまわりの結婚式への案内状だった。写真の中のひまわりはあのころとまったく変わっていなかった。笑顔で、幸せそうで、優しそうな旦那さんと一緒に写真の中からみずあめを見ていた。
ひまわりからは手紙や写真と一緒に一冊の小さな本が送られてきた。ひまわりの三冊目の詩集だった。その詩集の中にはみずあめの知らないひまわりがいた。
赤い一輪の花が表紙の本。(確かひまわりの二冊目の詩集の本の表紙は青色の花だったなとそんなことをみずあめは思い出した)
二十二歳になったみずあめはひまわりを忘れることができていた。久しぶりにひまわりのことを思い出して、あのころは本当に必死になってひまわりから逃げ回ってばかりいたな、とそんなことを思い出してみずあめはくすっと一人で笑った。
すると旦那が「どうかしたの? なにかいいことでもあった?」とみずあめに声をかけた。
そんな旦那にみずあめは「あったよ。すごくいいこと。友達が今度結婚するってさ」と言って、旦那のところに戻って行った。