最終話
あれから、8年たった。僕は、21歳になった。高校を卒業して、金属加工の町工場に就職した。
残業代があれば、月手取り25万行くか行かないぐらいの収入だ。
少年時代に、エリ姉ちゃんとブラバス釣りに行ったのが、唯一の輝かしい思い出。
貧乏だから、旅行にも行けなかったし。高校時代もバイトばかりしていて、友人との思い出もない。
母さんはパートの掛け持ちをしていたから、文句なんてない。
「おい、和樹、今日、女紹介してやるから、絶対に来いよ」
「ええ、分りました」
職場の先輩に誘われて、紹介してくれる女性を交えて、三人でご飯を食べる。まあ、ファミレスでご飯ぐらいだろうと思っていたが、違った。
「初めまして、あたし、華山リリカです。・・・・貴方が佐々木和樹さん?」
「はい、宜しくお願いします」
・・・30代前くらいの年上だ。化粧がすごいな。
「まあ、あそこに行きましょう」
「ええ、あそこは高級レストランでは?」
「ええ、そうよ」
・・・私はごっちゃんです女子の華山リリカ、変な女に北海道に連れられて、カニ漁船に乗せられそうになったわ。
研修期間の給料が15万?船に乗れば稼げるからと言われたが、逃げて来たわ。
キャバで働いて、
そして、やっと、元の調子を取り戻せたの。
うわ。この男、指の爪の間に塗料がついている。底辺ね。金引っ張れないじゃん。
それに、服はイオラか、ヤマムーラ?馬鹿なの?こいつ?
イタい目見せてやるわ。高目の女である私をなめているわ。
「おい、おい、和樹、話さないと」
「あの華山さんは、どのようなお仕事を?」
「別に・・・このワイン頼んでいい?」
「あ、僕は自転車だから、飲めないけどいいよ」
「自転車って・・・」
・・・・
「会計、3万9千円になります」
・・・うわ。高い。一人1万3000円か。今月の小遣いが吹っ飛ぶな。
「あれ、先輩、華山さん・・何故、会計を通り過ぎるの」
「ええ、こいいう場合は~招待された男が払うの~」
「ああ、そうだぞ。俺がセッテイングしてあげたからな。ごちそうしてもらおう」
「そんな。銀行にお金を・・・」
「あ~情けない。田貫さん。次は、もっと、いい男を紹介してよね」
「へへへ、悪い」
・・・欺された。
その時、女の高笑いが店内に響いた。
「オ~~~ホホホホホホ」
エリ姉ちゃんだ!何だ。黒服の男たちがいる!
「和樹さん。お久しぶりですわね。探しましたわ」
「計画に貴方が必要なの。あら、ここに、佐々木水産から逃げた女がいたわね。
それに、男もいるわね。
あら、会計3万9000円?ワインが、2万4千円、二人で飲んだのね。和樹さんから酒の匂いがしませんわね。
だから、和樹さんは5000円払えばいいわ」
「ヒィ、あの女・・・お金はないわ!」
「あら、なら、働けばいいわ。このお店は佐々木グループの一つですのよ」
「オラ、オラ、こっちで皿洗いをしてもらおう」
「「ヒィ」」
・・・・
「エリ姉ちゃん。会えて嬉しいよ。でも、計画って?」
「フフフフ、国家改造計画よ。お母様に挨拶に行きますわ」
「母さんも喜ぶと思います。是非」
そして、エリ姉ちゃんは僕の自転車の後ろに乗って、一緒に家まで行った。
着いたそうそう。
「和樹さんを私に下さい!」
「まあ、そうだったのね。母さん嬉しいわ」
「ちょっと、ちょっと!」
「まあ、嫌ですの。グスン、グスン」
「嫌じゃないけど」
「なら、サインをして下さいませ!」
そして、その日に入籍をした。
婚姻届は、市の当直で24時間受付可能なのだ。
その後
彼女は、
選挙に出た。
「聖女党のエリザーベト!佐々木エリザーベトをよろしくですわ!」
・・・
「おじさん・・・国家改造計画って」
「馬鹿者。暴力革命をするわけないだろう。選挙によってだ。それにな」
☆病院
「ヒール!」
「あれ、病気が治った」
「オホホホホホ、私、医師免許を持っていますのよ」
「「「有難うございます!!!」」」
「へ、伯父さん。エリさんは、本当に、異世界人だったの?」
「おおよ。こうして、大手を振って、病気を治して、人気を得て、選挙で勝つ戦略だ!」
「政策は、物価を下げて、本当に、真面目に日本に住みたい外国人だけを受け入れる。技能講習制度は廃止だ。安価で、誰にでも出来る仕事を技能講習と言っている。逆に、失礼だ。
そして、外国人の生活保護を廃止し。生まれた国で保護してもらおうとの政策だ。時間は掛かるが、こうして、地道に訴える。まずは、市政からだ。それから、国政・・エリザーベトさんにはキャリアを積んでもらう」
「高卒認定試験を受けて、それから、医学部に入学だ。だから、勉強付けで、君たちとは連絡をとれなかったのだ。彼女、すごかったぞ。全て、一発合格だ」
「・・・選挙に出るために、僕と結婚したのかな」
「アホウ、彼女、大学でモテたが、全て交際を断っていたぞ。それに、初夜しただろう!」
・・・うわ。田舎特有の開けっぴろげに性生活を聞く風習だ。忘れていた。
「冗談だ。君が疑うからだ」
そして、エリさんは当選した後も。
僕の家から、市庁に通っている。
まだ、僕の家にいるのです。
最後までお読み頂き有難うございました。