善行!貧困女子を救済!
☆聖女市、聖女駅前
「待った?」
「いや、全然、待ってないよ」
駅前の繁華街、壮年のサラリーマンが20代前半の女性と待ち合わせをしていた。
親子ではないようだ。
「実は、もう、会えなくなるのです。今まで佐山さんとお話できて、楽しかった。
やっぱり。男性は年長者が安心出来ます。でも、弟が病気で、手術台が必要だから、グスン、私、夜のお仕事をしなければいけません。もう、佐山さんとこうして、会えなくなります」
「な、なんだと、よし、私が出そう。いくらだ!」
・・・フフフフ、私は華山リリカ、ごっちゃんです女子のマニュアルを使って、パパさんから、お金を出してもらう。
さあ、この男から、いくら、引っ張れるかしら。
「詳しい事は分らないですが・・・でも、自分で何とかします」
「わかった。定期を解約・・」
その時、この二人の間に、割って入るように、女性の高笑いが響いた。
「オ~ホホホホホホホホ」
「「誰!」」
「失礼、お話が聞こえてしまいましたわ。私は、エリーザベト・フォン・ローエングラムですわ。
お金に困っていらっしゃるのですね。私がいい働き場所を教えて差し上げますわ。
弟様のために、娼館に行くなんて・・・グスン、このエリーザベト、人肌脱ぎますわ」
「ええ?」
「君は誰だね?」
・・・ヤバいよ。この人、この真夏に、紫のドレス、それも、悪役令嬢者のマンガにでてきそうな釣り目。
白人?目がエメラルドグリーンに、髪は黒で、腰まであるわ。
コスプレ外国人だ。
逃げるわ。
「いいえ。やっぱり、大丈夫・・・」
「ご遠慮なさらずに、話は電話でしておきますわ。転移!」
ピカッ
床に魔方陣が浮かび上がり。リリカは、消えてしまった。
☆北海道某所、佐々木水産。
ポワ~~~ン。
突然、草原で、魔方陣が浮かび上がる。
コーン、コーン
「ヒィ、ここはどこ?涼しい。え、キツネ。キツネがいる!」
「お、姉ちゃん。エリーザベトさんから電話があったぜ。病気の弟のために、ここに来るなんて、泣けるわ~おじさん達と、カニ漁に行こうぜ」
「ホラ、厳しいけど、ここで、研修を受けて、それから、船員として、6ヶ月間びっちりだ。
陸に上がれないから、お金は貯まるぜ。働いた分の前借りもOKだ」
「ヒィ、そんなの無理!」
「大丈夫だ。ここにはトランス女性もいる。手術代を稼ぎたいから、来ているんだと」
「あ~ら、よろしく。私がみっちりきたえるわよん。安心して、私の心は女性だから、一緒にお風呂に入りたいとかいわないわよ。女性のいやがることは分るのよ。とりあえず腕立てを100回、腹筋を100回よ!体力をつけるわよん!」
「ヒィ」
☆
「ええ、佐々木商会長様、是非、Wi-Fiが通っている通信基地に定期的に寄港して下さいませ。では、宜しくお願いしますわ。では、失礼しますわ」
プツン
「ええ、と、君は?マッチングアプリの・・・これから、おじさんとお食事に行かない?」
「知りませんわ。では、失礼しますわ」
・・・私は、公爵令嬢エリーザベトよ。この日本という国に異世界転移しましたわ。
貴族学園で、小説家なりきりごっこが流行っていましたの。
『ヒールしか出来ない平民聖女だからと、婚約破棄され、異世界転移しました。この世界にはヒールがないからてんやわんやの大騒ぎ。ここで大事にされ、素敵な旦那様に溺愛されています。一方、元婚約者一家は没落していくようです。私のヒールは、ただのヒールでは無かった!!!』
なんて、タイトルの長い小説が流行っていましたの。
まさか、私が行ってしまうとは・・・
こうして、善行をしているのには、訳がありますの。
私は、佐々木一家に拾われましたの。
☆田んぼの中
ケロケロケロ~~~ケロケロケロ~~~♪
「ここは、どこですの~、まさか異世界かしら~」
「あ、こんな田舎の田んぼのあぜ道で、コスプレ外国人だ。道に迷ったのですか?」
「ええ、そうですの。世界を迷いましたわ」
「う~ん。何のアニメの台詞か分らないよ-」
グゥゥ~
「取りあえず家に来る?母さんと僕の二人暮らしだから、安心出来ると思うよ」
そして、
佐々木少年一家に、ご厄介になって、
和樹殿と一緒に、ブラックバス釣りに行きましたの。
「エリーザベトさん。和樹と一緒に、ため池行ってくれないかしら。あそこ深いから心配なのよ」
「承りましたわ」
「やったーエリ姉ちゃんと釣りに行ける!」
和樹殿の自転車の後ろに乗って、えっさらほっさとため池に行きましたの。
「あら、何故、釣れた魚を・・・金槌で殺して、ボックスに入れますの?今晩のお夕食になるのではないですか?」
「いや、ブラックバスは外来魚だから、リリースしないで、殺す条例があるよ」
「何ですって!」
・・・え、外来=異世界に比喩して、私が異世界人だとバレると、殺されるということを暗に教えているのですね。
私は思考した。この世界にとって外来人族である私は、善行をして、受け入れられようと・・・
こうして、暇を見つけては、困っている人を助けているの・・
善いことをすると、気持ちスッキリですわ。
「あ、エリ姉ちゃん。勝手に、僕の学校のジャージ着て・・」
「あら、お母様から部屋着としてもらいましたの。着心地いいですわ」
「ええ、恥ずかしいな。ところで、在留期間大丈夫なの?」
・・・え、異世界にも在留期間とかあったのかしら。
最後までお読み頂き有難うございました。