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小学生のころ。みんなで星を見にいったことがあった。その日に見上げた星空は本当に美しい星空だった。
広い空が星で満たされているような、宝石箱をひっくり返したような夜だった。みんな感動して星を見ていた。そんなみんなの中にひまわりはいた。ひまわりもみんなと同じようにその大きな黒い瞳をきらきらと輝かせながらじっと星たちを見ていた。でもみずあめはそんな美しい星空を見ていなかった。みずあめが見ていたのは、ひまわりだった。みずあめは星を見るひまわりを見ていた。だってひまわりが世界で一番輝いて見えたからだ。みずあめがそうやってひまわりを見ているとふとひまわりが自分を見ているみずあめに気がついてみずあめを見て、その白い指先で空に輝く星を指差しながら満面の笑顔で星、綺麗だね、と口だけを動かしてそう言った。